報道特集【中国汚職問題▽地下鉄サリン20年】 2015.03.14


東京−金沢を結ぶ北陸新幹線が今日、開業した。
構想から半世紀を要した北陸の悲願とも言えるこの新幹線。
午前5時半です。
東京駅の改札が開きました。
一斉にファンが今、走ってホームに上がってきました。
午前6時20分。
販売開始25秒で売り切れたという指定席券などを手にした鉄道ファンらを乗せ、東京駅を出発した下りの一番列車、「かがやき501号」。
最高速度260km、北陸新幹線が今、富山平野を走り抜けています。
およそ2時間後、富山県に入った。
その20分ほど後には・石川県の金沢駅に到着。
東京と金沢はこれまでよりおよそ1時間20分短縮され、最短で2時間28分で結ばれる。
観光・ビジネス両面の効果に期待する沿線各地は歓迎ムード。
富山では、地元の民謡「越中八尾おわら」の踊りで一番列車から降りた乗客をおもてなし。
また、富山駅では全国で初めて新幹線の高架下に路面電車の停留所が整備され、改札口から数十メートル歩くだけで路面電車に乗り継げる。
最高の日にしたいです。
開業の後に、晴れの日を迎えた人もタキシードとウエディングドレス姿で金沢駅から乗車し、軽井沢駅に降り立った夫婦。
駅員や通行人も見守る中…駅の構内で公開結婚式を挙げた。
北陸新幹線は東京から北陸を経て大阪までを結ぶ700kmが計画されている。
金沢から敦賀の間は当初の計画より3年早めて2022年に開業する方針を政府が決定。
地方活性の起爆剤としても期待する沿線各地は歓迎一色の一日となった。
私のような世代の人間にとっては、中心になっていたものでした。
都会のためではなく、どうか地域そのものの活性化につながってほしいと思いますが、早速、金沢駅の様子を伝えてもらいます。
新幹線が春を連れてやってきた、この言葉のように金沢は晴れやかな一日となりました。
今も多くの人で賑わっています。
今からおよそ12時間前、ここ金沢駅を、一番列車の「かがやき」500号が出発していきました。
見送りにはおよそ5000人の市民や鉄道ファンが駆けつけ、期待の大きさをうかがわせました。
石川では年間に訪れる観光客を倍増の500万人に、また、石川、富山で200億円を超える経済効果に期待しています。
北回り新幹線という名前で構想から浮かび上がってから半世紀。
東京−金沢を2時間半足らずで結ぶ北陸新幹線の開業は、地方活性化のカギとなる一方で、ヒト・モノ、金が東京に向かうのではないかという不安を感じる人もいます。
新幹線の開業は何を変え、何を生み出すのか。
開業の興奮の後に、答えが見つかるかもしれません。
今日、日下部さんは北京で取材中です。
ここからのニュースは林さんとともにお伝えします。
大阪に本社を置く東洋ゴム工業が地震対策の免震ゴムでデータ偽装をしていた問題の影響が広がっている。
国土交通省は製品の認定を取り消し、既に免震ゴムが取りつけられた建物では対応に追われている。
心よりお詫び申し上げます。
東洋ゴム工業は昨日の会見で、高層ビルなどの地震対策に使われている免震ゴムの一部に、建物の揺れを抑える性能で国の基準を満たさない製品が見つかったと発表した。
免震ゴムは、建物の基礎部分に取りつけられ、地震の揺れを吸収して建物に伝わりにくくする重要な部品。
国土交通省によると、問題の免震ゴムは2004年から今年2月までに18の都道府県のマンションや病院、自治体の建物など、55の物件に設置されている。
高知県では2012年に完了した県庁本庁舎の耐震工事で基礎部分に72基の東洋ゴム製品が使われていたほか、警察署やマンションなど9カ所で確認された。
また、京都府舞鶴市では、現在新築中の病院に東洋ゴムの製品が取りつけられていたことがわかった。
東洋ゴムでは今後1カ月かけて建物の安全性を確認し、問題があれば免震ゴムを交換するとしているが、マンションなどで既に住民が入居している場合、一時退去を強いられる可能性もある。
福井大学大学院の准教授が指導していた大学院生の女性を殺害したとして逮捕された事件で、警察は2人の間に何らかのトラブルがあった可能性があると見て捜査している。
前園容疑者は当初、この周辺で事故を起こしたと話していました。
しかし、その後の調べで、被害者の死因が首を絞められたものによることがわかりました。
警察によると、殺人の疑いで逮捕された福井大学大学院特命准教授の前園泰徳容疑者42歳は、勝山市の路上に停めた車の中で東邦大学大学院生、菅原みわさん25歳を殺害したとされている。
前園容疑者は赤トンボの生態研究で知られ、菅原さんとは福井大学と勝山市が進める環境保全の研究に共同で取り組んでいた。
心より深くお詫び申し上げます。
会見した福井大学によると、前園准教授は研究熱心で、同僚の評価も高かったとのこと。
警察では2人の間に何らかのトラブルがあったと見て背景について調べている。
国際的な防災戦略を話し合う国連防災世界会議が仙台で始まった。
日本の果たすべき役割とは何なのか、記者の報告。
会議の場を通じて日本としては、2つのポイントを国際社会に発信できるかが問われています。
1つは、途上国などに対し、東日本大震災の経験をどれだけ伝えることができるか。
安倍総理は、防災に関わる人材の育成や途上国のインフラ整備など、各国へ今後4年間で40億ドルの支援を行うことを表明。
災害からのよりよい復興を目指す考え方など、防災を通じて日本の国際貢献策をアピールした。
そして2つ目のポイントは、世界各国の首脳や要人が参加するこの機会を利用して、日本の国際社会での地位向上に向けた信頼と協力を得ることができるかどうか。
会議に先立ち安倍総理は、国連のパン・ギムン事務総長と会談今日明日で、10カ国以上の首脳と相次いで会談し、国連安保理改革や非常任理事国選挙での日本への協力などを呼びかける。
安倍総理は今日のスピーチで、弱者に配慮し防災に取り組む人間の安全保障に言及した。
同じ安全保障でも、震災を経験した日本が打ち出す防災分野での安全保障の発信は各国の共感を得られるもの。
日本が得意な分野で世界をリードしていくことこそが国際社会から信頼を得られる国につながるはずです。
大阪で警察官が軽ワゴン車にひき逃げされて死亡した事件で、逃走した軽ワゴン車が事件後、ナンバーをつけ替えて逃走していた疑いがあることが捜査関係者への取材でわかった。
おととい、大阪市浪速区で交通違反の取り締まりをしていた新町照久警部が、軽ワゴン車にはねられ、死亡した事件。
はねたと見られる車は、昨日、乗り捨てられているのが見つかった。
車は堺ナンバーからなにわナンバーにつけ替えられていたとのことで、警察は車に乗っていたと見られる20代の男らが犯行後にナンバーを付け替えて逃走していた可能性が高いと見て行方を捜している。
23年ぶりのスピードアップで3分短縮。
東海道新幹線は今日からのダイヤ改正に伴い、最高速度が285kmに引き上げられ、のぞみ列車で東京−新大阪の最短所要時間がおよそ3分短縮される。
名古屋駅では今日、出発式が行われ最高速度285kmで運転するのぞみの出発を見送った。
JR東海では、ダイヤが乱れても今までより15km速く戻ることができるので時間の遅れも早く回復することができると話している。
アメリカ国防総省は13日、去年8月からの空爆で過激派組織イスラム国がイラク国内で支配していた地域のうち、およそ4分の1を取り戻したと発表した。
今年1月の時点では1%しか奪還できておらず、この2カ月間での成果をアピールした形。
一方で、イラク第2の都市モスルは支配されているほか、隣国シリアでの掃討作戦も進んでおらず、中国では日本の国会に当たる全人代が開かれています。
そこでの最大のテーマの1つが、反腐敗運動ですが、北京にいる日下部キャスターに早速伝えてもらいます。
全人代が始まってから北京、非常にいい天気が続いていたんですけれども今日は非常にかすんでいる状況です。
北京では青空が広がると、それがニュースになるくらい、空気の汚れが深刻なんですけれども、市民が関心を寄せる、もう1つの汚れがあります。
それが政治家や官僚たちの腐敗、汚職問題です。
全人代では毎回のように、汚職追放を叫んでいるわけですが、根絶とは非常に程遠い状況にあります。
私も実際、中国の現場を歩いてみて腐敗の蔓延ぶりに驚きを禁じ得ませんでした、ご覧ください。
これがおなじみかもしれませんけれども、人民大会堂の大ホールと。
旧暦の正月が明けてすぐに開かれた全人代=全国人民代表大会。
そこでは習近平政権が強力に推し進める反腐敗運動の成果が強調された。
虎もハエも同時にたたく。
これは大物幹部から末端の官僚まで例外なく摘発することを意味する汚職撲滅運動のスローガン。
汚職の取り締まりは今や中国国営のテレビで放送されるコントのネタにもなっている。
では、腐敗は一体どこまで進んでいるのか。
それを示す映像がある。
見晴らしのよいプールで、人目もはばからずに抱き合う1組のカップル。
これは中国共産党のある高官と女性アナウンサーの不倫現場をとらえた映像。
この高官は、高級レストランを借り切って女性の誕生日を盛大に祝ったり、小遣いとして女性に毎日1万元、日本円にしておよそ20万円を貢いだりするなど、欲望の限りを尽くしていたと言う。
こうした映像は、いずれもインターネット上で汚職を告発するサイト、人民監督網に掲載されたもの。
北京に住むこのサイトの運営者を訪ねた。
朱瑞峰さん。
8年前に汚職告発サイト、人民監督網を開設した。
情報の収集から裏づけ取材まですべて1人で行っていると言う。
私のもとには全国から不正を告発するメールが届きます。
私は毎日そのメールを見ていて信ぴょう性があれば、こちらから連絡をとります。
そして、内容を掘り下げるために取材をします。
こうした取材で得た証拠をもとに原稿を書いてこのサイトに掲載するんです。
朱さんが取材で入手した、山東省のある会社経営者のノートを見せてもらった。
これが日記?その中身は、贈賄日記とも呼べる、衝撃的なものだった。
これは山東省のある企業の社長が残したメモだそうですけれども、6月の8日に国税が査察に来ていろいろ帳簿を押収されたんで、それを返してもらうための工夫をしたと書いてあって、次のページには何をしたかというと、こういった国税の関係者と思われる人物をヨーロッパ旅行、こちらに行く先々の国が書いてありまして、スペインですとかスイスですとかフランス、イギリス、オランダと書いてありますけど、結果的にこういった旅行に招いて最終的に押収された帳簿が返ってきたということなんですね。
ノートには、この経営者がビジネスを円滑に進めるため、役人たちに渡した賄賂の具体的な金額などが克明に記されている。
中国の腐敗の深刻さは、もはや国が滅びる段階まで来ています。
お金が欲しいから役人になる。
お金に欲がない人は役人になどなりません。
毎日100通ほどの告発メールに目を通すという朱さん。
告発に至る動機は、不正を許せないという怒りもあれば、出世競争のライバルを蹴落とすためなど様々だと言う。
9月20日までに家を買うよ。
どんな家?大きな家だ。
どのくらいの?278平米で、大きなベランダがある。
実現できなかったら、どうするの?実現できなかったら僕と別れていいよ。
不倫の証拠映像を暴露されたこの高官は家を買うという約束を果たさなかったことなどから、不倫相手の女性本人から告発されたと言う。
映像がサイトに掲載されたわずか2日後、この高官は党の役職を辞任した。
そして、この高官の直属の上司に当たり、去年12月に失脚した大幹部がいる。
いわば、大虎。
胡錦濤前国家主席の側近中の側近と言われた令計画氏。
きっかけは、3年前に起きたある事故だった。
こちらは北京を走る環状4号線です。
そして3年前の3月、この立体交差点のところである事故が起きました。
高速で走ってきた外国製の高級スポーツカーがこの橋げたに衝突し、炎上しましたそして乗っていた3人の若者のうち、2人が死亡したんですけれども、そのうちの1人が、令計画氏の息子でした。
これが事故直後に撮影された現場の写真。
運転していた令計画氏の息子は死亡した。
高級スポーツカーには2人の女性が同乗していたが発見されたとき、なぜか2人は全裸だったと言う。
大破したスポーツカーは中国でおよそ1億円はするという高級外車フェラーリ。
この車を贈ったのは令計画氏の地元、山西省のある企業グループの会長だと言われている。
令計画氏は、どのようにして権力の階段を駆け上がり、その権力を金に変えてきたのか。
地元の山西省を取材した。
虎もハエも同時にたたくというスローガンのもと末端の官僚から大物幹部まで次々と摘発してきた習近平政権。
かつては、その習近平氏のライバルとも目されていた薄熙来氏は、収賄なとの罪で無期懲役の刑を宣告された。
さらに政権の中枢である政治局常務委員にまで上り詰めた周永康氏や人民解放軍の元ナンバー2、徐才厚氏も収賄などの疑いで立件されている。
そして、この3人に続く4人目の大虎として新たに摘発されたのが、胡錦濤前主席の側近、令計画氏。
令氏は、いかにして権力を欲しいままにしてきたのか。
令氏の故郷、山西省を訪ねた。
道端に売っているこういった雑誌を見ただけでですね、汚職問題というのが、いかに中国でニュースになっているかわかると思います。
そして驚くのは、ここは令計画氏の地元であるにもかかわらず、こうやって令計画家族の堕落の全容を解明すると、こういった内容の雑誌も売られています。
いかに中国の市民がこういった汚職とか反腐敗といった問題に関心が高いかを示していると思います。
令氏が生まれ育ったのは、山西省の南部に位置する運城という地方都市。
昔ながらの農村の風景と、風力発電が非常にアンバランスというか。
その中心部から車で1時間ほど移動した黄河の中流に広がる黄土高原の中の小さな村で令氏は生まれた。
ここが令計画氏が生まれた家で、今、このおばあさんが持っているそうです。
ちょっと中に入りましょう。
令氏が生まれ育ったのは黄土高原に昔からあるヤオトンと呼ばれる洞穴式の質素な住居だった。
このヤオトンで令計画氏が生まれた。
令計画氏を含めて5人の兄弟が小さい頃、ここで生活していたという場所です。
何とか崩れないで、こういう形で残ってます。
非常にある意味、当時は非常に貧しい生活をしていたというこがうかがえると思います。
令計画は小さい頃から勉強がよくできて、クラスのリーダー的存在でした。
令計画さんは、ここに、出てってから何回か戻ってきたことあります?兄弟たちは帰ってきましたが、令計画は全く帰ってきたことがないです。
令計画さんは、この地方のためにいろいろ働いてくれました?聞いたことがないね。
じゃあ、あまりこの地方の人には人気ないの?全く人気はないよ。
共産党の青年組織、共青団に入団したことをきっかけに、エリートコースを駆け上がった令計画氏。
足並みをそろえるようにして、兄の令政策氏は山西省の官僚として、弟の令完成氏は財界に進出して、一族はそれぞれ巨万の富を築いた。
香港メディアの報道によると、一族の資産は370億円にも上ると言う。
そして、その一部は意外なところに使われた可能性が指摘されている。
一族が蓄えた巨額の資産、多くが海外に流出したと見られています。
そしてその一部が、ここ京都で不動産購入に充てられたと見られています。
日本を訪れる中国人観光客は急増しているが、京都はそんな中国人観光客の人気スポットとなっている。
その京都でも、指折りの観光名所に位置する老舗の料亭。
香港の一部のメディアは、令計画氏の妻、谷麗萍氏が知人を介してこの物件を購入したと報じている。
随分高い金で買ったっていう。
本当?そこまで聞いてない。
この物件の所有権が海外に登記されている正体不明の会社に移転したのは2012年の2月。
それは奇しくも令計画氏の息子がフェラーリで事故死した時期と重なる。
2人の全裸の女性を乗せ、不可解な死を遂げた息子。
令氏は当初、権力にものを言わせて事故をもみ消そうとしたと言われている。
しかし、結局インターネットなどを通じて情報は拡散した。
そして去年12月、令氏は失脚し重大な規律違反の疑いで取り調べを受けていることが伝えられた。
兄の政策氏、弟の完成氏、そして妻も、既に取り調べを受けていると見られている。
令計画氏の故郷を取材中、中国の古典劇の巡業に出くわした。
地方の住民にとっては数少ない貴重な娯楽。
観客はいずれもお年寄りばかりだった。
子どもは出稼ぎに行っています。
じゃあ、なかなか帰ってこない?滅多に帰ってきません。
貧富の差は大きいよ、金持ちは莫大な財産を持ち、貧しい人は苦しい生活のまま。
再び北京です。
我々外国メディアは中国の腐敗問題についてとかく権力闘争に重ねて説明することが多いんですけれども取材してみて感じたのは、もはや権力闘争という次元をはるかに超えてるんじゃないかと。
それだけ利害関係がもう複雑に入り組んでいるし、汚職の根というのは非常に深いと思います。
例えば、かつて最高指導者の1人だった周永康氏ですけれども彼の場合、一族を含めて押収された資産、これが今のレートで言うと1兆8億円というとほうもない額なんですね。
歴史をひもときますと、中国というのは、これまで汚職・腐敗によっていくつもの政権・王朝が倒れてきた習近平主席もかつてのないほどの危機感をもってこの問題に取り組んでいるんだと思います。
それにしても日下部さん、人民監督網という民間の腐敗監視活動ですけれども、まさに体を張った活動というふうに言えそうですね?VTRで紹介した朱さんですけれども、これまでに100人もの役人や官僚の不正をあばいてきました。
こうした民間の監視ができる、その背景にはネットの進化があると思います。
朱さんの場合、万が一に備えて自宅には5台もの監視カメラがあります。
そして盗聴に備えて、5台の携帯電話を使い分けています。
ただ、何が一番朱さんの身の安全を守っているかというと瞬時に情報を数千万、あるいは数億人の人と共有できるネットの力が一番大きいんじゃないかと感じました。
地下鉄サリン事件から、間もなく20年となります。
事件に関わった捜査員が初めてカメラの前で語りました。
サリンに直面した瞬間、そして、実行犯が自白した瞬間。
あのとき、何があったのでしょうか1995年3月20日、死者13人、負傷者6286人を出した地下鉄サリン事件。
あの日、日比谷線・霞ヶ関駅でサリンに近づき、死のふちをさまよった警視庁の鑑識課員が、その瞬間を初めてカメラに語った。
「係長」という言葉にあ、まだ生きてる。
標的にされたのは、地下鉄日比谷線千代田線、丸ノ内線の3路線を走る5本の電車。
午前8時頃、霞ヶ関駅に向かう満員の電車内でほぼ同時にサリンがまかれた。
日比谷線東武動物公園行きの電車は、8時20分頃、霞ヶ関駅に止まった実行犯の送迎役は今、裁判が行われている高橋克也被告だった。
日比谷線の異常を知らせる無線が鳴り響いていた頃、鑑識課の杉山克之さんは警視庁本部を飛び出し、目と鼻の先の霞ヶ関に向かった。
現場鑑識は現場にいち早く行くことが勝負ですから。
杉山さんが係長をしていた現場鑑識は、現場で、事件の証拠となる資料を集める役目。
現場鑑識は無線を持ち歩かないため車を降りると情報が入らない。
杉山さんは不審物がある地下3階のホームに向かった。
ただ空の電車があって、そこに不審物があって、あとは全く普通と変わらない。
杉山さんは運転席から1人で先頭車両に入り、喚起のため、車内の窓をすべて開けていった。
今回初めて公開される当時の写真。
時間は8時40分頃、車内で杉山さんが窓を開けている様子が写っている。
ホームには公安部の腕章をした捜査員の姿も。
当初、爆発物を使ったゲリラ事件との情報があったからだろうか。
杉山さんは、新聞紙に包まれた不審物に近づく。
中から漏れ出す液体、これがサリンだった。
いつ発行されたどの新聞なのかメモをとろうとしたそのとき…日比谷線霞ヶ関駅でサリンとは知らずに不審物に近づいた鑑識課員の杉山さん。
メモをとろうとしたそのとき、手の感覚がなくなった。
逃げる、この場から離れるということだけしかなかった。
早くこの場から逃げなくては、杉山さんは、運転席から電車を飛び出す。
しかし、ホームを数十メートル走ったところで崩れ落ちた。
息が苦しい。
あごを上げ、とっさに気道を確保した。
天井を見たら明かりが見えた。
それが空のように見えて、そこに行けば呼吸が、空気がある、生きられるというふうに思った。
杉山さんが倒れたのと同じ頃、日比谷線中目黒行きの電車でも新聞紙に包まれた不審物で大混乱になっていた。
さらに、杉山さんが日比谷線霞ヶ関駅で倒れる20分以上前、200mほど離れた千代田線の霞ヶ関駅でも新聞紙に包まれた不審物で被害が出ていた。
千代田線の電車内に林郁夫受刑者が持ち込んだサリン。
霞ヶ関駅で新聞紙に包まれた不審物を車外に運び出した駅員の高橋一正さんと菱沼恒夫さんが死亡。
もう1人の駅員も倒れた。
当時の映像には、ビニール袋に入れられた3人の制服が映っていた。
路線が違うものの、同じ霞ヶ関駅で起きた異常事態。
杉山さんは、その状況を知ることなく倒れた。
これがそのときの写真。
9時10分、通信指令本部の無線交信で杉山さんが倒れたことが伝えられる。
これを含め、一連の写真を撮影した会社員の西村暢彦さん。
通勤の途中、たまたま現場に居合わせた。
白いタオルを杉山さんの口にあてがっていたということだけ覚えています。
杉山さんは、5日間生死の境をさまよった。
そして、後遺症と闘いながらおよそ1カ月後、職場に復帰。
オウム真理教への強制捜査に参加した。
兵器を何の理由もなく、本当に朝まじめに通っている人の中でまくなんてことは絶対に許せんと思った。
5つの電車のうち、最も被害が大きかったのが日比谷線中目黒行きの電車。
乗客が小伝馬町駅でサリンをホームに蹴り出したものの、既に車内にサリンが充満。
電車は、築地駅で停まった。
築地駅周辺で倒れた乗客を運び出すのに使われたのは、担架代わりの電車の座席。
これを指示した警察官がいた。
築地警察署の刑事課長だった新妻正平さん。
通報を受け、築地駅のホームに駆けつけた。
座席を外して負傷者を運び出すよう指示した後、最も多くの乗客が倒れていた3両目に入る。
何だろうと。
液体はビニール袋に三重に包まれ、警視庁に運ばれた。
その直後、目の前の蛍光灯が豆電球ほどに暗くなって見えた。
瞳孔が極端に縮まる縮瞳と呼ばれる症状だった。
待てよと、これが前に捜査一課で研究発表で聞いた、いわゆる縮瞳だった。
松本サリン事件の後、東京でサリンがまかれた場合を想定して、警視庁で毒性を学ぶ機会があった。
サリンかもしれない。
新妻さんは全員に避難するよう指示し、自分は最後に現場を後にした。
地上で倒れた乗客も、目の異常を訴えていた。
一緒にホームに下りた警察官は、全員救急車で運ばれたが、新妻さんは、刑事課長として現場に残り、治療を受けたのは午後4時になってからだった。
築地駅で採取された液体は9時5分頃、警視庁科学捜査研究所に届けられた。
待ち構えていたのは、毒物を専門とする所員の服藤恵三さん。
液体を届けた警察官も縮瞳の症状を訴えていたと言う。
室内で鑑定するのは危ない。
服藤さんは屋上に駆け上がった。
手袋もマスクも持っていなかった。
風上に回り、息を止めた。
さらに液体は成分分析装置、ガスクロマトグラフ質量分析計にかけられた。
そして、9時34分。
画面に浮かぶサリンの文字。
さらにこの19分後、霞ヶ関駅で採取された液体もサリンだという鑑定結果が出た。
その液体は、鑑識課員の杉山さんが倒れる直前に開けた電車の窓から採取されたものだった。
報告を受けた捜査一課長が地下鉄でまかれたのはサリンの可能性が高いと発表したのは午前11時のことだった。
サリンの可能性が高いと発表しています。
事件の2日後、警視庁は目黒公証役場事務長、仮谷清志さん拉致監禁の容疑で山梨県上九一色村にあるオウム真理教の拠点を一斉捜索。
一方、その後も社会を震撼させる事件が相次ぐ。
3月30日、警察庁國松孝次長官狙撃事件、4月23日、オウム真理教・村井秀夫幹部刺殺事件。
5月5日、新宿駅地下トイレ青酸ガス事件。
実は、この日に至るまで警視庁は、誰が地下鉄にサリンをまいたのかつかめず、捜査は行き詰まっていた。
しかし、翌5月6日、事態は急展開する。
うわ、こいつ死ぬ気だと思ったね。
地下鉄サリン事件の実行犯、林郁夫受刑者の自白。
林受刑者は逃亡先の石川県で発見・逮捕され、身柄を丸の内警察署に送られていた。
取り調べを担当した元捜査一課の刑事、稲冨功さんが初めてカメラの前で語った。
尊師の瞑想時の脳波を、逆に特殊な機械を使ってその人に打ち込むことができるんですね。
そうしますといろんな瞑想体験をするんです。
オウムの中でも医師として活動していた林受刑者。
医師の家庭に生まれ、オウム入信前は慶応大学病院で心臓外科の名医と言われ、石原裕次郎さんの手術に加わったこともあった。
当初、取り調べ室で座禅を組むなど全く心を開こうとしない林受刑者を前に、稲冨さんはこんな作戦を立てた。
心臓外科医だったときの記憶を呼び戻すため、林受刑者を「先生」と呼ぶことに決めたのだと言う。
さらに稲冨さんは、林受刑者の知性に目をつけた。
麻原のやってることは間違ってますよというのを、私が言っても、多分ブロックしてるから受け入れない。
出版物の中から林にそれを読ませる。
稲冨さんは、林受刑者に自ら考えさせるため服務規律を破って留置場に本を差し入れた。
その1つがナチスのユダヤ人虐殺など組織に服従する者が殺人をも犯す可能性があることを示した本「服従の心理」。
また新聞も自由に読ませた。
ある記事を見て、林受刑者がポツリとつぶやいた。
カントリーソング歌手、ジョン・デンバー。
林受刑者は同じく信者だった妻と入信前、アメリカでコンサートに行ったことがあった。
自分がオウムと関わりのない頃の環境が頭の中に出てきたということですね。
そして、逮捕からおよそ1カ月後の5月6日の午後9時頃。
そろそろ留置所入りますかという話をしたら、待ってくださいという話になった。
表情が覚悟してた、決意したって表情がありあり見えましたね。
突然の自白。
この日、林受刑者が書いた上申書からサリンをまいた実行犯5人と送迎役5人の名前がわかった。
警察幹部が色めき立つ中、捜査の指揮をとる寺尾正大捜査一課長は、稲冨さんにこんな指示をしたと言う。
言いなり調書とは、取調官にあえて詳しい情報を与えずに、犯人しか知り得ない事実を引き出させ、供述調書の信ぴょう性を高める捜査手法。
これは、林受刑者が地下鉄に持ち込んだサリンの袋。
これをどう包んだのか、具体的に供述を始めた。
使われたのは事件当日の新聞、赤旗だった。
包んでセロテープで止めた。
ギザギザじゃないと説明した。
サリンの袋を赤旗の中ほどの紙面で包んだと言う。
犯人しか知り得ない事実だった。
街路樹の種類はこれだと思うんですよ。
イチョウですか?うん。
ただ、あのとき20年前ですから、木がもっと小さかったと思うんですね。
地下鉄千代田線の電車にサリンをまいた後、林受刑者は、新御茶ノ水駅で下車。
街路樹の根元にサリンをつついたビニール傘を差し、サリンをぬぐったと言う。
取り調べの中で稲冨さんは、教祖・麻原彰晃との対決を決意させる。
わかりましたと。
事件から2カ月後の1995年5月16日、林受刑者の供述がもとになり、事件の首謀者である麻原彰晃こと松本智津夫死刑囚が逮捕された。
稲富さんが林受刑者と向き合った日数は、1年近くに及んだ。
犯した罪の大きさがわかるにつれ、複雑な思いになったと言う。
話すたんびに、一歩ずつ死刑に近づいてくるわけです。
死刑は避けられないと確信した稲冨さんは、ある日、林受刑者の母親を警察署に呼んだ。
お母さんお見えになって、開口一番、私におっしゃったことは今でも覚えてるけど。
悲しかっただろうね、本当に。
別に同情してるんじゃないですけどね、ああいうことを、お前、母親の口からいわせるのという意識あったですね。
事件から3年後、林受刑者に下った判決は無期懲役。
実行犯の中で、ただ一人死刑を免れた。
事件の解明につながった自白が評価された結果だった。
稲冨さんは8年前に警視庁を退職した後、刑務所の林受刑者と面会した。
そこで再び問いかけたと言う。
ここから先、何を振る舞うの?と。
どういうシステムがあって、そうなったのか。
自分はそういう場面に置かれたのか。
そのことについて自分は尽力したいということを言ってたですね。
そういうものの考え方、私、あってもいいと考えています。
林受刑者は先月、オウム真理教元信者、高橋克也被告の裁判で10年ぶりに出廷。
被害者に涙ながらに謝罪した上で、20年間の思いをつづった手紙を披露したいと裁判長に訴えたが認められなかった。
稲冨さんは林受刑者と同じ68歳。
今も面会を続け、交わした手紙は100通近く。
お元気であらせられますでしょうか。
林受刑者の手紙は、そんな書き出しで始まると言う。
閉塞した日本の社会を変えて若者が希望を持てるようにするにはどうしたらいいだろうか。
取材に当たりました武石記者です。
地下鉄サリン事件ですが、今でも後遺症に苦しんでいらっしゃる方もいる中で、被害者からは、この事件は防げたんじゃないかといった声も上がっているそうですが?実は警察は、事件が起きる4カ月も前にオウムがサリンを製造しているということをつかんでいたんです。
94年の6月に松本サリン事件が起きます。
その後に、95年の3月に地下鉄サリン事件が起きるんですが、その4カ月前、94年11月16日にオウムの拠点がある上九一色村の土からサリン残留物が検出されます。
ここでサリンの製造が濃厚になりまして、12月中旬に警察庁は、上九一色村の拠点に強制捜査をすることを実際に検討していたんですね。
それがなくなりました。
最近になりまして、当時の警察庁の刑事局長が、このとき捜索していれば事件が防げた可能性があるということを初めて明らかにしています。
しかしどういう話し合いがあって、誰が捜索をしないという判断に至ったのか、まだ明らかになっていません。
その流れで言うと、私たちの「報道特集」というのは去年の6月に松本サリン事件の当時の捜査一課長が信越放送のインタビューに答えて事件の捜査の実態というのを語ったというのがありましたね。
そのときに、事件の翌月にはオウム真理教に結びつく端緒にいきついていたんだと言ってたということを考えると、まだまだまだ戦後史の中でも突出した奇っ怪な事件の部分があると思うんですけれどもこの事件は20年の歳月を経て風化しているというような声が聞かれるんですけど?今回取材しまして、今回事件に関わった捜査員の中には体調を崩していたり、あるいは亡くなってしまったりしている方がたくさんいました。
警察官の中にも事件を知らない人が増えています。
一方で、オウム真理教の後継団体なんですけれどもその事件を知らない世代を勧誘のメインターゲットにしています。
勧誘の中で、地下鉄サリン事件はオウムが起こしたことではないという説明をしたケースがあったと聞いています。
つまりこの事件の風化が歳月の経過の中でだんだん捜査をした側も、それから捜査をされた側も風化していって事件が忘れ去られていくような、そういうことには決してしてほしくないと私も思いますね。
この事件の捜査、取材に私も関わったことを考えると、これは絶対に風化させてはいけない事件だと思いますね。
ここで訂正です。
先週の放送で福島県大熊町の空間線量をお伝えした際のテロップの表記に誤りがありました。
正しくはこちらです。
7マイクロシーベルト/アワーです。
訂正してお詫びいたします。
この後はスポーツです。
昨日就任したサッカー日本代表、ハリルホジッチ新監督は早速、Jリーグを視察しました。
ハリルホジッチ監督が視察に訪れたのは、J1、FC東京と横浜F・マリノスの試合。
注目は開幕戦で2ゴールを挙げたFC東京のエース、武藤嘉紀。
早速、その武藤がアピールする。
なんと味方のボールを奪ってシュート。
しかし、惜しくも枠をとらえられない。
すると今度は、代表復帰を狙うFC東京の守護神・権田がこのファインセーブ。
その直後にも。
これにはハリルホジッチ監督も拍手を送る。
両チームとも最後までチャンスを決めることができず、スコアレスドローに終わった。
ハリルホジッチ監督、初のJリーグ視察の感想は…メジャーリーグ、レンジャーズのダルビッシュ投手が痛めていた右ひじの手術を行うことを発表した。
ダルビッシュ投手は今月5日のオープン戦に登板した際、右上腕の張りを訴え、わずか12球で降板。
その後、周りの選手の勧めで3度の検査を受け、チームに早く復帰をするためにメスを入れる決断をした。
手術が行われるのは、現地時間の17日。
復帰まで1年以上かかる見通しで、今シーズンの登板は絶望的となったが、本人は前向きにとらえている。
そのダルビッシュと同じひじの手術から復活したカブスの和田。
注目のオープン戦、初登板は…左足を痛めるまさかのアクシデント。
このまま降板し、病院に向かった。
こちらは元気な41歳、イチロー。
レフトで出場すると、見せ場は2回に訪れる。
打球を処理し、ホームに素早く返球見事、タッチアウト。
衰え知らずの強肩を披露し、オープン戦2つ目の捕殺を記録したイチロー。
ベンチに戻るのも上機嫌だった。
続いて女子ジャンプのW杯最終戦。
高梨沙羅選手、総合3連覇へラストフライトです。
個人総合で2位からの逆転優勝を狙う高梨沙羅。
今シーズン最も大きなジャンプ台で1回目から128mを飛び、トップに立つ。
続く2回目。
こちらもトップの127mで優勝。
惜しくも個人総合3連覇は逃してしまったが今シーズン6勝目をマーク。
記念すべきW杯通算30勝目を挙げた。
サッカー日本代表のハリルホジッチ新監督、誕生となりましたけれども林さん、この方は非常に規律を重んじる人物だと聞いてますが?規律をかなり厳守させて、ハードワークでチームへの献身を求める手法をとるそうです。
練習に遅刻した主力選手を2015/03/14(土) 17:30〜18:50
MBS毎日放送
報道特集[字]【中国汚職問題▽地下鉄サリン20年】

中国全土に蔓延するといわれる汚職問題。その現場を取材した。▽地下鉄サリン事件から20年。捜査官たちが重い口を開いた。

詳細情報
番組内容
【中国 汚職の現場を行く】
中国全土に蔓延するといわれる汚職。習近平政権は汚職撲滅を目指し、共産党大物幹部から末端の官僚まで次々と摘発をおこなってきた。ひとりの大物幹部に焦点を当て、汚職の実態をレポート。
【地下鉄サリン 20年目の証言】
地下鉄サリン事件からまもなく20年。事件当日、捜査に当たった警察官たちはどう行動し、どんな困難に直面したのか?実行犯から自白を引き出した瞬間とは?
出演者
【キャスター】
金平茂紀(TBSテレビ報道局)
日下部正樹(TBSテレビ報道局)
小林悠(TBSテレビアナウンサー)
林みなほ(TBSテレビアナウンサー)
制作
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ニュース/報道 – 特集・ドキュメント
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事
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音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz

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