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【社説】

子ども安全調査 地域で見守る力高めて

 川崎市の中学生殺害事件と同様に、危機に直面しているかもしれない子どもが全国で四百人に上ったのは衝撃的だ。学校と警察、家庭との連携強化が急務だが、地域の力をもっと引き出したい。

 二月に上村遼太(うえむらりょうた)さん(13)が犠牲になった事件を受け、文部科学省が実施した子どもの安全についての緊急確認調査の結果だ。

 七日以上連続して連絡が取れなかったり、学校外の集団と関わったりして、生命や身体に被害が生じる恐れのある小中高生の実態が浮かんだ。中学生が六割を占めたのは見過ごせない。

 不登校なのに保護者の協力が得られず、音信不通の子どもが多かった。警察に捜索願が出されている事例もあった。登校はしているが、暴走族と交際し、仲間内で暴行された子どもも目立った。

 調査をきっかけに、無事が確かめられる子どもも相次いでいるようだ。遅きに失したとはいえ、不登校の子どもを中心に、学校外で遭遇しかねない凶悪犯罪のリスクに目を向けた意義は大きい。

 自分の身を案じてくれる大人がいるというメッセージを、問題を抱えた子どもに伝える機会にもなったはずだ。不登校の事情に配慮しながら安全を確保する態勢づくりの一歩としたい。

 もっとも、教育委員会や学校のみの努力では限界がある。子どもの非行や犯罪に対処する専門組織との連携の在り方を見直し、強化を急がねばならない。

 まず警察だ。都道府県や政令市の教委の多くは、問題のある子どもの情報をやりとりする協定を都道府県警と結び、学校は地元警察署と連絡協議会を設けている。

 川崎市は個人情報の保護を優先させ、神奈川県警と協定を結んでいなかった。学校警察連絡協議会でも、上村さんの情報は名前を伏せて提供されたとされ、結果として対応が後手に回った。

 人命が危ぶまれる事態にはもちろん、安否確認が難しい段階から機能するよう知恵を絞りたい。警察官OBらのスクールサポーターや防犯ボランティアの力を借りる手だても考えられないか。

 問題の背景に虐待や貧困があると疑われれば、児童相談所や福祉事務所につなぐスクールソーシャルワーカーの出番だ。学校は精いっぱい努力すべきだが、ケースによってはためらわずに協力を仰いでほしい。これも事件の教訓だ。

 何より地域の大人が子どもに関心を払い、異変に気づいたら声掛けや通報をする心構えが大切だ。

 

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