ロシアの人々は再生に向けて立ち上がろうとしています。
今年開業100周年を迎えた東京駅。
多くの人が行き交う改札内。
50もの名店が並んでいます。
そこに思わず足を止めてしまう店があります。
見入っているのは細やかな文様が印象的な小物類。
落ち着いた色合いに柄がキラリと輝いて上品な雰囲気です。
これらは「甲州印伝」。
山梨県伝統の革製品です。
財布や印鑑ケースなどおしゃれな小物が大人気。
文様は漆で出来ています。
甲州印伝の特徴は鹿の革に漆で文様を施す事なんです。
革と漆が生み出す独特の手触り感。
江戸時代に誕生して以来長く愛されてきたイッピンです。
他に例のない甲州印伝は近年改めて注目されユニークなデザインの製品が次々と開発されています。
手にする人を虜にする甲州印伝の魅力に迫ります。
富士山を望む山梨県甲府市。
甲州印伝はここで生まれました。
今回のイッピンリサーチャーはファッションモデルの生方ななえさん。
この印鑑ケースって10年ほど前から使っているものなんですけど持ってたんですけどどういう革の製品とか知らなくて甲州印伝は日本独自のワザやセンスが込められていると聞いたので今回その秘密を知るのがすごい楽しみです。
甲州印伝のワザを伝えるのは市内の4軒の工房だけ。
その1軒を訪ねました。
こんにちは。
店内に並ぶのはカラフルな色使いとポップなデザインが魅力の小物たち。
現代のライフスタイルに合った甲州印伝です。
ティッシュケースだ。
ふ〜ん。
柄ポップですね。
「スマートフォンカバー」って書いてある。
かわいい!でも遊び心がある。
はじめまして生方です。
はじめまして山本です。
(3人)よろしくお願いします。
これらの製品を作っている兄弟山本裕輔さんと法行さん。
今最も注目されている若手職人です。
最近大きな話題を集めたのがこのシリーズ。
革の鮮やかな色合いと複雑に組み合わせた文様が評判となりイギリスでも販売されました。
今まで誰も見た事のない印伝を作ってみようという事でこちらのシリーズを考えて。
世界遺産となった富士山を中心に4種類の文様が漆で表されています。
へぇ〜すっごいしっとりしててすごい柔らかい。
しかもぷくぷくしてる。
触るともうぷっくりって感じの立体的という感じですよね。
はい。
かなり模様としてはぷっくり膨らんだような手触りになっています。
すっご〜い。
心地良い手触り感を生む細やかな文様。
そこに秘められたワザとは。
今特に人気なのは一切合切入れられる合切袋。
革の裁断から工程は始まります。
鹿の革はあらかじめなめし青の染料で染めています。
さまざまな革の中でも鹿革は柔らかくて丈夫なため昔から好んで用いられてきました。
合切袋の大きさに合わせ裁断していきます。
柔らかそうですね。
かなり柔らかく作ってますね。
裁断が終わるといよいよ漆の文様を付けていく工程に入ります。
ここで登場するのが型紙。
着物の染めなどに使う「伊勢型紙」です。
伊勢型紙は和紙に職人が1つ1つ手で文様を彫ったもの。
柿渋を塗った和紙に薄い絹地を張り強度を持たせています。
この細かい穴の1つ1つに漆を流し込んで文様を形作っていくのです。
こちらがその漆。
このくらいの感じで。
お〜!生クリームみたいですね。
ちょっとおいしそうな感じがすると思うんですけど。
型紙の上からヘラで漆を塗り込みます。
。
甲州印伝の最も重要な工程です。
そんなに力を込めて。
そうですね。
かなり力は入れてます。
わ〜こっちまで力が入っちゃった。
(笑い声)じゃじゃん。
まだ…。
あ〜見えてきた!すっごいきれいですね。
すご〜い!きれい!全部に!はい。
へぇ〜。
全ての柄がきっちり浮かび上がりました。
でももうのせた段階でぷっくりしてるんですね立体的に。
型紙から剥がす時漆が糸を引くように引っ張られています。
一定のスピードで剥がすと糸が漆の文様の方に戻ってぷっくり盛り上がるのです。
このぷっくりとするのは何か…?使われていたのは特殊な加工を施して粘りけを増した漆でした。
こちらは漆器などに用いられる色漆。
顔料などを加え調整されたものです。
比べると色漆に対し印伝の漆ははるかにどろりとしています。
粘りけがあると漆の扱いは難しく高度なワザが必要とされるんです。
すっごい力入れてたんですけどあれはコツがあるんですか?斜め手前に引いてくるようなイメージで。
少し寝かせるんですね。
そうですね。
この角度でこのまます〜っと。
ヘラを傾けながら塗り込むのがコツ。
こうすると漆を型に押し込む力が強まるんだそうです。
二の腕の力こぶを維持しながら手前に持っていくようなイメージを持って付けて頂ければきれいに付くんじゃないかなとは思います。
なんか楽しそうですね。
はい。
もしよければ生方さんチャレンジしてみますか?いいですか?はいぜひ。
漆にかぶれる事もあるため手袋を着用しました。
混ぜてましたよね。
はい。
多少練ってください。
すっごい固い!はい。
固いっていうか何ですか粘着っていうんですか。
そうですね。
べとっとした感じは。
固い!動かすのが大変ですね。
はい。
これは力が…。
こんなに固いんだ!U字型に。
もういいですか?はい大丈夫です。
いいですかこれで?大丈夫です。
引きますよ。
二の腕に力を入れて。
はい。
進まないんですけど。
フフフ。
あれ?生方さんヘラを傾けるの忘れてませんか?大丈夫かな?もう痛いです二の腕。
こんなんで良い?筋トレじゃないですよねこれ?大丈夫です。
ここがもうパンパンですね。
フフフ…。
はい。
ゆっくり。
さて出来栄えは?お!え?あっ駄目ですね。
どうしたらいいですか?ここどうしたらいいですか?両手で。
そっちの手を離して。
フフフ…。
どうしたらいいんですか?こんな感じでいいですか?はい大丈夫です。
あ〜出来てない所がある!一見きれいですがアップで見ると歪んだりかすれたりしているのがわかります。
漆の盛り上がり方を見てみると残念!凸凹です。
山本さんのものと比べるとその差は一目瞭然。
漆を均等な力で型に押し込み一定の速度で剥がす。
それが文様をきれいに膨らませ革にしっかりと定着させるポイントだったのです。
漆は気温や湿度によって敏感に変化します。
それを見極め毎回力加減や速度を変えなければなりません。
漆付けのワザを身につけるだけでも少なくとも5年はかかると言われます。
裕輔さんと弟の法行さんの兄弟の成長を誰よりも見守っている人がいます。
父の誠さん。
甲州印伝のただ一人の伝統工芸士です。
誠さんが息子たちに伝えたい事それは…。
若い感性と受け継がれる伝統のワザが見事に融合したイッピンです。
次に生方さんが訪ねたのは甲州印伝の老舗。
「本能寺の変」が起きた年です。
そうこちらが甲州印伝発祥の地。
財布などに輝く小粋な文様。
これまでに400種類も作り出してきました。
その多くが今なお現役としてさまざまな製品を彩っています。
いらっしゃいませ。
こんにちは。
生方と申します。
本日はありがとうございます。
私これ持ってます。
そうですか。
まさにこれです!生方さんが愛用する小桜柄の印鑑ケース。
一見女性らしい柄ですが戦国時代の気風を反映しているんだそう。
こんなかわいいのを!武将たちが?そうそう。
散る時のこの美しさ。
それを昔の武将はとったみたいです。
なるほど。
こちらも定番の柄「とんぼ」。
常に前を向いて飛ぶ事から「勝ち虫」と言われ甲などにも多く用いられました。
こちらの可憐な文様は菖蒲。
その音が「尚武」につながるとして武士に好まれた柄です。
そもそも甲州印伝は鹿革に装飾を施した武具や甲冑に始まります。
「印伝」の名は南蛮貿易でインドの革製品が輸入された頃「印度伝来」を省略したものだとも言われます。
江戸時代太平の世になると身の回りの小物へと姿を変えていきます。
人々が粋を競った莨入。
革の全面に漆を塗りひび割れの風合いを出しました。
そして江戸後期になるとあのぷっくり漆の文様が誕生します。
従来にない粋な感じが評判を呼び甲州印伝は全国の人々が憧れる名産品となりました。
伊勢型紙を用いるという斬新な発想によって新しくて良いものを求める江戸の人々の心を満たしたのです。
いわゆる鎧甲に使った模様なんかは…甲州印伝の文様は今も進化し続けています。
20代の男性に支持されているファッションブランド。
甲州印伝と気鋭のデザイナーのコラボレーション作品が人気を集めています。
鹿革と漆の組み合わせは現代のファッション通にも新鮮な驚きなんだそう。
若者が好むヒョウ柄は従来の甲州印伝になかったもの。
合切袋にもアーティスティックな柄。
モチーフは音の実験などに用いられる「無響室」。
デザイナーが印伝の魅力に触発されて生み出しました。
私たちもいろいろな革を使ったり革に加工したりとかいろんなチャレンジをしてきたんですけども…400年の歴史を持つ甲州印伝は今なお流行の最先端であり続けようとしています。
印伝の老舗で全く違う表情の革製品を見つけました。
すごい。
繊細優美な色合いの財布やバッグ。
見覚えのある小桜柄ですが漆のぷっくりした文様ではありません。
革を茶色とベージュにふんわりと染めたもうひとつの印伝です。
わっ!すごいすてきですねこれ。
わかりますこの柔らかさ?ふにゃふにゃなの。
これも印伝なんですか?印伝です。
1300?更に1000年プラスされましたね今。
はい。
へぇ〜。
極上の手触りと繊細な縞模様。
実はこれ印伝のルーツに当たる1000年以上前の技法によって作られています。
その幻のワザを見ていきましょう。
こんにちは。
失礼します。
え!こちらは何ですか?こちらは「焼き擦り」という工程でございまして。
焼き擦り?はい。
鹿革は天然素材であるため表面に傷や固い部分があります。
皮膚感がすごい分かりますね近くで見ると。
ここ特にざらざらしてる。
固い。
焼き擦りに使うのは熱したコテ。
緊張する。
(音)キュッ。
焼けてる音がする。
革の固い部分を重点的にコテで擦りならしていきます。
次に研磨して表面を滑らかにしていきます。
この作業を革の状態を見ながら何度も繰り返すのです。
触っていただいて…。
さっきより滑らかになってます。
へぇ〜!すごい。
しっとり。
すべすべって感じ。
そしていよいよあの繊細な色を付ける工程です。
こちらなんですね。
はい。
色はなんと煙で付けます。
「燻べ」という技法です。
使われるのはかまどに稲ワラ。
そして「太鼓」と呼ばれる回転する樽。
ここに焼き擦りを施した鹿革を張ります。
縞模様を作るのはこのたこ糸。
あとでやり直しが利かないため丁寧に巻きつけていきます。
加減とかあるんですよねやっぱり。
引っ張り加減で緩いと糸がずれちゃって模様がはっきり出ないんです。
あ〜。
強すぎると今度は切れちゃったりとかするので。
切れるんだ。
ワラを燃やすといよいよ燻べの始まり。
あっ煙が!そうですね。
それでその穴があるんですね。
煙を多く出すため不完全燃焼の状態に保つんだそう。
予想以上の煙でちょっと今びっくりした。
こんなに出るんですね煙が。
不完全燃焼によって生じた炭素の微粒子を革に定着させていきます。
均等に色づくよう太鼓の速度や位置を微妙に調整しているのです。
革がほんのりと色づいてきました。
変化おわかりですか?わかりますすごい。
こんなに早く付くんですね。
そうですね。
お〜付いてきてる!1回の燻べは20分から30分ほど。
ワラが燃え尽きるまでの時間です。
これを10回ほど繰り返します。
ゆっくりと時間をかけて色を定着させるのです。
2日がかりで行われた燻べ。
たこ糸をカッターで切ると美しい三本縞が現れました。
煙によって糸以外の所が薄茶色に染め上がっています。
特殊なレンズで革の表面を見ると繊維が縮れているのが分かります。
実は燻べは色だけでなく柔らかさももたらしていました。
燻べを行っていない鹿革です。
もともとコラーゲンを多く含み柔らかいの特徴です。
それが燻べの後では更にコラーゲンがねじれ絡み合っています。
あの吸い付くような独特の柔らかさはこのねじれが生み出していました。
時間と根気が生み出す究極の手触りと優しい色合い。
古代の知恵を今に伝えるイッピンです。
生方さんひそかに楽しみにしていた事があります。
最初に訪ねた山本さんが生方さんのデザインに基づいてオリジナル印伝を作ってくれたんです。
こんにちは。
あの…お願いしたものなんですが。
はい。
出来上がっております。
ドキドキする。
こちらですね。
どうぞお確かめ下さい。
ありがとうございます。
すごいかわいい!え〜すごいですね!はい。
今までの印伝には無いようなデザインで作っていますね。
わ〜とってもかわいい!また時間がありましたらいつでもご提案ください。
はい。
大切に使わせていただきます。
革と漆と。
2つの天然素材を自在に操る職人たち。
甲州印伝は悠久の時を超えきょうも人々の生活に粋を添えています。
2015/03/15(日) 04:30〜05:00
NHK総合1・神戸
イッピン「革に輝く小粋な文様〜山梨 甲州印伝〜」[字]
山梨県甲府市の「甲州印伝」は、鹿革に漆で繊細な文様を施すのが特徴。粋なデザインと心地よい手触り感で、愛され続けるおしゃれ小物の魅力にモデルの生方ななえが迫る。
詳細情報
番組内容
細やかな文様が印象的な、おしゃれな財布や小物入れ。山梨県甲府市で作られる革製品「甲州印伝」は、鹿革の質感と、ぷっくりと盛り上がった文様が織りなす独特の「手触り感」が人気。実は、文様は「漆」でできている。革と漆、二つの天然素材から生まれる甲州印伝の魅力を、モデル・生方ななえが徹底リサーチ。型紙を使い、漆を盛り上げ、革に定着させる驚異の職人のワザ、さらに極上の触り心地で評判の「もう一つの印伝」も紹介。
出演者
【リポーター】生方ななえ,【語り】平野義和
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – カルチャー・伝統文化
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音声 : 2/0モード(ステレオ)
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