ふるさと再生 日本の昔ばなし 2015.03.15


昔大阪の町に大泥棒がいた。
たくさんの手下を連れて目ぼしい家を次々と襲った。
泥棒はある晩上町にある大きな両替屋に目をつけた。
みんなぬかるな!丸八は大阪でも指折りの両替屋。
金はうなっとるんや。
分け前はたんまりやるからな。
(子分たち)へい!シーッ!何日も前から調べてあるので忍び込むのはわけない。
丸八の番頭が気づいたときにはあんなに厳重に戸締りをしていたのにもかかわらず泥棒があっちにぬっ!こっちにぬっ!番頭はあっという間に縛りあげられた。
ぐずぐず言わんとあり金全部出さんかい!ところがふと部屋のすみを見ておや?っと思った。
丸八の妻が子供を看病しているのだ。
フゥフゥ…。
子供はもう泣く声も出ないほど熱にうかされていた。
その子は何の病気や?はい強風病です。
うぅ…お医者様にも見放されてどうしたらええんか…。
大泥棒はじっとそのありさまを見ていたが突然1人の手下に…。
お前これから道修町へとんでいってほしサンショウを三合買うてこい!へい!お前は井戸へ行って水一升くんでこい!へい!この手下よその家なのにまるで自分の家のように様子をよく知っていた。
まもなく水一升きっちり量って桶にくんできた。
そこへさっきの手下がほしサンショウを三合買ってきた。
そんならこのほしサンショウをその水で煎じるんじゃ!へい!手下はさっさとかまどへ行って早速プンプンと強いにおいをさせてほしサンショウを煎じた。
〜ぷは〜。
(うめき声)ごりょうさんそのぼんぼんわしに抱かしてくれなはれ!は…はい。
〜はぁはぁ…。
そしてしばらくすると…。
はぁはぁ…。
ぐったりしていた子供は声をあげて泣き出した。
(泣き声)丸八の主人と妻は夢ではないかと喜んだ。
あぁぼんぼんようなってくれたのか!よかったよかった。
大泥棒は妻に子供を返した。
主人は今はもう相手が大泥棒であることも忘れて大将の前に手をついた。
大泥棒様このご恩は一生忘れません。
ちっとばかりでございますがどうかこれをお受け取りなすってください。
おそるおそる10両の金を差し出したのだ。
う〜ん…。
そんなはした金はいらんわい。
ここは大阪でも指折りの両替屋。
その病人の子さえおらんかったら家中の金は総ざらえにして持っていくつもりやったんや。
それやのにこんな病人のおるところに忍び込んだんはわしの不運や。
アンタは幸運をつかんだんや。
そう言うと手下をまとめて引き揚げようとする。
あなた様のおかげで子供の一命を取りとめたのです。
これだけはぜひ。
う…。
う〜ん…。
そうかわかった。
ほんなら半分だけもらっとこうか。
ほら少ないが今夜の働き賃やみんな取っとけ!金は全部手下に分けてやりあっという間に夜の町へと消えてしまった。
丸八の主人は夜が明けるとすぐ奉行所に呼ばれた。
確かにゆうべ私の家に大泥棒が入りました。
なんと!ゆうべ泥棒たちが持っていった5両の金は盗まれたのではありません。
実はかくかくしかじかなんでございます。
ほう泥棒にもそんな心があるのか。
どうかご詮議立てなさいませんように。
奉行は泥棒の心意気にいたく感心した。
丸八の主人の言うとおり泥棒を追うことなくそのまま見逃したということです。
う…腹痛ぇ。
昔ある農家に年寄りの馬がいた。
なに!?ニンジンを食わせろって?おめえはもう年とって荷も運べず田畑もおこせねえダメ馬だ!贅沢言うな!そろそろ若い馬と取り替えようかのう。
若いときゃさんざんこき使ってこんだけの田畑を耕したのは誰だと思ってるんじゃ!クソッ!もしかして若い馬と引き換えに肉屋で鍋に…。
なんてことにされてたまるか!こうして馬は長年暮らした農家を出て行った。
もとより行き先のあてもない一人旅。
ヨボヨボと歩いていくと…。
よう馬のじいさん。
たった一人でどこ行くんだい?おや?犬どん。
実はなおら年とって働けんようになってな飼い主がもういらん言うんでゆうべ家出てきたとこだ。
あんれまじいさんもかい。
犬どんアンタも生まれつきの野良には見えんが…。
おらもな年とったればもう番犬の役もお払い箱じゃ。
どうしたい?不景気面並べて。
いったいどこへ行くんだい?猫どんアンタも飼い主から見捨てられた口と見たが違うかな。
年とってニャーネズミも捕れなくなって家でゴロゴロしとったら放り出された。
どうだい行くあてもないけんどおぬしも旅の道連れといかんか?うん行くべ。
なんだい飛び降りられんのか?猫のくせに。
ニャー!テヘヘこのザマだよ。
猫も連れ立って旅は続いた。
コケッコケッ!コケッコケッコケーッ!ケッケッケーッ!ケッケッケーッ!どうした?鶏の姉さん。
いやね卵を産めなくなってから目も悪くなっちまってエサと小石の見分けもつかないのさ。
年はとりたくないねぇ。
おめえ今夜のごちそうによさそうだな。
そこにいるのは猫かい?よく見りゃあんまりうまそうじゃねえな。
こら!待て!ヒーッ!ニャーッ!ニャーッ!これ猫どん。
無体なことはやめなさい。
腹の足しになるような鶏でもない。
だってさどうするの?本当だ。
ちっとも食欲わかねえ。
だろ?姉さんも家をおん出されたのかい?つぶして鶏ガラのダシにされそうだったからこっちから出てやったのさ。
一緒に行こう。
行くあてもない旅だがね。
ああいいともさ。
退屈しのぎについていくよ。
こうして一行は旅を続けた。
そして日が暮れて夜になった。
一行はねぐらの心配をしながら暗い森を進んでいくと1軒の朽ち果てたあばら家を見つけた。
ぼんやり明かりがついとるが人が住んどるのか?おらが見てくる。
ハハハ今夜はうまくやったな。
千両箱は重かったがな。
ごちそうまでごっそり!これだから泥棒はやめられんな。
今夜はたっぷり飲んだり食ったりじゃ。
明日親分に見せたらごほうびどっちゃり!
(笑い声)なに?泥棒2人?悪人どもかい?ひとつ脅かしてやろう。
どうやってだい?よ〜し。
おらが下の台になるからおめえたち順々に上にあがれ。
いいか合図したら上から順番にひと声ずつ鳴くんだ。
今だ!
(2人)なに?
(鳴き声)ギャーッ!コケコッコ!ニャー!ワン!ヒヒーン!
(2人)化け物だ!
(2人)お助け!馬どんの作戦うまくいったがや。
とりあえず腹ごしらえだぜ。
泥棒さんよほど怖かったんだね。
慌てて逃げて行きよったのう。
ここをおらたちのねぐらにしよう。
ああもう誰もおらたちを追い出すヤツはいねえしのう。
バカ野郎!おめえたちはお宝ほったらかしてしっぽ巻いて逃げてきたのか!ででもあれはとんでもねえでっけえ化け物で…。
恐ろしい声でギャオーって。
よし今から寝込みを襲ってその化け物やっつけてやるべ!ぬかるなよテメエたち。
おい誰か来るぞ!3人の足音だ。
さっき逃げ出したヤツらのにおいともう1人。
仕返しに来たニャーッ。
さぁいけ!どこだ化け物は!お〜っお宝が光っておる。
いただき…なんだこれはイテエ!イテテッやめろコラ!イテテテッやめろ…。
待ってよ親分!助けてくれ!また泥棒追っ払ったけんど…。
こんな騒ぎはうんざりだニャ。
欲張りで身勝手な人間にコリゴリした一行はまた旅立つことにした。
心安らかな楽園を求めて。
昔ある男が江戸へ出稼ぎに出ました。
男は毎日朝から晩まで一生懸命真面目に働きました。
そうしてたまったお金は三十両になりました。
せっかく江戸へ来たのだから何か珍しいものを土産に買って帰るべ。
三十両を胴巻きに入れて江戸の町をあちらこちら見てまわりました。
これは違う。
これも違う。
う〜んいまひとつ…。
ん?何だこの店は。
話十両?品物を売る店はたくさんあるけれど話を売るとは珍しい店だな。
話を一つ売ってもらいたい。
話一つ十両だがお金を持っているかな。
男がお金を払うと店主はじっとこちらを見たあとゆっくりと口を開きました。
話があまりにも短いので男はもの足らぬ気分になりました。
もう一つ売ってもらいたい。
ではもう十両出してもらおう。
これではさっきよりももっと短かったので最後の十両を渡しました。
もう一つ売ってもらいたい。
と前のよりももっともっと短い話を売ってくれました。
男はもっと長くてよい話を買えると思っていたのにこんな短い話だけを三つも買ってあてが外れたと思いました。
はぁせっかく骨を折って働いてためた三十両をこんなくだらねえことに使っちまった。
そんなふうにぼやきながら男は国へ帰っていきました。
(雷鳴)突然雨が降ってきたので近くにあった大きな木の下へ駆け込もうとしたそのとき…。
はっ!大木の下によってはいけないあ〜っ!突然雷が落ちて目の前の大木が真っ二つに裂けてしまいました。
ああ危なく丸焦げになるところじゃった。
あの話は十両では安かったわい。
すっかり暗くなっちまった。
今日はあの家に泊めてもらうべ。
(戸を叩く音)家の中からは美しい女の人が出てきました。
どうぞお泊まりください。
寝巻きはこちらをお使いくださいな。
今お風呂を沸かしますね。
こちらの上等なお酒はいかがですか。
こんなによくしてもらえるなんて運がよかったわい。
はっ!?ねこなで声にはゆだんするなうわっ!ありゃ何じゃ?見ると天井から大岩が下げられてありもうすぐ頭に落ちるようになっていました。
ハァ…あのまま寝ていたら頭に落ちてきて死んじまってたぞ。
しかしあの話が十両とは安かったわい。
それからまた何日かかけてようやく自分の家に帰りつきました。
ハァやれやれ…。
なんといっても我が家は安全じゃ。
部屋の中に入ろうとすると障子に見知らぬ男の影がありました。
あっ!?嫁のヤツさては留守の間に他の男と仲よくなったな。
よし!女房と男をこらしめてやる。
はっ!?短気は損気男は干し柿をひとつ食べて心を静めました。
お〜い今帰っただ。
今お前と一緒にいた男は誰だい?これはアンタの留守の間女だけの暮らしは不用心だと思ってお母さんに男のカツラをかぶってもらっていたのですよ。
ああ…もう少しで大切な2人を失ってしまうところだった。
あの話は十両では安かったわい。
女房の作った飯は本当に懐かしくおいしかった。
こうして無事に帰ってこられたのはあの話のおかげだと男はつくづく感謝するのでした。
ところでアンタ稼ぎの三十両はどうしたの?ぬあっ!?2015/03/15(日) 09:00〜09:30
テレビ大阪1
ふるさと再生 日本の昔ばなし[字][デ]

「泥棒の損」
「馬と犬と猫と鶏の旅」
「話十両」
の3本です。お楽しみに!!

詳細情報
番組内容
私たちの現在ある生活・文化は、昔から代々人々が築き上げてきたものの進化の上にあります。日本・ふるさと再生へ私たちが一歩を踏みだそうというこの時にこそ、日本を築いた原点に一度立ち返ってみることは、日本再生への新たなヒントになるのではないでしょうか。
この番組は、日本各地に伝わる民話、祭事の由来や、神話・伝説など、庶民の文化を底辺で支えてきたお話を楽しく伝えます。
語り手
 柄本明
 松金よね子
テーマ曲
『一人のキミが生まれたとさ』
 作詞・作曲:大倉智之(INSPi)
 編曲:吉田圭介(INSPi)、貞国公洋
 歌:中川翔子
 コーラス:INSPi(Sony Music Records)
監督・演出
【企画】沼田かずみ
【監修】中田実紀雄
【監督】鈴木卓夫
制作
【アニメーション制作】トマソン
ホームページ

http://ani.tv/mukashibanashi

ジャンル :
アニメ/特撮 – 国内アニメ

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz

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