目撃!日本列島「裁判員 私たちはそれから…」 2015.03.15


都内の警察署へと急ぐこの男性。
万引きで勾留された人を迎えに行こうとしています。
男性は最近まで犯罪とは全く無縁でした。
再犯を防ぎたい。
そう考えたきっかけは4年前裁判員を務めた事でした。
私たち市民が殺人など重大事件の裁判に参加し判決を出す裁判員制度。
開始から今年で6年。
審理に臨んだ人は5万人を超えました。
NHKが去年経験者を対象に行ったアンケートでは実に8割の人が裁判のあと意識や生活が変わったと答えています。
ふだん関わりのない重大事件に向き合った時人々は何を感じるのでしょうか?強盗殺人事件の裁判員を務めた男性です。
無期懲役か。
死刑か。
重い決断を迫られました。
それでも…殺人事件を担当した女性です。
裁判で事件の背景を知り別世界の事だと考えてきた犯罪を身近に感じるようになりました。
今少しずつ語り始めた裁判員経験者たち。
その胸の内に迫ります。
都内で不動産業を営む…賃貸アパートの仲介や管理をしています。
犯罪とは無縁だった田口さんが事件に向き合う事になったのは4年前。
突然裁判所から通知が届き裁判員として審理に参加する事になったのです。
担当したのは若い女性が死亡した事件でした。
被告は30代の男性。
容体が急変した女性に適切な救命措置をとらず死亡させた罪に問われていました。
人生で初めて刑事裁判の法廷に足を踏み入れた田口さん。
意外だったのが目の前に現れた被告が事件を起こす人に対して抱いていたイメージと大きく違っていた事でした。
被告の人となりは裁判が進むにつれて更に明らかになっていきました。
裁判は9日間。
法廷での経過を後日書き記したノートです。
弁護士や検察の質問に対し時に感情的になったり動揺したりした被告。
そんな被告の人間味を知るにつれ田口さんはその人生を大きく左右する判決を出す事に重い責任を感じるようになっていきました。
そして裁判の終盤。
最も悩んだのが田口さん自らが質問し家族への思いを聞いた時でした。
したらばあの…しばし考えたあと…評議の結果判決は懲役2年6か月の実刑。
裁判で分かった事実や判例を考慮し皆で出した結論でした。
しかし田口さんはこの判決が本当に妥当だったのか今でも分からないといいます。
NHKが行ったアンケートでも多くの人が判決を出した責任の重さに葛藤を続けていました。
裁判のあとも続く葛藤。
それは通常では知りえない事件の背景を知った事から始まったという人がいます。
6年前殺人事件の裁判員を務めた女性です。
担当した裁判の被告は70代の男性。
近所の住民を路上で口論になった末殺害した罪に問われていました。
女性が驚いたのは被告が陥っていた厳しい境遇でした。
娘と死別し妻とも離婚。
1人で生活保護を受けながら暮らしていました。
地域でも孤立し追い詰められていく中で起こした突発的な犯行でした。
被告自身に罪の責任をどこまで問うのか。
悩んだといいます。
本人だけではなくて…判決は懲役15年。
被告一人に刑罰を科すだけで終わっていいのか。
今も考え続けています。
人の人生を決めた重み。
そのつらさを語り合う事で乗り越えていこうという動きが始まっています。
5年前に裁判員を務めた…裁判での苦い経験を今乗り越えようとしています。
担当したのはホームセンターで30代の男性が見ず知らずの客を刃物で刺した殺人未遂事件でした。
被告は精神科への通院歴がありました。
責任能力はあるとされましたがはっきりした動機は語りませんでした。
裁判官と共に評議を始めた古平さんたち。
殺人未遂。
責任能力。
人生で初めて向き合う事ばかり。
裁判は3日間。
さまざまな意見が飛び交う中で考えをまとめきる事ができなかったといいます。
都内に暮らす古平さん。
2人の子どもを育てています。
深い後悔の中で気付いたのは日頃から事件や犯罪について考える大切さでした。
将来を担う子どもたちには考える力を身につけてほしい。
じゃあおはようございます。
(子どもたち)おはようございます。
今日は第6回目…。
身近な問題をテーマに勉強会を始めました。
メンバーは小学生の娘とその友達です。
(古平)カンニング!あ〜正しくないね。
(古平)人のもの…お〜そうだよね。
ない?不正をする人の状況も知る必要がある。
裁判でそう痛感した古平さん。
今度はカンニングする人の気持ちを考えてみようと呼びかけました。
見たとかやってる人知ってるとか…。
裁判員はやり直せない。
しかし大事だと気付いた事を伝えていく事で責任を果たしたい。
今はそう考えています。
4年前裁判員を務めた不動産業の田口さん。
判決の懲役2年6か月は果たして妥当だったのか。
ずっと考え続けてきました。
被告はどんな所にいるのか。
気になった田口さんは全国の刑務所を見学して回りました。
そこでこれまで知らなかった事実に直面します。
多くの受刑者が出所後社会に居場所を見つけられず孤立。
犯罪を繰り返していたのです。
裁判員は審理に参加するだけでいいのか。
今度はその事に頭を悩ませるようになりました。
何ができるのか考えていた田口さんにこの日突然警察から連絡が入りました。
管理するアパートの住民が万引きで逮捕されたというのです。
捕まったのはフィリピン人の女性。
日本に身寄りはなく警察から田口さんに住所の確認があったのです。
田口さんはとっさに会いに行く事を決めました。
女性が警察署から出てきました。
初犯で反省していたため罪には問われませんでした。
経済的に苦しい中でつい魔が差してしまったのだといいます。
ものすごいほっとしました。
もうあの何て言うの…忘れないように…。
そう忘れないで…。
女性はもう二度としない事とスーパーに謝りに行く事を田口さんと約束しました。
この時田口さんはある出来事を思い出していました。
かつて出所したばかりの人に部屋を貸してほしいと言われ断ってしまったのです。
(田口)じゃあゆっくり休んではいおやすみ。
おやすみなさい。
これからも折に触れて声をかけていこうと考えています。
過ちを犯した人でも排除はしない。
裁判員を経験したどりついた答えです。
裁判員制度が始まって間もなく6年。
暮らしの中で人を裁いた意味を問い続ける人たち。
誰もが担うかもしれない裁判員。
その経験を私たちはどう受け止めどう生かしていくのか問われています。
2015/03/15(日) 08:00〜08:25
NHK総合1・神戸
目撃!日本列島「裁判員 私たちはそれから…」[字]

市民が参加する裁判員制度が始まって今年で6年。経験者たちは、人を裁く重みと向きあったことで、考え方や生き方が変わり始めている。裁判員たちの「その後」を見つめる。

詳細情報
番組内容
私たち市民が参加する裁判員制度が始まって今年で6年。裁判員を務めた市民は5万人を超え、経験者たちは今、それぞれが感じたことを少しずつ語り始めている。考え方や生き方が変わったという人も多く、新たな行動を始めた人たちもいる。再犯を防ぐために出所者の支援を始めた人、議論する力をつけるために子どもたちと勉強会を始めた人…。裁判の後、人々は何を考え、どう変わったのか。裁判員たちの「その後」を見つめる。
出演者
【語り】糸井羊司

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz

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