らくごのお時間【桂しん吉◆「鷺とり」】 2015.03.15


(福島)皆さんおはようございます。
番組の案内役を担当いたしますMBSアナウンサーの福島暢啓です。
この番組では毎月1回寄席にお邪魔し落語を一席お届けいたしております。
さて今回は大阪の道頓堀角座で寄席を開きました。
演じられた三席の中から本日はこの方の落語をご覧いただきます。
(桂しん吉)「お前何うれしそうに言うとんねん」。
芸歴17年…。
しん吉さんはさあ演目は…。
さて「らくごのお時間」となりました。
それではどうぞ!
(出囃子「セブンステップス」)
(出囃子「セブンステップス」)
(拍手)ええ〜ありがとうございます。
続きまして桂しん吉の方でおつきあいいただきたいと思うんですがこちら名前出ておりますけど決して「桂〜ん吉」ではございません。
「しん吉」と読みますんでひとつ間違わないように覚えていただきたいなと思うんでございますけれども。
まあ今なんかでもそうですけども今日なんかもそうですけどもいろんなとこ行くのにやっぱり噺家も電車に乗っていろいろ移動するんですがねまあ噺家はふだんは着物を着てない人の方が多いですから風呂敷へまとめてですねかばんに入れたりしていろいろ行ったりするんですけども荷物が多いときほかにも太鼓を持ったりですねチラシの束があったり重いときに電車乗ったら座りたいななんて思うときあるんでね空いてるときは座らしてもらおうかなとか思うんですけど大阪市内は油断してたら座れないんですね。
気ぃつけなあきませんね。
女性の団体の方がね…まあ女性の団体って言いましたけどはよ言うたらおばちゃんのグループがだあ〜っと来るともう諦めなあきませんああいうときは。
1人俊敏に動くリーダーが大概いてはりましてねそういう人が真ん中へ座るんです。
私がバッとこう座って「タナカさんタナカさんここ。
ヤマダさんヤマダさん。
スズキさん。
マツムラはん」とこう向かいを指すんです。
まだそこは空いてるんですね。
今から僕が座ろうかいなと思ってましたら「マツムラはん」と言われたりしますんでね。
空いてるんですけどもすでにもうマツムラはんの席になってるんですね。
またこの地下鉄なんかもそうですけどね…。
まあ大阪市内もそうですがいろんなとこ行かしてもらいますけどやっぱり大阪市内でしゃべらしてもらうのが本拠地っちゅう感じがしましてね。
こちらの角座でしゃべらしてもらうっちゅうの私初めてなんですけれども大阪の話を大阪でしゃべるっちゅうのはやっぱりいちばんこうねなんの気兼ねもなくしゃべれてええなと思ったりするんですが今日のところは私この大阪市内の地名が出てくる噺一席聴いていただきたいと思いますが…。
「こんにちはこんにちは」。
「おお〜おまはんかいな。
まあまあこっちへ入んなはれ。
えっ?いやいやまたおまはん遊んでるそうやな」。
「へい」。
「へいやあれへんがな。
あけへんがなええ年して仕事もせんとぶらぶらと。
お前どういう了見や?」。
「さあそれでんねん。
わたいもこないだからじっくりと考えた。
汗流して一生懸命働いてるよりはぶらぶらぶらぶらしてる方がどう考えても楽でんねん」。
「当たり前やがな。
ようそんなこと発見したように言いよったな。
えっ?お前今どこにいとんねん?」。
「なんですか?」。
「お前今どこにいとんねん?っちゅうねん」。
「どこにいとんねん?ってあんたの目の前座ってまんがな」。
「それは分かっとるわいな。
えっ?どこへ尻を落ち着けてんねん?」。
「いやいや座布団の上へね尻を落ち着けてまんねんけども」。
「寝起きしてるとこを尋ねてんねや」。
「あっおかげさんで布団の中で寝起きをしております。
ええ。
まだ公園で寝るとこまで落ちぶれてない」。
「ようそんなこと言うとんなお前。
居所は?っちゅうねん」。
「えっ?」。
「居所は?」。
「ああ〜かわいらしいですなコロコロキャンキャンっちゅうてね」。
「それは犬コロやろお前。
こんなん解説入れななかなか伝われへんこんなもん。
違うがな。
どこへ住んでんねん?お前。
住んでるとこはどこや?」。
「住んでるとこどこ?ってあんた人をタヌキみたいに言いなはんな。
目下のところわたいじゅっかいの身の上だ」。
「10階?これまた高いとこ住んどんねやな」。
「いやいやいや違いまんねん。
住んでんのは2階ですねんけどよその2階へやっかいになってますさかいに合わして10階」。
「それ居候ちゅうねんそれな。
ちっ!ほんまにどうもならんなおい。
どないして飯食うてんねや?」。
「どないして飯食うてる?そらまあちっさい時分は手づかみで食ってましたけどねこない大きなってまんねや左手に茶碗持ってね右手に箸持ってこないして…」。
「そら分かってるわいなおい。
茶碗入れるご飯はどないしてんねん?」。
「そらあんたおひつからよそいまんがな」。
「おひつのご飯は?」。
「釜から移すわ」。
「釜の米は?」。
「米かし桶から入れまんねん」。
「米かし桶の米は?」。
「げびつからすくうてくる」。
「げびつの米は?」。
「米屋が運んでくる」。
「米屋の払いは?」。
「そいつは倒す」。
「おいこらこら。
倒すやあれへんがなお前。
なんで払わへん?」。
「さあそこですがな払いとうてもこれおまへんねや」。
「そこのこっちゃ最前から言うてんのは。
えっ?お前銭もうけのことは考えてへんのんかい」。
「あっ銭もうけやったらわたいちゃんと考えてまっせ」。
「考えてんのんかい」。
「ええ。
今凝ってるのは鳥とりだ」。
「なんやて?」。
「鳥とり」。
「鳥とり?口とんがらがしてなんのこっちゃ?」。
「いや鳥を捕まえまんねや」。
「ああ〜鳥さしのことかい」。
「いやいや鳥さしってそんな辛気くさいもんと違います。
もうね雀なら…雀でもね100なら100そんだけの雀をいっぺんにぶわっと捕まえたろっちゅうそういう工夫を考えてまんねん」。
「はあ〜そんなことすんの?どないすんねん?」。
「まずちょっと元手張り込みますな」。
「何を商売すんのにも元がいるな。
何を張り込む?」。
「伊丹の名物でこぼれ梅っちゅうのおまっしゃろ?みりんの搾りかすの白いパラパラっとしたお菓子を袋にいっぱい買うてきまんねん。
で別に南京豆の殻の付いたやつ。
こういうひょうたん型の殻の付いた落花生ですわ。
あれも袋にいっぱい買うてくる。
でこのこぼれ梅と南京豆で雀を捕まえまんねん」。
「どないすんねん?」。
「あのねわたいの知ってるお寺が上町におまんねん。
そこに雀ぎょうさん集まってきまんねん。
まずそこへさしてべた一面にこぼれ梅をうわ〜っとまいときまんねん。
で物陰へ隠れて様子を見てるっちゅうとぎょうさん雀が飛んできよりますわ。
ちょっと来といなはれ。
見てみなはれ。
チュン吉さんにチュン助さんにチュン蔵さんにおチュンさん皆こっちこっちこっち。
見てみなはれ。
下に人間があんなおいしそうなものまいていきよりましたで。
これから皆でよばれに行きまひょかっちゅうと中に用心の深い雀がおっていやいやこれおかずに食いに行くことはできまへんで。
昔からねうまきもの食わす人に油断すなということがある。
うんいやいや最前からな見てるとあの物陰から隠れてるちらちら見える人間の様子が怪しいってなもんで警戒してよう下りてきよらん」。
「ほう」。
「するとはるか辰巳の方角から遅ればせに1羽チュチュウチュウチュウと飛んできたのが江戸っ子の雀だ」。
「江戸っ子の雀?雀にもそんな江戸っ子ってなもんがあんのんかい?」。
「粋なもんだっせ。
豆絞りの手ぬぐいかなんか肩へシュッと引っ掛けて…」。
「うそつけお前」。
「バタバタっと飛んでくるなりおうお前っちゃこんな所で一体何してはりまんねん?ってなもんでのう」。
「どこの江戸っ子やねんおい」。
「ああ〜お江戸のにいさんやおまへんかいな。
いえ今人間がね下にあんなおいしそうなもんまいてった。
これから皆で食いに行こかって言うてましたんやけどもこらなんぞ怪しいなっちゅうて警戒してまんねんっちゅうたらふんっ何を!っちゅうなり心一つきゅうていきよる。
だから贅六雀は嫌だってんだ。
あんなもんの何が怖ぇんだい。
昔から虎穴に入らずんば虎児を得ずってことがあらぁ。
高ぇ所へ上らなきゃずくしは食えねぇ。
おいらがいちばん!手本を見せてやるから見てなよっちゅうなりチュチュウチュウチュウと飛んできてこのこぼれ梅ちょいとつまんでバタバタバタバタ。
あらあんたにいさん戻ってきなはった。
なんともおまへんか?。
なんともあらしねぇ。
口当たりのいいオツなもんだい。
ははっやってみな。
さあこれかまされてやらなあきまへんがな。
大阪の名折れっちゅうことになりまんがな。
もう地元代表のおっちょこちょいが飛び出してほなわたいちょっと行ってきまひょか。
周りが行ってこい行ってこい。
こいつがチュチュウチュウチュウちょいとつまんでバタバタバタ。
次のやつがチュチュウチュウチュウちょいとつまんでバタバタ。
チュンチョイバタってやっちゃ。
しばらくするっちゅうと地面が真っ黒になるぐらいぎょうさん雀が下りてきよってこのこぼれ梅を食べよった。
食らいよった。
頂きよった。
ちょうだいしよったっちゅうやつでんな。
チュウチュウチュウチュウチュウチュウチュウチュウチュウチュウチュウチュウひっく…。
チュウチュウチュウチュウチュウチュウチュウチュウチュウひっく…。
チュウチュウチュウチュウチュウチュウひっく…。
チュウチュウチュウ…ジュウジュウジュウ…」。
「お前何を言うとんねん?」。
「いやいや考えてみなはれ。
このこぼれ梅っちゅうのはみりんの搾りかすだっせ。
酒ぎょうさん入ってまんがな。
ねっせやさかいチュチュウチュウと食ってる間にしだいしだいに酔いが回ってジュウジュウジュウ…」。
「雀が酔うてくんのかい?」。
「酔うてきまんねがな雀が。
酔うてしもうたら雀も人間もえろう変わりまへんな。
もう皆着物まくって尻出して…」。
「そらお前だけやがな。
いつも酔うたら尻出すのお前や」。
「いや〜こらええ具合になってきましたな。
どうです?ここらで皆でわあ〜っと宴会でも始めまひょか?っちゅうと年寄りの雀が出てきよってよ〜しほたらわしが皮切りに謡でもやろうっちゅうてそこらに落ちてる葉っぱかなんかね扇子代わりにあてがいよって・チュチュウラ〜・チュチュウチュラ〜・チュチュチュララ〜ってやりだしたら若い雀が承知せんわ。
おっさんそればっかりやがなもう〜。
向こう行っとけもう。
去年の忘年会もそれ2時間半やったんやほんまにもう。
ほな若い者で輪になって皆でさのさでも歌おうやないかって言うとみんながうわ〜っと…。
・一年は〜。
下手な歌やなお前おっきな声出して。
・365日〜ああ〜あぁ…とあくびの一つも出た頃を見計ろうて南京豆をばらばらっとまきまんねん」。
「なんや?それ」。
「さあ眠気の差したところへ南京豆が飛んできた。
あっこらええ枕が来たなとこれ頭置いてぐぅ〜っとこう寝たところをちりとりとほうきで集めて回りまんねん」。
「ようそんなこと考えたなお前。
それやったんかい?」。
「やりました」。
「うまいこといったか?」。
「さあそれです。
こぼれ梅をまいて雀がチュチュウチュウと食べるとこまではよかった。
頃がよしと南京豆をばらばらっとまいたらその音で皆びっくりしてうわ〜っと飛んでってしもうた。
なんじゃかんじゃでえらい損」。
「損したらあけへんがな。
えっ?どないすんねん損して」。
「いやいやこの損害を取り戻さないかんと思うんでね雀ってのはあんたなんぼ捕っても金かさが知れてまんがな。
今度は1羽でポ〜ンと値の張るもんを捕らないかんと思ってね今度は鷺を捕まえようと思ってまんねん」。
「何?」。
「鷺…鷺を捕まえまんねん」。
「鷺?お前そんなもん捕まえられんのか?」。
「大丈夫。
これはねちゃんといろいろ話聞いて分かってまんねん。
鷺というのは深田へ下りてどじょうかなんかつついてまんな」。
「ああ〜ちょいちょい見るな」。
「そうでっしゃろ?そうやさかい鷺のいてる所へ行って初めはだいぶに離れた所から鷺へ向かってさ〜ぎ〜!って呼びまんねん」。
「はい?なんて言うた?呼びまんねん?そんなもん呼んで分かんのんかい」。
「いやいやいや分かんのんかいってな心細いこと言われたらかなわんな。
鷺に向かってさぎ言ってたら当然分かりまっしゃろ」。
「うんまあお前に理屈言うてもしゃあないわ。
まあまあ分かるとして…なっそれからお前どないすんねん?」。
「そうそうそうさ〜ぎ〜!とこう呼びますわな。
ほなどじょうかなんかつつきながら誰?呼んだ?えっ?わしの名前…。
あっこれひょっとして人間と違うか?わしを捕まえる気やな。
気ぃつけないかんで。
う〜んけど待てよ。
この声の様子やったらまだだいぶに遠くの方やな。
うんうんまだ大丈夫やろ。
コツコツコツコツ食べてますねん」。
「うん」。
「その間にわたいがねごそごそごそごそ最前よりちょっと近づいていって最前より少し小さい声でさ〜ぎ〜って呼びまんねん」。
「うん」。
「う〜ん間違いないやっぱり人間や。
気ぃつけないかんなぁ。
けどまあまあまだ大丈夫や。
この声の様子やったらまだ遠くの方やわい。
コツコツコツコツ食べてます」。
「うん」。
「その間にまたわたいがごそごそごそごそ。
最前よりずっと近づいていって最前よりだいぶ小さい声でさ〜ぎ〜…って呼びまんねん」。
「お前何うれしそうに言うとんねんおい。
でどないなんねん?」。
「どないなんねん?ってあら?やっぱり人間や。
しつこいやっちゃな。
分かってるっちゅうねん。
けど待てよ。
この声の様子やったらだんだん近づいてるどころか遠くへ行ってるようやで。
とここですわ。
ねっほんまは近づいてまんねんけども声をだんだん小そうしていってるさかいに遠くへ行ってるもんやと鷺は思いまんねん。
はははっ鷺はあほや」。
「いやお前があほや。
お前があほや」。
「今度は鷺の真後ろへ行って…」。
「えっ?」。
「聞こえへんな」。
「聞こえまへんやろ。
こら聞こえんぐらいやさかいよっぽど遠くへ行きよったんやと安心しきってるところを後ろから…」。
「ようそんなあほなこと考えたなお前」。
「これあきまへんか?」。
「あかんと思うで。
えっ?鷺というのは用心深い鳥やで。
そんなもんでは捕まらん」。
「さようか。
けど鷺の羽根がええ値で売れると聞いたことおまんねんけどななんとか捕まえるええ工夫おまへんやろかな?」。
「ええ工夫って言われてもなわしもそんなん知らんけどとにかく鷺のぎょうさんいてる所へ行かないかんな。
うん。
あっおまはん北野の円頓寺っちゅうの知ってるかい?」。
「ああ〜萩で有名な」。
「そうそうそう。
向こうへ鷺がぎょうさん飛んでくるいうの聞いたことある。
向こう行ってみたらどうや?」。
「分かりました。
ほな行ってきます」。
「待ちなはれ。
暗なってから…夜になってから行きなはれ」。
「分かりました。
ほな行ってまいります」。
さあ気楽な男がありましてうちへ帰りましてね日の暮れるのを待ちかねよってポイと表へ飛び出します。
松屋町筋を北へ北へ。
天神橋をよいと渡りまして道を左へとりますというと一帯は北野。
萩の円頓寺へやってまいります。
「円頓寺」と書くんですが「えんどうじ」。
今でもお寺さんはあるんですけどね。
昔は広い所やったそうで境内にいっぱい萩があって有名やったんやそうですがもう夜も更けておりますので寺の門は閉まってます。
どこから入ったもんやろ?うろうろうろうろしてますと拍子のええことに昼間仕事をしておりました左官屋さんがはしごを忘れとる。
これ幸いっちゅうわけでこれをこう掛けましてトントントントン。
もったいない話ですが墓石を踏み台にポイ!飛び降ります。
闇を透かしてじぃ〜っと見ていますというと池には鷺がび〜っしり下りておりまして皆「がぁ〜!がぁ〜!」高いびきで寝ておる。
鷺というのは大変警戒心の強い鳥で皆が寝ておりましても必ず1羽用心のために起きてるんやそうですけどもこの日の当番に当たった鷺が至ってええかげんなやつで皆と同じようにして「がぁ〜!」。
そんなことは知らんこの男そっと近づいてまいりますと…。
「捕れた」。
(観客たち)あはははっ。
「あっさり捕れたなおい。
えっ?待てよ。
こいつ寝とるがなおい。
気楽なやっちゃなおい。
えっ?こんなにすっくりいくと思えへんがなこれな。
なんぞ入れ物持ってきたらよかった…。
あっええわいちょうどこの帯の間へ挟んどいたろかこないして首のとこ。
よいしょっと…」。
「捕れた」。
(観客たち)あははっ。
「こいつも寝とるわ。
どないなっとんねんおい。
えっ?また捕れたがなこれ。
なあ。
おお〜捕れる捕れる。
こんなもんぼろいもんやがなこれ。
おお〜あほほど捕れるがな。
ああ〜嫌になってきた」。
もうええかげんにやめときゃええんですけど腰の周りびっしり鷺をくくりつけましてもうぼちぼち帰ろうっちゅうわけでまたもったいない話ですが墓石を踏み台に塀の上へ上った。
下りようとしたんですがこの間に寺の夜回りがやってまいりまして…。
「あら?なんでこんな所にはしご掛かってんねん。
用心悪いがな」っちゅうのでこれを外してしもうた。
直してしもうたあとへやってきた。
「あら?最前の場所どこやったんかいな?」。
うろうろうろうろしてますうちに東の空がじぃ〜っとしらいでまいります。
鳥というのは大変朝の早いもんでぼちぼちこの腰の周りの一番鷺が目ぇ覚ましよった。
「うぇっ…うぇっ…。
ああ〜あれ?あら?うぇっ…。
ああ〜これ声が出しにくいなこれ。
喉が締めつけられとるこれ。
ああ〜そうかゆんべ飲み過ぎて風邪ひいたんやこれな。
布団蹴って寝てえらい目に遭うた。
気ぃつけないかん。
うぇっ…。
なんでこんな苦しいの?うぇっ…。
あっ!えらいこっちゃおい。
池の中で寝てると思ったらこれ人間に捕まってるでおい。
俺だけやあれへんな。
こっちは鷺衛門にこっちは鷺五郎か。
おい鷺衛門鷺衛門」。
「うぇっ…ああ〜!うぇっ…。
ああ〜おはよう」。
「いやおはようやあれへん。
機嫌なやっちゃなお前。
えらいこっちゃお前人間に捕まってんねやで」。
「えっ人間に捕まってんの?うそ!?」。
「いやほんまやがな。
えっ?俺らだけと違うがな。
この腰の周り帯の所にぐるり仲間が捕まってんねん。
見てみぃ。
なあせやろ?ほんならな俺こっちから起こすよってにお前そっちから起こせ。
分かったな?」。
「よっしゃ分かった。
おい起きぃ」。
「うぇっ…」。
「おい起きぃ」。
「うぇっ…」。
「おい起きぃ」。
「うぇっ…」。
「おい起きぃ」。
「うぇっ…」。
「しぃ〜。
静かにしぃや。
ええか?わしが合図したらな皆いっぺんに…一斉に羽ばたくねんぞ。
ええか?人間に悟られんようにしぃや。
ええか?いくで。
ひぃふぅのみっつで…」。
「バタバタバタバタ〜!」。
さあかわいそうにこの男沖天高く…。
「うわぁ〜!えらいことになったなこら〜。
捕らすときにはなんぼでも捕らしといて帰り際になってこんなえらい目に遭わすとはほんま詐欺に遭うたようなもんや」。
これオチではございませんですね。
ここで下りてもええんですけどもうちょっとだけ続くんでございますが。
気楽なこと言いながら飛んでますと目の前に鉄の棒が現れましてこらありがたいっちゅうわけで…。
「どっこいしょ!助かった。
助かった〜!これがなかったらどこまで飛ばされるか思った。
せやせや助かったはええけどこいつらえらい目に遭わせやがって。
もうええわ。
せっかく捕ったけど逃げていけ逃げていけ逃げていけ逃げていけ逃げていけ逃げていけ逃げていけ逃げていけ…。
んん〜よいしょっとっと…。
ああ〜これで助かった。
これ…ええっ?えらいとこ来てしもうたなこれほんまにもう。
ああ〜まぶしいまぶしい。
お日ぃさん昇ってきたなこれ。
お日ぃさん。
ええっ?待ちやということはこれ東の山や。
東…東…あの山並み見覚えがあるで。
生駒の山や。
あっ生駒ということはこれ大阪や。
はあ〜助かったなこれな。
またこれ下も普通の屋根と違うで。
大きな屋根やなおい。
あら?石の鳥居がある。
石の鳥居?大阪で石の鳥居っちゅうたら天王寺さんやでおい。
天王寺…あっこれ天王寺さんや!なんやこれ助かったがな。
おお〜うちの近くやがなこれ。
連れて帰ってもろたようなもんやな。
助かったなぁ。
あれ?おっかしいでおい。
五重の塔があれへんがなおい。
ないはずないで。
待ちやあれが石の鳥居やろ。
あれが亀の池か。
なっ。
半分しか見えへんねやな。
本堂で金堂で五重の塔…」。
(観客たち)あはははっ。
「しぇ〜!」。
ってなもんでねかわいそうに五重の塔の九輪上の方にある棒の所へつかまったまま腰抜かしてしもうた。
当時の大阪周りに高い建物なんにもございませんから大阪中からこれが丸見えでございまして…。
「おいえらいこっちゃ。
五重の塔の九輪になんや黒いもん引っ掛かってるで」。
「ああ〜そういうとなんか引っ掛かってまんな」。
「これひょっとしたら天王寺さんに変が起こってんのかも分かりまへん」。
「そうかも分かりまへんな」。
「ほな行ってみまひょか」。
「行ってみまひょか」。
っちゅうわけで大阪中の人間が天王寺さんへ天王寺さんへと集まってくる。
境内は黒山の人だかり。
もうこれを当て込んで物売り店が出る。
軽業が出る。
えらい騒ぎでございましてね寺の方としましてもこのままほっとくというわけにはまいりません。
人を救うのは出家の仕事。
なんとかしてやらねばならん。
どうしたらよかろう?相談をいたしました。
この寺には大勢の人間が寝るときに使う布団があるんやそうでこれで救ってやろうと話がまとまりまして…。
「あら〜ぎょうさんなんや人集まってきたなこれな。
みんな上の方指さしてなんや言うとんねん。
皆わし見に来たんかいなこれ。
ほんまに何すんねんもう。
また近所の恥さらしやがなほんまに。
なんや坊さんがぞろぞろ歩いてきたぞ。
坊さん坊さん坊さん坊さん坊さん。
坊さんぎょうさん来たなぁ。
まあまあ寺やさかいそうやろうけどもなんや大きなもん持ってきたで白い四角いもの…。
布団かいな。
大きなやつ…おお〜この真下へ運んできた。
どないしようっちゅうねん。
のぼりが立ってるな。
なんや書いてる。
ええ〜これへ飛べ。
救うてやるか。
あっなるほど。
あっこっから飛んだらよろしいの?あっ分かりました。
ほんなら飛びまっせ。
ほなちゃんとお願いしまっせ。
救うておくんなはれや。
飛び降りてんのにこの辺で待ってたらあきまへんで。
いきまっせ!ひぃふぅのみっつで…」。
「ブワ〜!」。
飛び降りた。
布団の真ん中へこの男入ったんでございますが四隅を坊さんが一生懸命引っ張っておりましたので布団がピンピンになっておりました。
この真ん中へズボッと入ったはずみにその反動でピュ〜ンとまた戻ってきて九輪にバッとつかまって…。
「はあ〜助かった」。
(拍手)
(受け囃子)「らくごのお時間」。
中学時代からプロの噺家になりたかったという桂しん吉さんにお話を伺います。
入門する先…どの師匠のところに入門しようかということもまあ迷われると思うんですけどそこで師匠を選ばれた理由は?特選落語全集って番組があってでハガキが当たったいうて行ったんですよ。
そこにうちの師匠桂吉朝が出てて…。
へえ〜。
でまあもうなんか雷に打たれたような感じですね。
はあ〜。
そこで入門を決めたと。
はい。
ほう〜。
入門はすんなりできたんですか?いや〜何回も何回も行って…。
まだ高校生のときに行ってて「とりあえず卒業はしなさい」って言われて「卒業しました!」って言いに行ったんですよ。
で「弟子にしてください」。
まあそのときも「連絡するからそれまで待っとけ」って言われてね。
4か月ぐらい掛かってこなかったんですけど掛けてきてくれはったのが七夕の日やったんですけど帰ったらうちの母がね「吉朝さんから電話あったよ」って。
でまだこんな電話やったんですけど…。
ダイヤル式の。
ほんなら留守番電話なったんです。
またこれも緊張するじゃないですか。
メッセージ残るんでね。
うちの師匠の声で吹き込んでて「桂吉朝本名坂上田村麻呂です。
ただいま清水寺を建てに行ってますので留守にしてます。
ご用件の方はどうぞ」。
ピ〜ッて鳴ったんです。
はい。
うそ〜んですよ。
(一同)あはははっ。
何言うてはんの?って。
とりあえず読んでですね失礼のないようにせなあかんとか思って冷静に…。
ただプッと吹いてしもうてた。
それを切ったのを横手で母が見てて「なんで大事な電話で笑ったりしたん?」。
そうですね。
「おかしいでしょ」。
いやちょっとこんなんやったんやって説明したら「うわっそれ私も聞きたい」って言いだして…。
(一同)あはははっ。
いやいやいや「待ってくれ」と。
「これはいちばん大事な…人生でおそらくいちばん大事な電話やからやめて」って言うたんですけど「番号教えて」言うてこうね電話したら「はいもしもし」って今度師匠出はったんですよ。
(笑い)居留守使うてたんすかね。
分からない。
謎なんですけど。
うちのおかんは「あっ!」言うてバンって切ったんです。
えっ!?
(観客たち)あははっ!何すんねん思いましたけど。
そりゃそうですね。
ええ〜!まあそういうのがあってそのあとすぐまあまあ見習い弟子にはなれたんですけど。
はあ〜そうですか。
すごいエピソードですね。
いやしかしまあそこから入門されてほんとに落語の道にずっと進んでいかれるということですが今後こういうことをやりたいという目標はありますでしょうか?これはもう死ぬまでの目標なんでしょうけどおそらくずっと。
うちの師匠吉朝は今年で亡くなって丸10年になるんですけどもう僕が噺家になって18年目…17年とちょっとなんですけど。
はい。
師匠がいなくなってからの方が今長くなってしまってね。
師匠のねまあ空気といいますか雰囲気をまあこれからずっと追い続けていきたいしそうするやろなと。
いいところをねそれぞれが受け継いでお見せできれば。
またすごい人やったので吉朝が。
まあたぶん生涯かかっても追いつけないと思うんですけど。
もう吉朝がいてるおかげで生涯の目標が出来たなっちゅうところはありますね。
なるほど。
桂しん吉さんに今日はお話を伺いました。
どうもありがとうございました。
ありがとうございました。
落語会のお知らせです。
本日ご出演の桂しん吉さんの独演会が4月18日に天満天神繁昌亭で行われます。
鉄道落語にもご期待ください。
そして…。
今年から天満天神繁昌亭で「上方落語若手噺家グランプリ」が開催されることが決まりました。
未来の落語スターを発掘するこのトーナメント。
入門6年目以上15年目未満の噺家がネタを競いグランプリを目指します。
6月の本戦に向け4月の予選には31人の噺家が登場!詳しくは番組ホームページまで。
来月は26日放送。
お楽しみに!2015/03/15(日) 05:00〜05:30
MBS毎日放送
らくごのお時間[字]【桂しん吉◆「鷺とり」】

<第18回>桂しん吉◆「鷺とり」▽月1回、第4日曜の朝に本格的な落語を一席。

詳細情報
お知らせ
月に1回、寄席小屋を訪れて、脂の乗った落語家の落語を1席お届けします。
今月は「道頓堀角座」です。
番組内容
今月は桂しん吉さんの「鷺とり」をお届けします。
また、師匠・桂吉朝さんに入門するまでのエピソードも披露。
お楽しみに。
出演者
【落語】
桂しん吉
【案内人】
福島暢啓(MBSアナウンサー)

ジャンル :
劇場/公演 – 落語・演芸
バラエティ – お笑い・コメディ
福祉 – 文字(字幕)

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
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