てっぺんから飛び立ったのは、ワシ。
世界最大級の大きさを誇るスズメバチの巣。
中には数千匹のハチの大群。
この危険な相手に挑む命知らずのハンターがいます。
タカの仲間ハチクマです。
スズメバチ軍団と激しい攻防を繰り広げます。
今日はそんなスゴ腕ハンターたちの大特集!これは花?いえいえこちらもスゴ腕のハンターハナカマキリです。
狩りは一撃必殺!美しい体には獲物を誘い確実にしとめるための秘密が隠されているんです。
ギョロリとにらむ大きな目。
ハシビロコウです。
この鳥とにかく動きません。
1日の大半こんなふうにピクリともしないんです。
でも…。
チャンスが来れば一瞬で巨大魚をゲット!個性豊かなスゴ腕ハンターたちが繰り広げる仰天の狩り。
スクープ映像満載でお送りします。
(テーマ音楽)赤道直下に位置するビクトリア湖。
アフリカ最大の湖です。
その北に広がる湿地が今日最初の舞台。
湿地の奥に…いました。
ハシビロコウです。
うわっ!迫力ある目つきですね。
そしてこの巨大なくちばしがトレードマーク。
体も大きく尾羽から頭まで1メートル30センチもあります。
いつも水面を見つめたままじ〜っと湿地にたたずんでいます。
それにしてもピクリとも動きませんね。
まるで置物みたい。
時間を速めてみても…。
一向に動きません。
2時間3時間…。
ついに日が暮れてしまいました。
観察を始めてから5時間ほとんど同じ姿勢で立ちっぱなし。
実はこの動かないことこそハシビロコウの狩りの流儀なんです。
翌朝。
いました!まだ同じ場所でじっとしています。
あっ動いた!何かを捕まえたようです。
魚をくわえています。
地元でマンバと呼ばれる巨大な魚です。
大きいものは1メートル以上になります。
ハシビロコウはこのマンバが大好物なんです。
でもこの広い湿地の真っただ中ただじっと待っているだけで魚が取れるわけではありません。
そこにはハシビロコウのしたたかな作戦が隠されているんです。
あれ?ハシビロコウが歩いています。
何かを探しているようです。
一体何でしょう?あっ泡が出ていますね。
泡を見つけたハシビロコウ。
その近くに行くと動かなくなりました。
どうやらハシビロコウは水中から上がる泡を頼りに獲物を待つ場所を決めているようです。
泡の出た辺りをじっと見つめます。
何か来ました。
すかさず飛びかかります!見事に捕まえました。
今度の獲物もマンバです。
実は水面に上がる泡はマンバのちょっとユニークな体が生み出していたんです。
マンバは肺魚と呼ばれる魚の仲間。
魚なのに肺を持っていてエラだけでなく肺でも呼吸をします。
体内の酸素が少なくなると水面に口を出し数時間に1回の割合で息継ぎをするんです。
この時吸い込んだ空気の一部が時折口から漏れ水面に上がってきます。
それがあの泡の正体。
つまり泡が出ればそこにマンバがいる証拠。
近づいて行ってじ〜っと待ちます。
そしてマンバが息継ぎに上がってきたところをすかさずキャッチ。
マンバの行動を知り尽くしたハシビロコウならではの狩りなんです。
さらに待ちに待った一瞬のチャンスを逃さないための能力も備えています。
まずはこの鋭い目。
水面のわずかな変化も見逃さないよう片ときも目を離しません。
そしてかすかな変化を見つけた瞬間獲物に向かってダイブ!このすばらしい瞬発力。
ちょっとぐらい遠くの獲物だってジャンプして捕らえます。
これならマンバが息継ぎするほんのわずかな間でも十分に捕まえることができます。
さらにマンバを確実に捕らえるのに欠かせないのがこの大きなくちばし。
先がカギ状になっていてほらマンバが暴れてもがっちりつかんで逃しません。
じっと立っているだけに見えたハシビロコウの狩り。
そこには用意周到な作戦が隠されていたんです。
いや〜ハシビロコウ大したもんですな。
マンバをガマンバ強く待ち続け息継ぎの瞬間にマンバと捕まえるとは恐れ入りました!ハハ…あのヒゲじいのダジャレにも毎回恐れ入りますよ。
さ気を取り直して次行きましょう。
気を取り直す?あちゃ〜!あ〜のみ込んじゃった。
あゴックン。
おいしいですか?スゴ腕のハンター特集。
次の舞台も赤道直下インドネシアのジャワ島です。
うっそうと茂る森の端にある日当たりのいい草むら。
ここにハンターがいるんですが分かりますか?ほらここ。
この葉っぱの上。
大きさ5センチほどのカマキリです。
こうして花に囲まれていると花と見分けがつかないですよね。
その名もハナカマキリ。
白や淡いピンクの美しい色。
そして隅々まで花に似せた独特な体の持ち主です。
脚の一部は平らになっていて花びらのように見えます。
とがった2つの目と1本の角。
花の中心にある雄しべと雌しべをまねているとも考えられています。
動きだって花になりきります。
ユラユラと奇妙な歩き方。
風に揺れる花に化けているといいます。
まさに花のように華麗なカマキリ。
でもその素顔は虫たちにとって恐ろしいハンターなんです。
朝。
日がさし込むと草むらでは昆虫たちが花の蜜や花粉を求めて活動を始めます。
葉っぱの上にハナカマキリがいました。
1輪の花になりきって周りの昆虫に自分の姿を見せびらかしています。
そのうち虫たちが集まってきました。
本物の花と勘違いしているんでしょうか?その時です。
捕まえた!目にも留まらぬ速さ。
生きたままムシャムシャと食べてしまいます。
10分後。
さらに15分後。
40分足らずで3匹もしとめてしまいました。
狩りの後はカマをきれいにぬぐってお手入れします。
目のお掃除も欠かせません。
こうして次の獲物に備えるんです。
それにしても見事な狩りです。
まさに百発百中。
こちらミツバチの脚にご注目。
近くに来ると脚を下に伸ばしました。
カマキリに止まろうとしているんです。
ハチはハナカマキリを完全に花だと思い込んでいるようです。
ここまで完璧にハチをだますのには私たちの目には見えない仕掛けがありました。
それを見せてくれるのがこちら。
紫外線を捉えることができる特殊なカメラです。
紫外線は太陽光線の中に含まれていますが私たち人間の目には見えません。
でもハチは紫外線を見ることができ花を探すのに利用していると考えられています。
このカメラで草むらを見ると紫外線を反射している所は赤っぽく映ります。
多くの葉の表面が紫外線を反射していることが分かります。
一方白い花をのぞくと…。
水色です。
これは紫外線を吸収していることを表しています。
ハチの目にはこんなふうに葉の中に咲く花が目立って見えているのかもしれません。
ではハナカマキリはどう見えるでしょう?なんと白い花と同じ水色。
ハナカマキリは紫外線を吸収することまでまねて花になりきっていたんです。
私たちの目には見えない驚きの仕掛け。
さらなる奥の手が隠されていました。
ハナカマキリの獲物のほとんどはミツバチです。
ミツバチの動きを詳しく見るとあることに気付きました。
必ずカマキリの正面から近づいてくるんです。
こちらも正面。
ほらこちらも。
これなら逃すはずもありません。
さらにこのハチの動き。
いったん通り過ぎようとしたのにわざわざ方向転換までして正面に向かっています。
横や後ろからではなくなぜいつも正面から近づいてくるのか。
ミツバチを引き寄せるまた別の仕掛けがあるんでしょうか?その秘密を探るため昆虫のコミュニケーションを研究している秋野順治博士に協力してもらいました。
ハナカマキリの体を詳しく調べたところ意外な事実が分かったんです。
ハナカマキリはミツバチが仲間を集める時に使う化学物質を使って体の正面におびき寄せていたんです。
その仕組みはこうです。
ハナカマキリはまず花の姿でミツバチをおびき寄せます。
そしてミツバチが近づくと口からハチを呼ぶ化学物質を出します。
そのにおいに引き寄せられミツバチは最も捕まりやすい体の正面までやってきてしまうというわけです。
う〜んそんなにおいまで使ってハチを誘惑してたんですか。
はい。
これ「ダーウィンが来た!」の取材がきっかけで明らかになった大発見なんですよ。
お〜驚き驚き。
ハチは「花」かと思って近づけば次は「仲間」のにおいでだまされる。
「ハナ」か?「ナカマ」か?その正体は「ハナカマキリ」なんちゃってね。
続いての舞台は台湾。
のどかな山あいの農村です。
木にぶら下がる巨大な塊。
世界最大級のスズメバチの巣です。
ハチの名はツマアカスズメバチ。
毒針で武装した数千匹の働きバチが巣を守っています。
この危険な巣を襲うつわものがいます。
タカの仲間ハチクマです。
体長は60センチほど。
巣の中の幼虫やさなぎを狙うんです。
タカとスズメバチ。
一体どんな戦いが繰り広げられるんでしょうか。
地元のカメラマンにスズメバチの巣がある場所を案内してもらいました。
民家の上の木に…ありました。
1メートルを優に超える大きな巣です。
巣の近くにテントを張ってハチクマが現れるのを待つことにしました。
果たして来るでしょうか。
空を舞うタカの姿。
来ました。
ハチクマです。
続々と集まってきます。
その数は15羽以上にもなりました。
おなかが白い鳥もいます。
ハチクマは体の色のバリエーションが豊富なんです。
(鳴き声)鳴いています。
互いに鳴き交わしているようです。
誰が攻撃を始めるか相談でもしているんでしょうか。
そのうちの1羽。
巣に飛び乗りました!一斉にハチが攻撃を始めます。
体を振って懸命に払おうとするハチクマ。
たまらず退散です。
スズメバチの猛攻に全く歯が立ちません。
数日後。
ハチクマたちとスズメバチのにらみ合いはまだ続いています。
巣を見下ろす枝に別の1羽がやってきました。
ひときわ目立つ白い体をしています。
巣に飛び乗ります。
今度はどうでしょうか?ダメです。
また返り討ちです。
でも諦めません。
2回目の攻撃。
すぐさまスズメバチ軍団が取り囲みます。
ハチクマ今回はなかなか逃げません。
必死に耐えるハチクマ。
退散です。
ところがこのあと意外な展開が待っていました。
3回目の攻撃。
あれ?ハチの様子が今までと違います。
反撃してきません。
右側は2回目の攻撃の時。
スズメバチに取り囲まれています。
ところが今回はスズメバチはほとんど襲ってきません。
攻撃が弱まった隙に白いハチクマは巣にくちばしで穴を開け始めました。
ついに鉄壁の要塞を崩し始めたんです。
それにしても不思議です。
なぜハチたちの動きが急に変わったんでしょうか?専門家に映像を見てもらいました。
長年スズメバチの研究をしてきた玉川大学の小野教授です。
仮説はこういうことです。
初めのうちハチクマはハチの反撃を受けながらも何度も巣に近づきます。
その時体から発散する何らかの化学物質を巣や周辺に残していきます。
その物質にハチが触れると次第に攻撃性が失われていくというのです。
ついに崩され始めたスズメバチの要塞。
そこへハチクマたちのさらなる攻撃が続きます。
今度は別の1羽が巣に向かいます。
あれ?何でしょう。
巣にぶつかっています。
狙いをつけると…。
ぐんぐんスピードを上げて勢いよくキ〜ック!一気に穴を広げるつもりのようです。
このハチクマ何度もキック攻撃を続けます。
ハチたちが一斉に巣の外に出てきました。
次は巣に飛び乗るとくちばしで壊し始めました。
これだけ手荒なことをされてもスズメバチは反撃しません。
巣には大きな穴が開きました。
最初に攻撃をした白いハチクマも戻ってきました。
力を合わせて巣を攻略した2羽。
何か食べています。
スズメバチの幼虫です。
たんぱく質が豊富なごちそう。
苦労したかいがありましたね。
翌日。
巣には他のハチクマたちも集まってきました。
中にはまだ幼虫がたっぷり残っています。
入れ代わり立ち代わりやってくるハチクマたち。
大きな巣を攻略したらこうして何羽もが食べ物にありつけるんです。
巣に集まったハチクマの中に様子のおかしい1羽を見つけました。
脚をケガしているようです。
翼でバランスを取りながら懸命に幼虫を探しています。
あっ危ない!他のタカならこのようなケガを抱えたまま生きることは難しいでしょう。
食べ物を分かち合うハチクマだからこそなせることかもしれません。
いや〜お見事でした。
ハチの攻撃を鎮める不思議な力。
そして仲間との連携プレー。
ハチクマはまさに究極のスゴ腕ハンターですなぁ。
多彩なテクニックで獲物を誘惑する美しき狩人ハナカマキリ。
ひたすら動かず一瞬のチャンスに全てを懸けるハシビロコウ。
三者三様どのハンターの狩りも驚きにあふれていました。
ぴカリと光るカリの技。
しっカリと見届けましたぞ。
「ダーウィンが来た!」はこれからも驚きのスクープと感動の物語をお届けしていきます!松陰の塾は訪れる者を2015/03/15(日) 19:30〜20:00
NHK総合1・神戸
ダーウィンが来た!「スクープ特集!スゴ腕のハンターたち」[字]
驚きの技を持つハンターたちを大特集。ひたすら動かないハシビロコウの巨大魚狩り。花に化けて虫を誘うカマキリ。凶暴なスズメバチとタカの仲間ハチクマの死闘をスクープ!
詳細情報
番組内容
驚きの狩りの技を持つハンターたちを大特集。アフリカの湿地に暮らす巨大な鳥ハシビロコウは、ひたすら動かない独特な方法で魚を狩る。インドネシア・ジャワ島のジャングル。花に化けて虫を誘うのはハナカマキリだ。だまされた虫が近づくと、一瞬の早業で捕らえてしまう。台湾の里山では、タカの仲間ハチクマとスズメバチの壮絶な死闘をスクープ。ハチクマは、魔法のような“秘策”で凶暴なスズメバチ軍団に対抗する。歌:平原綾香
出演者
【語り】首藤奈知子,近田雄一,龍田直樹
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 自然・動物・環境
趣味/教育 – 旅・釣り・アウトドア
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