花燃ゆ(10)「躍動!松下村塾」エリート藩校VSアウトロー私塾 2015.03.14


雷の鳴る所もありそうです。
自宅蟄居を命じられた松陰が僅か3畳半の幽囚室で始めた塾は武士百姓町人の別なく学を志す者が集い昼夜を問わず常に開かれているという型破りな学舎となっていた。
後に初代総理大臣となる伊藤利助。
松陰のもとを訪れたのは安政4年秋の事だった。
(利助)元は周防の百姓です。
一家丸ごと足軽の伊藤様の養子にして頂き萩へ参りました。
(寅次郎)なるほど。
…で君は何を志しますか?立身出世です。
ほう。
己に少しでも知恵と力があるならそれを生かして今よりちいとでもええ暮らしがしたい。
そう思うちょります。
(文)利助さんの事?以前別の塾で兄と一緒に学んどったの。
何をやっても兄にかなわんかったのに大組の来原良蔵様に気に入られてから学問にも熱が入っとるみたいで。
(小声で)兄上少し焦っとるんよ。
自分も早う世に出ていろんな方のお役に立ちたいって。
(稔麿)俺は焦っとりゃせん。
ただ書物を読んだり先生のところで学べば学ぶほど「このままじゃいけん。
ここでこうしちゃおられん」という気持ちがどんどん強うなってきて…。
江戸へ行きたいん?江戸で学びたいんですね。
じゃが無理じゃ。
何で?うちにはそねなお金ありゃせん。
明倫館へも入れてもらえん身分の者が遊学なんぞ許される訳なかろう。
(寅次郎)なるほど。
吉田稔麿君を江戸へ。
何か手だてはないんでしょうかね。
「天下の苗を助けて長ぜしめざる者寡なし」。
ひどい。
おっ意味分かるんか。
おせっかいはその者のためにならんっていうんでしょ?兄上の孟子の講義ちゃんと聞いとりましたから。
偉い偉い。
さすがじゃ。
(ため息)
(文之進)無理じゃ。
そこをなんとか…。
叔父上ならご重役方につてがおありかと。
名前も知らぬ軽輩を推挙などできん。
小田村に頼め。
頼るなと言われとるんです。
お役目がお忙しいようで。
回想
(伊之助)俺をあまり当てにするな。
もう助けてやれん。
ああそうか。
椋梨様のもとではのう。
今藩の中で一番お力をお持ちの方じゃからのう。
一番のお力を…。
そういえば江戸屋敷に人を1人よこせと通達が…。
ぜひともご推挙を。
寅兄様の塾からお家のお役に立つ方が現れればまたとない忠義の証しとなるんでは?となれば寅次郎の罪もいずれ許され…。
吉田家…吉田家再興も!はい!優れた人物を選んで江戸へ遣わせという意見書じゃ。
寅次郎から…。
こちらは江戸屋敷のお勤めにこの者を推挙するという上申書じゃ。
寅次郎の門弟を…。
あの塾については罪人の暇潰しと大目に見てきたがそのような事にまで口を挟むとは。
思い知らせねばならんの。
この件私にお任せ頂けませんか?やれるか?寅次郎の刃の鞘となるは私のお役目かと。

(テーマ音楽)・「愚かなる吾れのことをも」・「友とめづ人はわがとも友と」・「吾れをも友とめづ人は」・「わがとも友とめでよ人々」・「吾れをも友とめづ人は」・「わがとも友とめでよ人々」・「燃ゆ」ん?ここにあった握り飯…。
(富永)運んでいったぞ。
フグと一緒にな。
フグ?フグはうまい。
じゃが毒がある。
それゆえフグ食を禁じとる藩も多い。
じゃが果たしてそれは道理にかなった禁令じゃろうか。
君たちはどう思う?くだらぬ定めです。
そねな事でうまいもんを禁じるなんぞ愚の骨頂です。
う〜んなるほど。
(品川)熱して食せば障りはないんでは?そのとおり。
さあ早う食いましょう。
(玄瑞)待て。
そもそも毒があるっちゅうもんを何故わざわざ食さねばならん。
(晋作)おぼこいのう。
何じゃと?毒があるけぇ試してみたいんじゃ。
そねな事で己の勇猛さを試そうというんか。
随分安い男じゃのう。
何じゃと?まあまあまあまあお二人とも。
誰じゃお前は!?伊藤でございます。
お見知りおきを。
君はどう思う?はい。
「虎穴に入らずんば虎児を得ず」と申します。
危険を冒して美味を得るか。
まあ「君子危うきに近寄らず」とも言いますしね。
だからどっちなんじゃ!?どならんでつかぁさい。
俺包丁借りてきます。
(稔麿)私は食いますよ。
江戸へ乗り込もうという者がフグの毒や禁令なんぞに臆してはおられませんから。
江戸?稔麿は江戸へ行くんか?まだ決まった訳では。
ですが玉木文之進様のお口添えでいずれ遠からず。
お文さんがものすごい勢いで父上を説得したんです。
あいつが?江戸行きが決まったらお文さんのおかげです。
あいつの?ならばいっそ連れていったらどうじゃ?あいつを!?あの〜…亀太郎さんがそろそろフグをお返し頂きたいと。
借り物やったんですか?これ。
届け先に急ぎますから。
どうも。
あ〜腹が減った。
もうか!飯ばっかりじゃのう。
利助さん!あっそねな事はこちらで致します。
あっいやお礼の米すら持ってこられんし身分も低い。
こんぐらいさせてもらわんと。

(稔麿)戦じゃと?そうじゃ。
江戸での戦のしかたを教えてやる。
来い。
槍なら少々覚えがあるが。
そりゃあ結構。
お前らもどうじゃ?稔麿のはなむけに。
俺は帰る。
先に江戸に行かれるんが悔しいんか?もういっぺん言うてみい。
ついてこい。
えっ?あっ…。
これは剣呑…。
利助さんお願い。
こっそり後つけて。
私が?今何かあったら稔麿さんの江戸行きも塾の評判も何もかも水の泡。
あの人たち見張って。
お願い!おお…ここが大人の戦場か!江戸には江戸の毒があるっちゅう事よ。
慣れておかんとな。
おう…。
(小声で)見てます。
こっちを見てます。
(小声で)ならばこちらも見返すまでじゃ。
かわいい〜!若いのね。
・高杉じゃないか。
明倫館に姿を見せぬと思うておったら。
なるほど。
こちらが吉田松陰先生の薫陶を受けたるご門人の方でござるか。
せからしいのう。
今日はこいつの江戸行きの前祝いなんじゃ。
構わんでくれ。
(三味線の音)・「三千世界の烏を」俺は帰るぞ。

(利助)お待ち下さい!お願いでございます!
(周布)調子っ外れの三味線に聞き覚えがあるぞ!周布様!ご重役の周布政之助様じゃ。
下手な三味線をもちいと聴かせろ。
よろしいのですか?お勤めの方は…。
ふん。
椋梨小田村のご両人がおればわしの出る幕なんぞないわい。
小田村…。

(長井雅楽)周布殿!
(周布)おお長井殿。
戻るぞ。
危機に疎い藩の者たちを急ぎ目覚めさせねば。
後年藩を二分する大論争の果て久坂ら松下村塾生と死闘を繰り広げる長井雅楽はこのころ周布政之助と並び頭角を現し始めていた。
長井雅楽様とお見受け致しました。
吉田稔麿と申します。
江戸屋敷のお勤めを願い出ております。
よろしくお願い申し上げます!うむ!お家のお役に立ちたいというその意気じゃよし!しかし無理じゃろうのう。
無理?椋梨殿が許すまい。
供の者は明倫館から出す。
私塾なんぞからは出さん。
「吉田松陰の弟子を江戸にやる訳にはいかぬ」。
ハハハハハ…。
(長井)さあ周布殿参ろう。
塾生は江戸にやれん?はい。
椋梨様のお達しだそうで。
椋梨様が…。
酔った周布様が口を滑らせまして。

(玄瑞)断じて許す訳にはいきませぬ!塾生というだけでこねぇな扱いをされるいわれはございませぬ。
屈せず稔麿を断固江戸へやるべきです!稔麿の江戸行きには不満やったんじゃないんか。
そうじゃ。
俺だって…俺だって江戸へ行きたい。
もっと学んで藩の…日本国のお役に立ちたい。
(稔麿)ならばお前が行け。
椋梨殿の横やりが入らねばな。
お前のために怒ってるんじゃないか!まあまあまあお二人とも。
ねっ。
(靖)誰じゃお前は?あっ伊藤です。
新手か。
次から次へとまあよう入るのううちの塾には。
吉田君久坂君。
僕の弟子というだけで江戸行きの願いが断たれるんだとしたら君たちに深くわびねばなりません。
先生のせいではありません。
ただ一つ尋ねたい。
吉田君も久坂君もなぜそれほどまでに江戸へ行きたいんじゃ?それは…先生だって江戸や長崎に行かれたではありませんか。
脱藩し黒船に乗り込もうとまで。
僕は僕の志を持ってしたまでの事。
その末幽囚の身と成り果てたがいささかの悔いもない。
吉田君聞かせてくれ。
君の志は何じゃ?私は…ただ学びとうて。
何を?新しい知識や学問や今江戸で何が起きとるか…。
知ってどうする?異国の脅威を打ち払いこの国を守るために。
どのように守る?ですからそれを学ぼうと…。
学んでどうする?聞いとるのはなぜ学ぶかじゃ。
君の志じゃ。
今この場所で己を突き詰め志を見つけられん者に一体他国へ行って何ができるというんじゃ?志のない君のような者が江戸へ行ってもむだです。
あっ稔麿さん…。
待って!もうええ。
先生の言うとおりじゃ。
江戸で学ぶなんぞ俺には過ぎた事やったんじゃ。
違います!勝手に動いたんは私やもん。
稔麿さんが学問に励んどるんを見て力になれたらええなって。
俺の?久坂さんより学問は劣る高杉さんよりも剣は劣る。
そんな俺の一体どこに力を貸すというんじゃ!?すまん…。
八つ当たりじゃ。
志か…。
(鈴の音)こいつ…。
残念じゃが今日はその気になれん。
ちいと気になる事があってな。
ごめん!小田村先生はご在宅ですか?
(寿)いらっしゃいませ。
高杉晋作と申します。
どうぞ。
お連れ様がお待ちですよ。
連れ?お前。
高杉…何でここに?ちょうどよかった。
まあ座れ。
(玄瑞)率直に申し上げて解せんのです。
長州は今まで有能な者の育成にことのほか力を注いできた藩です。
その芽をなぜ椋梨様は摘まれようとされるんか。
要するに気に入らんのですか。
椋梨藤太は村塾が。

(晋作)椋梨は松陰先生のもとに人が集まるんが気に食わんのじゃ。
いや。
集まった我々が何かしでかすんじゃないかと気が気でないんじゃ。
えろう自信があるんじゃな高杉は。
じゃが君らを恐れる者など城には一人もおりゃせん。
塾生の江戸行きについては追って知らせる。
以後この件への口出しは一切まかりならん。
塾は潰させませんよ。
結構。
じゃがどうやって?どうやっても。
お前たちはいつもそう言う。
「これは嫌じゃ」。
「あれは許せん」。
じゃがお前たちがまことに何かをなしたという話を俺は一度として聞いた事がない。
何かできるというんならいつでもやってみたらええ。
お前たちにできればの話じゃが。
何じゃあいつは!?あれで先生の弟か!?憂さ晴らしじゃ!行くか?お前とは行かん!
(椋梨)かねてから殿がご所望されていた明倫館書物蔵ご視察の日が決まった。
(太華)ご安心下され。
椋梨様に恥をかかせぬようすべて整ってございます。
ご案内役は不肖私小田村伊之助が。
この明倫館こそ我が長州の人材育成の要である。
誇りを持って一同務められよ。
(一同)はっ。
殿のご視察を前にひと言言うておく。
近頃のお主らの学び方はなっておらん!己の生まれ育ちに安住し何事かを究めんという気迫に著しく欠ける。
そねな事ではいずれ私塾の者たちに先を越されよう。
それは高杉が通う塾の事でしょうか?高杉の…。
松下村塾の事か。
我こそは明倫館の学徒と胸を張りたいならなお一層専心せよ!稔麿さんが?塾に泊まり込んどるんかなって。
いや…近頃塾には…。
そう…。
せわぁない。
来たらすぐに知らせるから。
(利助)船着き場で見かけましたけどね。
えっ?港で稔麿さんを?荷の上げ下ろしを手伝うとる時に裏の小道に入ってくんをちろっと。
うまい!
(一同)おお〜!頂きます!頂きます!僕はフグを食べません。
やはり毒が?国禁を犯してまで黒船に乗り込もうとしたお方やぞ。
フグの毒ごときに臆するもんか。
ではなぜ?
(利助)あの…。
伊藤でございます。
お前食べちょらんかったんか!真っ先に手を出しそうに見えるがの。
あれからずっと考えとったんです。
フグを食べるか食べんか。
初めにその命題を聞いた時は「おかしな事を議論する塾じゃなあ。
俺本当にここにおって大丈夫じゃろうか」。
不安じゃったんですが…。
何じゃその言いぐさは!?続けて下さい。
そのうちふと気が付いたんです。
ひょっとしてこれはフグの話じゃのうて人がまことに恐れるべきは何なんか。
先生が問いたかったんはそういう事なんじゃなかろうかと…。
死ぬ事苦しむ事臆病者と笑われる事…。
ではフグを食べん僕はやはり死を恐れとると?違うんですか?僕は死など恐れとりません。
ならば一体何を…。
(滝)皆さん。
まあまあ。
鍋が煮詰まってしまうじゃありませんか。
口直しにお月見のおだんごです。
潰した里芋が混ぜてあります。
文が工夫したんですよ。
お文さんはどうしたんですか?
(亀)稔麿さんを捜しに。
邪魔じゃどいてくれ。
(稔麿)お文さん。
どうしたんじゃこねな所で。
浜崎のお船番のところへ…。
(稔麿)江戸から戻ったばっかりじゃいうんであっちの話をいろいろ聞かせてもろうとったんじゃ。
先生に言われて俺は何で江戸に憧れるんかとことん突き止めとうなっての。
稔麿さん…。
そしたら城下のお役人とは違うた話が聞けるけぇつい夢中になって。
今日は火事の話を聞いた。
火事?江戸は萩とは比べもんにならんほど家が立て込んどる。
ひとたび火事となりゃ大事じゃ。
やけぇ火消しの仕組みが整っとる。
いろはは48も組があるんじゃと。
江戸の人は物見高いけぇ火事見物もおいい。
火消しも人気じゃ。
へえ〜!面白かろ?えっすごい。
稔麿さんの話今まで聞いたどの話より江戸の町がよう見える。
そうかの。
兄上たちが話すんはいっつもご公儀がどうしたペルリがどうした。
条約が許せんとか異人を斬るとか。
だ〜れも火事の話とかせんもん。
議論だけじゃ見えん景色が稔麿さんには見えるんやね。
議論では見えん景色…。
聞かしてもっと。
いろんな話。
おう。
ほかにはえ〜…これじゃ。
おやおやこれは。
お主確かこの前高杉とおった者じゃのう。
こいつか。
明倫館を差し置いて江戸へ行こうっちゅうんは。
ふん。
人の金で女と遊び人の金で江戸へ行くか。
いい気なもんよ。
こねぇなやつらを飢えさせんために我らはこの先励まねばならん。
もうよいほっちょけ。
早う浜へ行こう。
邪魔したのう。
何じゃこの手は?何じゃ?どうじゃその貝。
餌にしたらよう釣れるぞ。
皆さん…。
恥を知れ。
こいつ!やめ!やめり!何だ貴様は!やめり!
(利助)文さん!こっちこっち。
やめて!やめてつかぁさい!大バカどもが!明倫館の連中と大ゲンカじゃと?正気の沙汰ではない!皆私を守ってくれたんです。
先に乱暴したんは向こうです。
うむ。
その心がけまことにあっぱれ!冷や飯食いは黙っておれ!お前たちこの塾がどうなってもええんか!蟄居を命じられた罪人の私塾などつけいる隙を見せればすぐに潰されてしまうんだぞ!今朝これが届いた。
明倫館助教小田村伊之助殿からだ!「吉田稔麿江戸行きの儀。
まことに残念ながら貴意には沿えず」。
以後二度と余計な事はするな!
(稔麿)江戸へ行きたいんです。
江戸へ参りたいんです。
今までの私は学問をしても剣術に励んでも何ほどのもんではなかった。
ほどほどに優れほどほどに強くそれ以上何をどう望んでええのか分からず江戸へ行けば…江戸へ行けばそれが満たされるんではないかと…。
そねなええ加減な願いが潰されるんは当然です。
そねな心がけで江戸へ行っても何もできん。
じゃが今は違う。
江戸でやってみたい事があるんです。
江戸の者がどねな暮らしをしとるか。
何を食べどねな着物を着どねな事に悲しみ何を笑うとるんか。
そうしてこの国に何を望み異国の文明をどう恐れとるんか。
書物の上の学問じゃない生きた人の暮らしを先生に…皆につぶさにお伝えしたい。
よりよい日本をつくりたい。
その助けとなりたい!高杉さん。
久坂さん。
利助。
野村。
品川。
寺島。
俺は松陰先生の弟子としてこの塾の門人として江戸へ行きたいんじゃ!頼む!稔麿さん…。
稔麿はやります。
必ず。
吉田君の志しかと受け止めた。
身分の上下くだらん建て前…。
すべてこの志の前では一文の価値もない。
古い考えに縛られてはならん!思うようにあらがえ。
諸君!狂いたまえ!
(一同)おお!えっ?あっ…ちょっと!待って!殿の御前で万が一にも粗相があってはならぬ。
承知しております。

(騒ぐ声)・
(太華)何じゃお前らは!高杉!小忠太殿のご子息ともあろう者が何たるざまか!こちらに椋梨様がおられるとお聞き申した。
(椋梨)何の騒ぎじゃ!?いささか伺いたき儀があってまかり越しました。
(椋梨)うむ。
我ら吉田松陰先生の門下が江戸屋敷のお勤めに就く事まかりならぬとはまことでございますか!?ならばどうした!?いま一度お考え直し頂きたく!できぬ。
なぜでございます!?お前たちが先生先生と奉ってる男とは何者か。
国禁を犯した大罪人である!我らは必死で学んでおります。
必ず藩のお役に立ってご覧に入れます!お前たちの心がけをうんぬんしておるんではない。
事は家中の秩序に関わる。
いかに優れた者であろうと吉田松陰の弟子をお家の大事に就かせるなど金輪際あってはならぬ!
(敬親)騒がしい事じゃのう。
(太華)殿!これは…。
若い者たちがそろいもそろうて。
これらは明倫館に学ぶ者ではございませぬ。
松本村にて吉田寅次郎のもとで学ぶ者らにございます。
おお…寅次郎の。
ただいま椋梨様より吉田松陰門下生たる者の心得についてお話を賜っていたところにございます。
ほう。
いえいえそのような大層なものでは。
お前たちは師松陰の足元にも及ばぬ。
思い上がったそぶりはやめひたすら精進せよと。
それはまことにそのとおり。
いやわしも肝に銘じよう。
そういえば殿も吉田寅次郎に学ばれましたな。
確かお城にて兵学のご講義を。
いかにも。
申さば余も松陰の弟子じゃ。
(太華)と…殿!ならばお願い申し上げます!申さば殿の弟弟子たる我らを江戸屋敷のお勤めの端にお加え頂きとうございます。
端におっても意味はなかろう。
存分に学びとうございます!そうせい。
イテテテテテ痛い痛い!我慢なさいませ捻挫くらい。
(寅次郎)そうですか。
走りだしてすぐに。
こけました。
高杉さんも久坂さんも学問だけじゃない。
いや鍛えておりますな。
イテテテ…。
バカです高杉さんも久坂さんも。
利助さんも。
文。
僕がこの世の中で一番恐れとるもんが何か分かるか?兄上がですか?兄上に恐れるもんなどあるんですか?何事もなさん事じゃ。
そしてなそうとせん事じゃ。
なそうとせん…。
志の果てに迎える死以外で死にとうはない。
断じて。
死ぬやなんて…。
そのためには目先の誘惑やつまらん毒に足元をすくわれたくない。
えっ?何の話ですか?じゃから「フグは食べん」と。
フグ?伊藤君。
フグを食いたい。
ええ暮らしをしたい。
それがもし君の望みだとしてもそれは恐らく君がもっと大きな何かをなすための手段にすぎん。
もっと大きな…。
伊藤君。
偉うなりんさい。
はい!あっ…何かよう分からんけどよかったですね。
うん。
フフッ…利助さん。
でもフグはうまいんじゃけどね。
吉田稔麿が江戸へたつ日が来た。
どうぞお気を付けて。
ありがとう。
江戸に行けるんはお文さんのおかげじゃ。
ううん。
こっちこそケンカの時守ってくれてありがとうあんした。
釣りざおをつかんだ稔麿さんえろう頼もしかった。
(2人)あの…。
お願いがあります。
俺に?江戸の事をできるだけ詳しくいっぱい手紙に書いて送ってほしいんです。
一歩も外に出られん兄上はきっと一生懸命読むと思います。
分かった。
約束する。
稔麿さんは?ああ…。
あっ。
きれい。
お文さんを好いとったみたいじゃの。
松陰という刃の鞘になる。
確かそう聞いたように思うが。
あれはわしの聞き違いであったかの。
押さえつければ連中ははね返そうとします。
それよりも話を聞いてやり時に恩を売りさえすればいざという時にも懐柔のしようがございます。
ではこの流れもまた目算の内であったと?明倫館を少し私にお任せ頂けませんか?山県様ではもはや若い者たちの鬱屈を御する事はできませぬ。
何とぞ。
杉家の裏に納屋を改造し新しい教室を造る事になった。
どうしたん?小田村様の事を考えておった。
あの人はどういうお方じゃ?椋梨様の下で働く敵のはずやのにいつの間にか稔麿の江戸行きを計らってくれた。
近くにおらんでもきっと遠くで私たちを見守っていてくれる。
兄上はそういう人です。
(品川)はいもらった。
先生!すんません!ヤジ!僕を先生と呼ぶな!お前…呼ぶなら師の顔に泥を塗るな!
(笑い声)皆さん!ごはんですよ!僅か3畳半から始まった塾は最良の時を迎えやがて城下や萩から遠く離れた村からも訪ねる者が現れた。
あっ…。
ありがとうあんした。
目出から参りました前原一誠と申します。
嫁入り!美人じゃないし俺の好みじゃない。
文に訪れる恋の予感。
果たしてその運命の人とは?くだらん悩みじゃな。
(周布)あいつを裏切るっちゅうんか。
そうせい。
夫婦になれ。
行ってまいります。
伊藤利助こと伊藤博文は初代内閣総理大臣となった人物です。
農家の林十蔵の長男として生まれました。
子猿のように木を登る活発な子だったといいます
9歳の頃利助は萩へ移り住みます。
父が下級武士だった伊藤家の養子となったためです。
そのころ利助が出会ったのが近くに住む同い年の吉田稔麿でした。
読書好きで物覚えが人一倍優れていたといいます。
やがて2人は松陰のもとで学び始めました。
江戸へたつ稔麿は松陰から手紙を送られています。
「至誠を重ね日本を変革せよ」。
松陰の熱い思いは若き門弟たちに受け継がれていきました
2015/03/14(土) 13:05〜13:50
NHK総合1・神戸
花燃ゆ(10)「躍動!松下村塾」エリート藩校VSアウトロー私塾[解][字][デ][再]

松下村塾の塾生・吉田稔麿(瀬戸康史)に江戸行きの話が持ち上がる。学問に励みたいという稔麿の思いを実現させようと文(井上真央)は奔走するが、それを阻む強敵が…。

詳細情報
番組内容
吉田松陰(伊勢谷友介)のもとに、のちに初代内閣総理大臣になる伊藤利助(劇団ひとり)もやってきて、松下村塾は活気あふれる。塾生の一人・吉田稔麿(瀬戸康史)に江戸行きの話が持ち上がる。江戸で学問に励みたいと望む稔麿の思いを実現させようと、文(井上真央)は奔走する。しかし松下村塾を、罪人の塾だと目を光らせている藩の重臣・椋梨藤太(内藤剛志)がそれを阻む。思いをたぎらせた塾生たちは椋梨のもとへ乗り込むが…
出演者
【出演】井上真央,大沢たかお,伊勢谷友介,東出昌大,高良健吾,北大路欣也,優香,久保田磨希,森永悠希,瀬戸康史,劇団ひとり,佐藤隆太,要潤,大野拓朗,音尾琢真,鈴木伸之,阿部亮平,内野謙太ほか
原作・脚本
【脚本】宮村優子

ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
ドラマ – 時代劇

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
サンプリングレート : 48kHz
2/0モード(ステレオ)
日本語(解説)
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