突然ですが問題です。
こちら研究者が描いた今日の主役の想像図。
何だか分かりますか?え?いや何か微生物っぽいですよねちょっと。
細菌とか?これを描いたのはアメリカカリフォルニア大学の…そして答えは太陽系の最果てとも言うべき天体…実は冥王星に史上初めて探査機が到着しようとしています。
NASAの冥王星探査機…9年半に及ぶ長い旅の末この7月冥王星に最接近します。
記念すべき第一歩ですよ。
実験からは冥王星の大気中ではなんと有機物が作られている可能性が分かってきました。
間もなく神秘のベールを脱ぐ太陽系の秘境冥王星に迫ります。
冥王星に探査機が到着するんですね。
冥王星は人類が打ち上げた探査機の中で最も遠いターゲットなんですよ。
え〜それはドキドキですね!さあその探査の目的地冥王星は一体どこにあるのか?見てみましょう。
太陽系の惑星は内側から水星金星地球火星。
そして更に木星土星天王星海王星と8つありますよね。
冥王星はここ。
太陽からの平均距離が59億キロ。
地球から太陽の距離の実に40倍もあるんです。
え〜!いや木星とか土星よりもずっとずっと遠くなんですね。
でも遠いだけじゃないんですよ。
水金地火木土天海の8つは大体同じ平面上の軌道なんですね。
ところが冥王星は軌道が大きく傾いてるんですよ。
あっ本当だ。
なのでほかの惑星とは違うという事で冥王星は準惑星と呼ばれています。
そもそも冥王星ってどんな天体なんですか?大きさは月よりか小さい。
めっちゃ寒いんですよ。
うわ〜寒っ!ハッブル宇宙望遠鏡で撮影された最も解像度が高い画像がこちらです。
えっ何ですかこれ?ちょっとモザイクかかってるような感じですよね。
それでたくさん画像を撮影して分析して作成されたものがこちらです。
お!こうなるとちょっと明るくなってる部分と暗くなってる部分が分かってきてますね。
だけどでもまだちょっとボヤッとしてる感じはありますね。
これ以上詳しい事を知ろうと思ったらもう現場に行って直接観測するしかない。
という事で今探査機が向かってる訳なんですね。
9年前に打ち上げられたNASAの冥王星探査機…冥王星までの道のりは50億キロ。
経由する木星には僅か1年で最接近しました。
この時観測機器のテストを兼ねて木星の撮影が行われています。
観測機器は正常に作動しました。
捉えたのは木星大気の渦…地球ぐらいの大きさです。
木星の重力で加速スイングバイ。
秒速23キロに達しました。
そしてそこから8年。
現在冥王星まで僅か1億5,000万キロにまで迫っています。
最接近は4か月後の7月14日です。
今年1月。
いよいよ冥王星の観測が始まりました。
ニューホライズンズの管制センターがある…今は2日に1度交信が行われ探査機の位置や機器の動作確認をしています。
これは1月下旬にニューホライズンズが撮影した冥王星です。
冥王星に加えて周りを回る衛星カロンの姿をはっきりと捉えています。
ニューホライズンズのプロジェクト・サイエンティストを務める…探査の最大の目的は冥王星の姿を明らかにする事です。
搭載された望遠レンズで表面を詳しく調べます。
へえ〜。
冥王星の姿まだちっちゃいですけど見えてきましたね。
これ7月の最接近時には何かくっきりした画像が送られてきそうですよね。
期待できますね。
こちらが冥王星探査機ニューホライズンズ実物の大きさです。
幅が2.7メートルありますのでちょうどグランドピアノくらいの大きさですね。
結構思ったより小さいですね。
はい。
観測装置が7つ搭載されています。
まずは映像でも紹介しました超望遠カメラLORRI。
ほかには冥王星の大気の組成ですとか構造を紫外線で調べるAliceという部分もあります。
この探査機はやっぱり冥王星の周りを回って観測するんですよね?ところが回らないんです。
えっ回らないんですか?これはビュンと通り過ぎる一瞬に一発勝負で観測するんですよ。
9年半かけて行ったんですよね?なのに一瞬。
ニューホライズンズが冥王星に着いた時っていうのは大体秒速14キロメートルなんですよ。
お〜速い。
なので止まるというか回るためにはすごく減速しないといけないんですね。
ところが冥王星はちっちゃいので重力が小さい。
重力小さいからつかまりにくいっていう事でなかなか減速大変なんですよ。
燃料を持っていけばいいんですがそれも大変という事で通過しながら一発勝負という事になったんですね。
いや〜接近して観測するチャンスが一度きりっていうのはドキドキですね。
更に地上のオペレーターが操縦する事はできないんです。
というのは地球と冥王星っていうのは電波で通信しても大体9時間かかるんですよ往復で。
え〜っ!という事でもうあらかじめ何を観測するかは全部決まっていてニューホライズンズが自分で自動的に観測するっていう事なんですよ。
へえ〜。
地上からはもう何もする事ができないんですね。
できないんですね。
もうそうなるとニューホライズンズ頼み。
任せ。
いや〜難しそう!しかも冥王星に接近する時のその探査の難しさはそれだけではないんです。
ウィーバーさんたちはニューホライズンズの接近に向けて冥王星の周りを詳しく観測してきました。
その結果衛星カロンの外側に2005年に2つ2011年と12年に1つずつ新しい衛星を発見したのです。
探査機の軌道に未知の衛星が存在すれば大きなリスクになってしまいます。
そこでウィーバーさんたちはより安全に飛行できるようにニューホライズンズの軌道を慎重に決めたといいます。
冥王星の近くは一見リスクが高そうに思えます。
しかし実はここが最も安全なのだそうです。
うわ〜冥王星に近づいてもその上空に結構危険がまだたくさんあるんですね。
衛星のカロンっていうのは知ってましたけどこんなにたくさんあったんですね。
ねえ。
ニューホライズンズが打ち上げられたのは2006年の事でした。
実はそのすぐあと冥王星の位置づけが大きく変わりました。
冥王星が惑星から準惑星になった訳ですよね。
最後の未踏の惑星だと思って打ち上げたのに惑星ではなくなったってなるとちょっと残念ですよね。
…と思うでしょう?それがそうでもないんですよ。
冥王星が準惑星となる最初のきっかけは1992年。
冥王星に似た天体が発見された事でした。
詳しく観測した結果大きさは冥王星の以下。
軌道は冥王星のすぐ近くにある事が分かりました。
更にその後も新しい天体が次々と発見。
そして2003年ついに冥王星より大きな天体が発見されました。
エリスと名付けられたこの天体が冥王星の立場を決定的に危うくしたのです。
国際天文学連合の総会で冥王星の位置づけについて議論が行われました。
多数決の結果冥王星は惑星から準惑星になったのです。
冥王星の周辺でこれまでに発見された新天体の数は…これらは太陽系外縁天体と呼ばれています。
太陽系が生まれたのは…チリとガスから成る原始太陽系円盤から誕生しました。
微惑星と呼ばれる小天体が衝突。
合体して惑星が出来上がりました。
しかし外側では微惑星の成長に時間がかかり惑星にまで成長できないまま取り残されたのです。
冥王星はそうした惑星に成長できなかった太陽系外縁天体の代表なのです。
これらの天体を探査する事で…46億年前の太陽系が分かるってすごいですね。
冥王星っていうのは太陽系外縁天体の代表という事で探査の重要性は増したぐらいですよね。
その冥王星について更に詳しく見ていきましょう。
国立天文台の渡部潤一さんです。
冥王星を見ると太陽系の歴史が分かるというのはどういう事ですか?冥王星っていうのは大きさで言うと実は小惑星って呼ばれてるものと惑星の間にあるんですね。
小惑星って日本の探査機はやぶさが行ったイトカワのように数百メーターしかないんですね。
だんだんだんだんそういうものが大きくなっていく。
もう成長しきったものが惑星だと思うと例えてみると…そうするとその冥王星というのはその途中にあるものなんですね。
ちょうどヒヨコの状態なんですね。
だからこのヒヨコを見る事によって太陽系がどんなふうに成長していったかが分かるという事になる訳ですね。
やっぱり太陽系誕生の頃の事が分かると言っても卵とヒヨコとニワトリ全部が一緒に分からないと駄目っていう事ですね?そうですね。
それぞれがパズルのピースみたいなもんですからそのピースを組み合わせる事で太陽系全体の歴史を知るという事になる訳ですね。
卵に相当する小惑星や小天体がぶつかり合って成長していくんですけれどもどのぐらいの大きさになったら溶け出して丸くなるのかとかですねあるいは周りに衛星を持つのかっていう事が化石として残ってると。
ですのでそれを見る事によって成長をしていくプロセスの中で何が起きたかっていうのが分かってくるんですね。
もうそうなると冥王星の姿がどんな姿なのかっていうのが楽しみですね。
渡部さんは冥王星がどんな姿なのかってどう想像されてるんですか?実は海王星の衛星にトリトンっていうのがありましてねこれと似てるんじゃないかなと思ってるんですよ。
何か想像してたのより白くてツルッとしてますね。
何かもっとゴツゴツしてるのかと思いました。
凍った氷でできてると思われてる。
だから氷なもんですから太陽の光を反射して割と白っぽくなってるんですね。
これどうして冥王星とトリトンが似てるっていうふうに考えたんですか?その理由がいくつかありましてね地球の月なんかは地球のグルグル回る向きと同じ方向に公転してるので地球と一緒に生まれた。
あるいは地球にぶつかってきたものが破片になって生まれたといわれてるんですけども。
トリトンは海王星の自転の向きその向きと逆に公転している。
逆回転して生まれるっていうのはなかなかメカニズムがないんですね。
海王星って一番冥王星に近い惑星なんです。
ですので冥王星の辺りにいた太陽系外縁天体の一つがどうも海王星に捕まったんじゃないかっていわれてるんです。
実際その大きさもよく似てますしね。
密度も非常によく似てるんですよ。
研究者たちは冥王星の姿についてさまざまな予想を立てています。
数値計算によって冥王星の姿に迫ろうとしている…研究から導き出された冥王星の姿を描いてもらいました。
最初に描いたのは円。
これはクレーターだそうです。
そして大胆な曲線。
更に表面からは何か噴き出しているみたいです。
ニモさんが亀裂や間欠泉を描いたのは冥王星の内部に理由があるといいます。
中心は岩石。
表面は氷です。
そしてその間には地下の海があります。
冥王星の中心部は岩石。
外側は水や窒素メタンなどの氷でできていると考えられてきました。
岩石にはウランやトリウムなどの放射性物質が含まれています。
そこから熱が発生し冥王星は内側から温められています。
ニモさんによると氷の性質によっては氷が解けて液体の海ができるというのです。
氷にマントル対流のような現象が起きないと仮定し計算しました。
氷が解けて地下の海ができ始めるのは冥王星ができておよそ2億年後。
その後およそ20億年かけて海の厚さが増し…氷が解ける事で体積が減少。
冥王星が縮みます。
すると表面にはシワが寄ったような地形ができるはずです。
その後内部で発生する熱が減って冥王星が冷えていきます。
すると今度は氷が厚くなります。
水が凍ると体積が増え冥王星が膨張します。
この時表面には引き裂かれたような亀裂ができるはずです。
ニューホライズンズが海の存在を証明するこうした地形を発見するのではないかとニモさんは期待しています。
地下に海が存在すれば更に驚くべき現象が見られる可能性があります。
それがあの間欠泉です。
ニモさんがイメージしたのは土星の衛星エンケラドスの間欠泉。
これは2005年に発見されました。
南極付近の割れ目から100キロ以上の高さにまで氷が噴き出しているのです。
重力が大きいのでそれほど高くはならないでしょうが…一方冥王星の表面の様子を実験によって導き出そうとしている研究者もいます。
宇宙スケールで生命の進化を研究している東京大学の…関根さんは冥王星の表面に赤茶色や黄土色などいくつもの色を加えました。
…というふうに思って色をつけてます。
有機物とは生命の材料にもなる炭素を含む化合物ですよね。
そんなものが冥王星でどうやってできたというのでしょうか。
関根さんは有機物の原料は僅かながら存在する冥王星の大気だと考えています。
それがこのボンベの中に入っています。
ガラス管の中に冥王星の大気の成分のガスを送り込みます。
そこに高電圧をかけ冥王星の大気が太陽風や紫外線などに照射された状態を再現します。
実験を始めて10時間後。
ガラス管は赤茶色に曇りました。
そしてガラス管からつながる装置の中に褐色の物質がたまっていました。
これが一体何なのか?赤外線分光計を使って調べました。
それぞれこのピークは炭素と水素であったりあるいは炭素と酸素の結合があるという事を示しているピークです。
実験で生み出されたのは確かに有機物でした。
しかも分子量が1,000を超える複雑な構造をしているといいます。
関根さんが考える有機物の発生メカニズムです。
冥王星の大気の成分は太陽風などに照射されると分子の結合が壊れ不安定な状態になります。
それらが数多く結合し合って分子量の大きなより複雑な有機物ができるというのです。
生命の材料でもある有機物が冥王星で作られてるかもってワクワクしますね。
それで彩りが鮮やかで地下には海があって間欠泉って見てみたいですよね。
すごい見てみたい。
実験で作り出された有機物がこちらです。
これ無色透明の気体からできてるんですよね。
不思議ですね。
ですから実際の冥王星でこれと同じようなものが有機物ができてるかどうか今回確かめられるという事なんですね。
それはどんな結果になるか楽しみですね。
冥王星の内部に海があるという説を紹介しました。
そこでも有機物ができると考えられているんです。
実験では冥王星の海に溶けていると考えられる…無色透明の液体。
冥王星の海を想定してセ氏0度近くの低温に置きます。
1週間後液体は褐色に変化。
この中でも有機物が生成されたと考えられます。
水の中に溶けやすい…間違いないんじゃないかなというふうに思います。
関根さんは冥王星の亀裂の周りに地下から湧き出した有機物の証拠が見つかるのではないかと期待しています。
太陽から遠いから有機物なんてできないと思ってましたがそうでもないんですね。
そうなんですね。
太陽から遠い分エネルギーは当然低いんですけどだから反応速度自身はすごくゆっくりになると思うんです。
ただ有機物の材料というのは結構揮発性が高いので蒸発しやすいものですからそれが低温でたくさん残ってるという状況でできやすいという事もあるんですよね。
もし冥王星のような温度が低い所に有機物がたくさんあるという事になると温度が低い所っていうのは宇宙にたくさんありますからそういう意味では生命を生み出す有機物そのものは宇宙中にたくさんあるんじゃないかという事にもつながるんですね。
うわ〜。
ニューホライズンズが冥王星に最接近するのは7月14日。
楽しみですね。
いや〜そうですね楽しみですね。
本当の冥王星の姿を見てみたいですね。
初めて行く天体っていうのはいろいろ想像するんですけどねやっぱりね必ず驚きの発見というのがあるんですよ。
こんな事考えられなかったというのが実はあるかもしれないと思って期待してますね。
冥王星っていうと惑星から準惑星に降格されちゃったんだみたいなイメージがあったんですけどすごくそこに謎があってこれ今年は冥王星の年ですよね。
本当ですね。
授業でも習って名前も知ってるのに結構姿もまだ知られてなかったりとかして…。
何も分かってないんですね。
楽しみですねどんな姿なのか。
見たいですね。
はい。
渡部さんどうもありがとうございました。
ありがとうございました。
それでは「サイエンスZERO」。
次回もお楽しみに!2015/03/14(土) 12:30〜13:00
NHKEテレ1大阪
サイエンスZERO「太陽系の秘境 冥王星に迫る」[字][再]
7月、史上初めて探査機が冥王星に最接近する。遠くて小さいので従来はぼんやりとしか見えなかったその姿を、国立天文台、カリフォルニア大、東京大の研究者が大胆予想。
詳細情報
番組内容
ことし7月、史上初めて探査機が冥王星に最接近する。2006年に打ち上げられたニューホライズンズだ。冥王星は惑星ではなくなったが、太陽系誕生のシナリオ解明のカギになると期待されている。ハッブル宇宙望遠鏡でもぼんやりとしか捉えられなかったが、いったいどのような姿なのか。表面に大きな亀裂と間欠泉があるとする説。大量の有機物があるとする説。4か月後の最接近を前に科学者たちが大胆予想を披露する。
出演者
【ゲスト】国立天文台副台長・教授…渡部潤一,【司会】竹内薫,南沢奈央,【キャスター】江崎史恵,【声】樫井笙人,河本邦弘,【語り】中山準之助
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 自然・動物・環境
ドキュメンタリー/教養 – 宇宙・科学・医学
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事
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