美の壺・選「春のフラワーアレンジメント」 2015.03.15


(テーマ音楽)ああきれいだなぁ。
まだ寒いのに花屋さんの店先は春ですねぇ。
いや実はね今日妻の誕生日なんですよ。
しばらく前に今年のプレゼントは何がいい?って聞いたんです。
そんなのあるわけないでしょう?でもね花はみんな美しい。
というわけで適当に見繕って買っていけばいいですかね。
草刈さんそんないい加減なことでいいんですか?せっかくの誕生日またケンカになりますよ。
あぁそれは困るなぁ。
いらっしゃいませ。
なにかお探しですか?妻の誕生日に花を贈りたいんですけどただ花束を送るんじゃ芸がないかなと思いまして。
でしたらフラワーアレンジメントをやってみませんか?お教えしますよ。
フラワーアレンジメント。
僕が?あでやかな花を取り合わせて空間を飾るフラワーアレンジメント。
ホテルやレストランパーティ会場などで思わず見とれたことはありませんか?豪華に飾られた花は訪れた人々のうきうきした気分を盛り上げてくれます。
個人の住まいでもフラワーアレンジメントを楽しむ人が増えてきました。
花だけでなく葉や茎などの姿を最大限に生かして作る植物によるアートです。
フラワーアレンジメントのふるさとはヨーロッパです。
秋に枯れても春に再び咲く花。
人々はそこに特別な力が宿ると考え暮らしを花で彩ってきました。
さらに花への深い思いを育んだのが長い冬です。
暖かい日ざしと共に一斉に咲きだす花々。
それを飾ることで人々は春のよろこびをかみしめたのです。
現在のようなアレンジメントは16世紀から17世紀にかけて完成しました。
日本の生け花と比べてみましょう。
生け花は少ない花で線を描くように構成します。
簡潔さを愛でる日本人の美意識です。
一方フラワーアレンジメントは時には数十種類もの花を寄せ集め塊として表現。
花の咲く季節を最大限に楽しもうという気持ちが溢れ出ています。
白一色のバラやカラーから勢いよく葉と枝が伸びる爽やかな作品。
実はフラワーアレンジメントを始めて2年足らずの人が手がけたものです。
作者はこの方。
かつてアクション映画で大活躍をした元女優の志穂美悦子さんです。
長年ガーデニングに親しんでいましたが今はフラワーアレンジメントに夢中です。
ベルギーで学んだフラワーデザイナーの元へ通い腕を磨きました。
日常が本当に…かなり時間が動いてるのでゆっくりと自分に向き合えるっていうんですかそういう時間ですよね時が少し止まるっていうか。
花の持つ生命力みたいなのに向き合える時間というか。
生きている花の命に触れる喜び。
それを表現できるのがフラワーアレンジメントだといいます。
花々が一斉に咲きそろう春はフラワーアレンジメントを楽しむには最高の季節。
作る人のセンスが光るちょっと贅沢な暮らしのアートフラワーアレンジメントの魅力をお伝えします。
まずは基本を押さえましょう。
教えてくれるのはフラワーデザイン界の貴公子と呼ばれる小松弘典さん。
今30〜40代の女性たちを中心に大きな人気を得ています。
一つ一つの花の姿を生かして生ける繊細なアレンジメントが特徴です。
多くの花で作るフラワーアレンジメント。
大切なのは主役となる色を決めることです。
例えば春なら黄色をテーマカラーにするのが小松さんのおすすめ。
圧倒的に黄色の色が春は多いので今回春にあわせて黄色の色合いを。
実は春の野原に咲く花の多くが黄色。
活動を始めたばかりの虫たちの注意をひく色だといわれます。
ヨーロッパでは黄色は太陽を表す色とされてきました。
命が生き生きと輝く季節春を象徴する色なのです。
今日一つ目の「壺」。
色を決めたら次は形。
いくつかの伝統的な形があります。
全体が丸いシルエットを描くラウンド。
三角形のトライアンギュラー。
楕円形のオーバルなど。
中でもどの方向から見ても花がきれいに見えるように生ける「ラウンド」は最も基本的な形です。
黄色の花を使ったラウンドのアレンジメントを小松さんに作って頂きましょう。
花を選ぶポイントそれは…例えば花びらが透けるように薄い…ふわふわした花を鈴なりにつけるミモザ。
これだけ質感が違えば隣り合わせに並べても豊かな表情を作りだすことができます。
このようにミモザみたいにカチャカチャしている質感とスイートピーの絹のような質感の差を…質感の異なる花を並べる。
どんな色がテーマカラーでも使えるテクニックです。
緑の葉を加えることもお忘れなく。
野に咲く花のような印象になります。
スイートピーとミモザにバラやフリージアマーガレット。
5種類の黄色い花を使ったアレンジメントです。
さまざまな黄色がにぎやかに寄り集まるいかにも春らしい表現です。
続いてヨーロッパで生まれたアートならではの色づかいの技をご覧ください。
小松さんが用意したのは紫のダリアやオレンジ色のガーベラなど。
あえて別の色の花を混ぜて黄色を引き立てます。
そこには古くからヨーロッパで研究されてきた色彩の理論が取り入れられています。
黄色の補色の紫の色を少し多めに。
紫とかそういう色合いもふんだんに出てくるので。
それも春の今の時期ならではというか。
補色とは色彩学の用語。
色彩学ではあらゆる色に正反対の色があると考えられています。
それが補色です。
黄色の場合は紫が補色。
補色は互いを引き立て合います。
この17世紀の絵にも補色の効果を生かしたアレンジメントが描かれています。
画家が主役に選んだのは青いアイリス。
その隣に補色であるオレンジ色の花が置かれていることでいっそう目を引きます。
では実際の花でも補色の効果を試してみましょう。
黄色い花に同系色のオレンジ色を合わせるとあまり引き立ちません。
補色の紫色を合わせるとコントラストが強くなり色が際立って見えます。
完成した小松さんの作品。
黄色を中心に多くの色を使いこなしヨーロッパの古典的なアレンジメントに通じる格調高い雰囲気を醸し出しています。
補色が加わることでテーマカラーの黄色が引き立ち春を喜ぶ気持ちが伝わります。
花たちが集まって日だまりでおしゃべりをしているような春のフラワーアレンジメントです。
あそうか黄色は春の色なのか。
でもねうちの奥さんが好きなのは断然ピンク!というわけでピンクのフラワーアレンジメントを作りますよ。
まずは水切りをします。
根元から1〜2センチのところを斜めに切ってください。
切り口を新しくすると水を吸い上げる力が強くなってお花が長持ちするんですよ。
次はお花を入れる器に水を含ませたフラワーアレンジメント用の…これを使うとどんな角度からでもお花を挿すことができるんです。
あとはアレンジの中心になるお花から順に挿していけばいいんですよ。
じゃあまずはこのダリアから。
こんな感じかな?あれ!意外と簡単。
フラワーアレンジメントでお客様をおもてなししてみませんか?数々の賞に輝く…午後のお茶に招いたお客さまのために玄関に飾るアレンジメントを作っています。
メインは数種類のバラ。
玄関は最初に足を踏み入れる場所。
この特別な場所に置くアレンジメントにはある要素が欠かせません。
でもごめんなさいそれはテレビではお伝えできないものなんです。
玄関に花を飾るということはお待ち受けだとかお見送りという意味があると思うんだけどただ装飾として飾るだけじゃ全く意味がないような気がするのね。
プラスアルファの付加価値として…花の姿だけではなく香りも楽しんでもらおうというおもてなし。
今日二つ目の「壺」は…
(鳥のさえずり)かつて日本では香りの強い花は好まれませんでしたがヨーロッパでは古くから花の香りを重んじてきました。
病気の治療にも花の香りが使われます。
特にバラの香りは頭痛などに効果があるとされています。
その効果は科学的にも研究されてきました。
幸福な気分の時脳の中では脳内モルヒネと呼ばれる物質が分泌されています。
バラの香りの成分は実はこの物質と化学構造が似ています。
そのためバラの香りは嗅いだ人に幸福感をもたらすと考えられているのです。
さあお客さんが見えました。
香りのお出迎えに反応は?これバラですか。
これねバラなんだよ。
今日はね香り豊かなバラを集めてみたの。
お菓子のお皿。
これも川崎さんのフラワーアレンジメントです。
模様のように見えるのはなんと本物のサクラの花びら。
桜餅をのせて見た目も味も香りも桜づくしです。
洗面所にもふさわしい香りを置きましょう。
洗面所は肩の力を抜いてほっとひと息つく場所。
ここで使うのはスイセンやヒヤシンスなど香りにリラックス効果があるといわれる花です。
香りを生かすには多くの種類は使わないことが大切だと川崎さんは言います。
あんまりたくさん香る花を使いすぎちゃうと主張が弱くなるってことがあるのでね1種類ないし2種類ぐらいが程よいとこだと思います。
帰り際の玄関川崎さんはすてきなサプライズを用意しました。
ちょっと引っ張ってください。
え〜わあ…。
わあすご〜い。
はい春の香りのおすそ分けです。
香りのお土産。
楽しかった1日の余韻まで持ち帰ってもらうちょっと差のつくおもてなしです。
そうです。
そこに挿しましょう。
なかなかいいですね。
ハハ〜!完成!どうです?フラワーアレンジメント簡単。
でも草刈さん。
それほとんどお店の人に手伝ってもらったんでしょう?まあそう言われれば僕が作ったとは言えませんよね。
もう少し小さいものだったら1人でできるかもしれない。
もうちょっと小さい花瓶ありませんかね。
こんなのはいかがですか?お花をかわいく飾れますよ。
でもこれマグカップだよね。
これに生けちゃうの?ヨーロッパの伝統をくむフラワーアレンジメントを学んだ志穂美悦子さん。
日々の暮らしの中で楽しむためのアレンジメントは豪華なものよりさりげないスタイルがいいと言います。
そこで活躍するのが日用雑貨。
ごく普通のワイングラスもアレンジメントの器になります。
グラスから花がこぼれ落ちるような生命感あふれるアレンジメントが出来上がりました。
チューリップやヒヤシンスなど春の花を生けているのは…赤いカラーやバラを生けているのはなんと古い帽子!花と意外なものが響き合い新鮮な魅力を生み出しています。
ヨーロッパの上流階級で発達したフラワーアレンジメント。
陶磁器やガラスなど贅を凝らした花瓶を用いるのが主流でした。
その一方で庶民たちは日用雑貨に花を飾って楽しんでいました。
19世紀初頭のフランスの絵です。
花を挿しているのはガラスのコップ。
ささやかな喜びを感じさせます。
気取りのない雑貨を使うアレンジメントはカジュアルに花を楽しみたい今の感覚になじみます。
このフラワーショップでも花と雑貨のさまざまな組み合わせを提案しています。
ちょっとひと工夫してあげれば…この器実は…ゼリーの型とかはお菓子を作る型なのでお持ちだと思います。
通常は収納してるんですけど意外とシルエットがかわいいんですね。
ラナンキュラスやチューリップはコーヒーポットに。
こちらは…花と一緒に野菜も生けました。
身近な器が花と出会って楽しいアートになります。
今日最後の壺は…雑貨を使ったフラワーアレンジメント。
その達人のお宅です。
木村博さんは趣味で集めた古い日用雑貨に花を生けて楽しんでいます。
19世紀フランスでリンゴ酒を入れた器。
花を生かすには使い古された渋い色合いがぴったりです。
一つ一つ味わいがあったりとかするんですけども枯れていたりとかして色があせてるものが多いんですね。
そういったものに…素朴な雑貨には豪華な花や複雑な生け方は似合いません。
野の花を無造作に挿すようなさりげないアレンジメントにします。
黒い器なんでそれが土を表したりとか花の色合いだったり匂いだったりそういったものが自然に映えるんじゃないかなと思います。
土の味わいのある器にざっくりと生けた野趣あふれるアレンジメントです。
長い時間を経てきた道具。
そして今咲いたばかりの花。
命の輝きが際立ちます。
やっぱり日々花を部屋の中に飾るということは自分のね…決してゴージャスだったりとか…チューリップを生けたのは古い鳥かご。
かつて小鳥がさえずっていた場所で花が不思議な存在感を感じさせています。
いつも見慣れてる景色部屋の中の様子だったりとかそういったものが…暮らしに寄り添う伴侶のような花と雑貨のアレンジメントです。
はいできました。
今度こそ正真正銘世界でたったひとつの草刈正雄オリジナル。
あそうか「世界でたった一つしかない」っていうのはこのことだったんだ。
それでは早速これを妻に届けましょう。
もうこんな時間だ。
急いで帰らないと。
ありがとうございました。
それからあれ後で届けてもらえますか?お世話さま。
ありがとうございました。
日本有数の観光地に謎の物体が出没しています。
2015/03/15(日) 23:00〜23:30
NHKEテレ1大阪
美の壺・選「春のフラワーアレンジメント」[字]

身近なテーマを中心に、美術鑑賞を3つのツボでわかりやすく指南する新感覚美術番組。今回は「春のフラワーアレンジメント」。案内役:草刈正雄

詳細情報
番組内容
ホテルやレストランで空間を華やかに演出するフラワーアレンジメント。起源はヨーロッパ、厳しい冬の後に訪れた春、さまざまな花を飾ってその歓(よろこ)びを表したのが始まりだ。日本に本格的に普及したのは戦後。ストイックな「生け花」とは異なる、自由でダイナミックな造形が人気だ。そんなフラワーアレンジメントの基本テクニックを踏まえつつ、暮らしを飾る「花のアート」の大胆で繊細な魅力にせまる。
出演者
【出演】草刈正雄,【語り】礒野佑子

ジャンル :
趣味/教育 – 音楽・美術・工芸

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音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz

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