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【社説】

ひとり親手当 実態に即し対応せよ

 シングルマザーの女性が独身男性のいるシェアハウスに住んでいることで「事実婚」とみなされ、ひとり親手当を打ち切られた問題で、自治体が支給再開を決めた。実態に即した対応が求められる。

 あまりにしゃくし定規な「お役所仕事」と言わざるを得ない。

 東京都国立市のシェアハウスで暮らす四十代のシングルマザーの女性が、同じ家に住む独身男性と「事実婚」の関係にあるとみなされ、ひとり親家庭を対象とした児童扶養手当と児童育成手当の支給が停止された問題は、昨年末の本紙報道で明らかになった。

 板橋区でも、ひとり親女性がメゾネット(複層住戸)型のマンションに同居する親族女性の内縁の夫と「事実婚」とされ、手当支給を拒否されていたことも分かった。二つの事例は、氷山の一角だろう。

 自治体がこうした判断を下した背景には、一九八〇年に厚生省(現厚生労働省)が出した事実婚の規定に関する課長通知がある。

 通知では、事実婚と判断する基準として、当事者同士の「同居」を挙げ、同時に「社会通念上、夫婦としての共同生活」がある場合とした。その上で、「それ以外の要素は一切考慮することなく」と記している。

 だが、シェアハウスでは「同居」が、そのまま事実上の婚姻関係と結び付くわけではない。

 他人同士が一つ屋根の下で暮らす住まいの形態であるシェアハウスは、都市部を中心に急増している。家賃が比較的安く、都会でも孤立せずに暮らせるというメリットがある。国立市のシングルマザーには六歳の娘がいる。シェアハウスに引っ越し、子どもと二人きりという緊張感が緩んだという。一緒に住む仲間が娘と遊んでくれたりもする。母子家庭には便利な住まい形態と言える。

 行政には時代に即した対応が求められる。

 国立市は今月初め、手当の支給再開を決めたが、当然だ。厚労省は生活実態を反映した適正支給の徹底を自治体に要請するとともに、全国調査を実施している。近く事実婚の線引きを具体例を挙げて示す。

 ひとり親世帯の貧困率は高い。手当が「命綱」という家庭も多いだろう。不正受給の防止を強化するあまりに、必要な人に支援が届かなくなる事態は避けなければならない。そのために、厚労省は三十年以上も前の通知を見直すことも検討するべきではないか。

 

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