インドネシアカリマンタン島の熱帯雨林に野生動物のための特別な「学校」があります。
生徒は親を亡くしたオランウータンの子供たち。
野生で生きていくために必要な事を学んでいます。
教えるのは保護センターのスタッフ。
やんちゃな生徒たちに真剣に向き合っています。
痛い何するの?毎日が手探りです。
教科書なんてありませんから。
夕方ふん尿や汗まみれになっていればいい一日だったという事です。
この学校の目標はただ一つ。
オランウータンに木登りや食料の見つけ方など森で生きていくために必要な事を身につけさせ野生に戻す事です。
また1頭森に帰しました。
野生動物としての自由を与える事ができました。
インドネシア西カリマンタン州にあるオランウータンの保護センターの一日は夜明けと共に始まります。
センターの責任者はスペイン出身の獣医師カルメレ・サンチェス。
10年にわたりオランウータンの保護に携わっています。
これからオランウータンを順に連れ出します。
中にはかなりやんちゃな子もいるので気をつけて下さいね。
おはようメルキー。
元気?日が昇ったらできるだけ早く森に連れていくようにしています。
オランウータンに人間の病気がうつらないようスタッフはマスクを着用するなど細心の注意を払っています。
センターには60頭近くのオランウータンが保護されています。
中でも赤ちゃんの世話は大変です。
何頭かずつ手押し車に乗せて森に連れていきます。
人間の子供と同じで皆じっとしていません。
今おりから出しているのが一番年長の子供たちです。
やんちゃで力も強いので訓練をさせるのは大変です。
オランウータンの子供は本来母親から森で生きるための方法を教わります。
「森の学校」に入る前の「赤ちゃんクラス」の生徒たちがレッスンを受けるため森に向かいます。
クラスを率いるのは獣医師のクリスティーンです。
ここにいる赤ちゃんたちは森で生きるために必要なすべをまだ何も持っていません。
これから一つ一つ学んでいくんです。
クリスティーンはアメリカ出身です。
朝食の時間です。
食べ物を木に縛りつけ子供たちを木に登らせて自分で餌を探させます。
オランウータンにとって最も危険な場所は地面です。
ほかの動物に狙われやすいからです。
授業ではまず地面を離れ木に登る事を教えます。
木に地面からの高さを記してどのくらいの高さまで登れるかをチェックします。
地面にばかりいるうちは森には帰せません。
「赤ちゃんクラス」で一番の優等生3歳のジョイスです。
ジョイスは木のてっぺんまで登れます。
そろそろ木の上に寝床を作るかもしれません。
高く登りたがるのはいい兆候です。
まだまだたくさん学ばなければならない生徒もいます。
遊ぶ姿はのんきそうにも見えますがここにいる赤ちゃんは皆親を亡くすという悲しい過去を背負っています。
オランウータンは絶滅の危機にひんしています。
住みかである森が伐採されているためです。
住みかを追われたオランウータンの多くは殺され子供は違法なペット業者に売られます。
学校で教えるどころか命を救えない事もあります。
まずは命を救わなくては。
野生動物の保護には麻酔が欠かせません。
センターでは大人のオランウータンを麻酔で眠らせてから保護しています。
オランウータンをとりまく悲劇は森林破壊だけではありません。
鎖につながれ狭いおりに閉じ込められて自由に生きるチャンスを奪われたオランウータンがたくさんいます。
捕らえられた時にけがを負う事もあります。
リッキーナの頭には大きな傷痕が残っています。
母親は殺されたようです。
リッキーナは保護センターに来て以来クラスメートのロッキーを頼りにしています。
2頭はいつも一緒です。
野生ではオランウータンの子供は長い時は8年間母親と過ごします。
どの類人猿よりも長い年月です。
親を亡くした子供同士はしばしば強い絆で結ばれます。
助け合いながら自立していく姿を目にできるのはうれしいものです。
オランウータンの赤ちゃんを木の上まで登らせるには工夫が必要です。
イギリス出身のリサ・バーテンショウは赤ちゃんオランウータンを木に登らせる事が仕事です。
みんな私がごちそうを持ってるのを知ってるから私が来ると「今日は何だ?」って顔で見るんです。
この日のごちそうはおかゆとハチミツ。
木に空けた穴に詰めます。
ハチミツ入りのおかゆはオランウータンの大好物なんです。
蜂が寄ってこないようにしないとね。
赤ちゃんは最初のうちは高い所を怖がり木登りを嫌がります。
木に登りたがるようにするのは一苦労です。
いい子ね。
私も木に登らなくてはなりません。
さあできた。
ここにいるのはジョイスとグヌンです。
ジョイスは食べる事より枝を取る事に夢中みたいね。
ごちそうに引かれて高い所でも平気です。
木の幹にはオランウータンの大好きなシロアリがいる可能性があります。
木登りは身を守るためだけでなく食料を得るためにも重要なのです。
おいでリッキーナ。
リサがリッキーナとロッキーに手を貸します。
リッキーナはようやく木登りを覚え始めたところでロッキーの方はまだ尻込みしています。
まだまだ赤ちゃんね。
優等生のジョイスは「赤ちゃんクラス」で習う木登りがほとんどできるようになりました。
しかし…。
ジョイスはグヌンというオスと仲良しでいつも一緒にいます。
冒険したがるジョイスをグヌンが引き止めるのをよく見かけます。
グヌンはまだ怖いんです。
でもジョイスは怖いもの知らずですからね。
ジョイスが大好きなグヌン。
ジョイスが行くところにはいつもグヌンがいます。
日の出と共に森にやってきた赤ちゃんたちは午後にはくたくたになります。
そろそろ下校の時刻です。
しかし朝8頭いた赤ちゃんが6頭しかいません。
ジョイスが仲良しのグヌンと共にいなくなってしまったのです。
グヌン。
ジョイス。
いつもより遠くへ冒険しにいったみたい。
ジョイスとグヌンは大の仲良しで大概一緒に行動しているんです。
グヌンどこ?冒険心に目覚めてきた証拠ですが森で夜を過ごすのはまだ危険すぎます。
遠くへ行きすぎてなければいいんですが…。
2頭はまだ森で夜を明かすには幼すぎます。
グヌン。
ジョイス。
暗くなる前に見つけ出さなくてはなりません。
グヌン。
(オランウータンの鳴き声)グヌンが騒いでいる声です。
ジョイスも一緒ね。
クリスティーンは鳴き声を頼りに2頭のもとに向かいます。
いた!木にぶら下がっています。
下りる気がないみたい。
こっちの様子をうかがっています。
まだ遊びたいのね。
本来オランウータンの赤ちゃんは母親に守られながら木の上の寝床で夜を過ごします。
いい子だからおいで。
2頭には守ってくれる母親がいません。
グヌン。
2頭をおびき寄せるためクリスティーンは奥の手を使います。
ジュースと果物を見せればそばに来ると思います。
やっぱりね。
のどが渇いているから。
ジョイスが餌に食いつきグヌンを連れて下ります。
グヌンはジョイスにしがみついています。
効果てきめんね。
本日の冒険家たちです。
自主性が芽生えてきた事は成長している証しです。
年齢が上がり体が大きくなると「赤ちゃんクラス」を卒業し「森の学校」に入ります。
これは第2段階のクラスです。
子供たちは自由を知り森の生活を進んで楽しむようになります。
学校には50頭近いオランウータンの子供がいます。
力も強くなり木の上で過ごすのもお手のものです。
かなりわんぱくになり世話をするのは大変です。
痛い何するの?学校では木の上で食料を取ったり夜を過ごす寝床を作ったりという基本的な事を学びます。
本来なら母親から学ぶ事ですが誰も教えてくれません。
人間が教える事もできません。
木の上に寝床を作る方法もここでは互いに学び合うしかありません。
上手に寝床を作りそのまま森で夜を明かしたい様子ならもう無理やりセンターに連れ戻したりはしません。
それは順調に成長している証拠ですから喜んで見守ってやります。
寝床をなんとか整えたとしても必ずしもそこで眠れるとは限りません。
ペニーは快適な寝床でくつろいでいましたが体の大きなプリマが邪魔しにきました。
野生復帰のための訓練は必ずしも予定どおりにはいきません。
サンティは最近保護されここに来ました。
訓練を始めたのがほかの子より遅いんです。
サンティは5か月前にセンターに連れてこられました。
それまではペットとしておりの中に閉じ込められ餌にケーキやパンなど人間の食べ物を与えられていました。
飼い主がこの子を育てるのを放棄したんです。
「お金がかかりすぎる」というのがその理由でした。
サンティは病気にかかっていないか調べるためセンターで2か月間隔離されました。
その後3か月間「赤ちゃんクラス」で過ごし「森の学校」に入りました。
まだまだたくさんの事を学ばなくてはなりません。
森で過ごした事がほとんどないオランウータンにとって自然界で生きるすべを学ぶのは非常に困難です。
人間に依存しすぎているからです。
サンティはおそらく3年以上ここでいろんな事を学ぶ必要があるでしょう。
サンティはオスのクラスメートより覚えが早い可能性があります。
メスはオスよりも早く木登りを覚える傾向があります。
メスは木の上で静かに過ごす事を好むからです。
それに比べオスは活発でいたずら好き。
仲間にかみついたりします。
地面で過ごす時間も多いですね。
痛い痛い。
オスのオランウータンは成長すると力が強くなり危険です。
なるべく早く野生で生きるすべを教える必要があります。
メルキーはここにいる若いオランウータンの中で最も力のあるオスです。
怒ると攻撃的になるので慎重に対応しないといけません。
メルキーは4年前に西カリマンタン州の州都ポンティアナックでペットとして飼われていたところを保護されました。
覚えの悪いメルキーは大きな体にものをいわせて勝手気ままに振る舞っています。
野生に帰るためには自力で生きていくすべを学ばなくてはなりません。
メルキーは既に7歳。
残された時間は多くありません。
メルキーは本来ならここを卒業する年齢に達しています。
学習のペースを上げなくては。
もっと木の上で過ごし自分で食料を探すようでないと。
野生で生きるすべを身につけなければ森に帰す事はできません。
一生をおりの中で過ごす事になります。
夕方寝床を作らなかったオランウータンは夜を過ごすためにセンターへ戻ります。
おとなしい時もあれば大騒ぎの時もあります。
みんな好き勝手に動き回るので何事もなく予定どおりに帰れたためしがありません。
あ〜。
これも学習ね。
森の学校の生徒たちは手押し車が満員の時は歩いて帰ります。
おんぶをねだる子もいます。
仲間が安全なおりの中で眠りにつこうとする中木の上で夜を過ごそうとしているメスがいます。
ゲンバーは今夜は外で寝るみたい。
おりのそばの木に寝床を作りました。
まだ3歳くらいの若いメスです。
こんなふうに早くからおりの外に出たがって夜を過ごそうとしているのはとてもいい傾向です。
センターには保護されたオランウータンが毎日のようにやってきます。
保護された直後は健康だと証明されるまで屋内にとどめます。
2頭の赤ちゃんを迎え入れました。
ほかの子に危険が及ぶといけないのでみんなに会わせる前に病気にかかっていないかどうか検査します。
オスのアンジャスです。
おいでアンジャス。
アンジャスはペットとして飼われていたところを保護されました。
アンジャスはペットショップで売られおよそ3年間都会の夫婦のもとで溺愛されて育ちました。
人間の赤ん坊のように育てられ野生とはかけ離れた生活を送ってきました。
私たちにとって我が子も同然です。
飼い主による世話はアンジャスのためにはなりませんでした。
風呂に入り服を着せられ米や甘いお茶などオランウータンにとっては不健康な食べ物を与えられていたのです。
ここでの手助けは溺愛する事ではありません。
自力で生きられるようにする事です。
大丈夫よ。
人間との暮らしのせいで体に異常が出ていないか麻酔をかけ全身をくまなく診察します。
診察の結果足にけがをしている事が分かりました。
締めつけによる血行不良ですね。
ひもか何かをきつく巻きつけられていたんでしょう。
指をまっすぐ伸ばせません。
ほら…。
木の上での生活に影響するかもしれません。
レントゲンを撮って骨に異常がないか調べないと。
撮ります。
人間の食べ物による虫歯も見つかりました。
砂糖入りのお茶を飲んでいたせいね。
(アユ)甘いお茶にスナック菓子チョコレートも食べていたらしいわ。
オランウータンは人間と遺伝子のおよそ97%が同じため人間の病気にもかかります。
アンジャスが人間の病気に感染していたら保護センター全体に広がってしまいます。
一番心配なのは結核に感染している事です。
まぶたの部分のデリケートな皮膚に抗原を注射し結核に感染していないかを調べます。
まぶたは最も敏感な場所なので反応が分かりやすいんです。
検査のために隔離されているもう1頭の赤ちゃんボニータです。
既に検査を受け結果を待っています。
クリスティーンがボニータをおりの外に出します。
検査を受けている間は木に触れる機会もありません。
時々こうやって外に連れ出して木登りの練習をさせてやります。
ペットとして飼われていた子は自然の世界を知らず多くは木に登った事もありません。
保護センターに来る前ボニータは鎖につながれて暮らしていました。
木の上での自由な生活へ向けて第一歩を踏み出します。
おかゆを使います。
上の枝に塗り付けてボニータがおかゆ欲しさに木に登るように仕向けるんです。
さあ長い訓練の始まりね。
おかゆにつられてボニータが木に登ります。
ボニータは人なつこい性格のようです。
人間にくっつくと安心するみたい。
そんなに社交的ではないけれどきっとうまくやっていけるでしょう。
本能に導かれるように木の上で遊び始めました。
意外におてんばね。
あ〜細い枝はダメよ。
分かったかな?健康診断の結果が問題なければボニータは「赤ちゃんクラス」に入り森で生きるすべを学ぶ事になります。
保護センターでは「森の学校」で学ぶには成長しすぎているもののまだ自然の中で単独で生きていけないオランウータンをどうするかが問題になっています。
おりの中で一生を終わらせないためにカルメレたちは大胆な計画を実行に移しました。
新たな取り組みです。
これまで森に帰せなかった年長の子たちにも可能性が開かれます。
カルメレたちは掘削機で水路を掘りたった数か月で6ヘクタールもの広さの森を切り出しました。
オランウータンの住む森ごと囲い込むんです。
この森でなら自立して安全に野生で生きていくために必要な事を学ぶ事ができます。
いわば「総仕上げの学校」です。
こうした保護区を作る事は私たちの夢でした。
保護区の設置を手伝うのはボランティアの人々です。
オランウータンはめったに泳ぎませんが念のため周りに電気柵を設け保護区から出ないようにします。
保護区は学校での学習が難しいオランウータンにとって希望の場所となるでしょう。
おりに閉じ込められる生活がどんなものかカルメレにはよく分かっています。
ハ〜イ元気?この子はモンテ。
ここで一番大きなオスのオランウータンです。
頬にタコがあるでしょう?頬ダコはオスの特徴の一つでオスとしての優位を示します。
立派な頬ダコのモンテはここの王様であり体が一番大きく力も強くとてもハンサムなんです。
私がメスのオランウータンだったら恋をするかも。
モンテは4年前に保護されました。
赤ん坊の時からおりの中で飼われおりが小さすぎたために立ち上がる事もできませんでした。
その結果脚に後遺症が残りました。
モンテは15年近くも小さなおりの中に閉じ込められてきました。
モンテがここへ運ばれてきた時脚が震えていたのを今でも忘れられません。
モンテは森で生きるすべを学ぶには年を取りすぎています。
世話をする時の安全を考えると大きなおりに入れておくしかありません。
大人のオランウータンは人間の7倍も力が強いからです。
このくらい大きくなるとオランウータンは片手で私の首をへし折る事ができます。
それほど力が強いんです。
そのため小さいオランウータンのように手をつないで森へ連れていく事はできません。
モンテを自然の森に帰す事はできません。
これまで森で過ごした経験が全くないからです。
必要な食料を見つけられず生き延びられないと思います。
このおりが彼の生きる空間。
広々とした環境を与える事はできませんができる限りきちんと世話をしてあげたいです。
モンテには救いの手が差し伸べられるのが遅すぎました。
ほかのオランウータンにはまだ希望があります。
ついに新しい保護区が完成しました。
水路と電気柵で安全対策も取られています。
いよいよ保護区にオランウータンを放します。
まずはおりで暮らしているオスを1頭連れていきます。
保護区で最初に暮らすのはウチルです。
(カルメレ)ウチルはつらい過去を持っています。
飼い主に虐待されていたんです。
ウチルは飼い主からタバコやお酒を飲まされていました。
虐待を受けたせいかウチルには問題行動がありおりから出してやれませんでした。
保護区でのウチルの学習が成功すればもっと体の大きいオランウータンにも自由を味わうチャンスを与える事ができます。
私たちの夢はモンテを保護区に連れていく事です。
高齢で体も大きく簡単にはいかないでしょう。
でも可能性はあります。
私たちは決して諦めてはいません。
待ちに待った時がやってきました。
スタッフとボランティアたちはおりを離れ保護区へと向かうウチルを見送ります。
ついにやり遂げました。
ボランティアとして参加したかいがありました。
この瞬間に立ち会えて感激です。
青あざをいくつも作り体が痛くなるほど働きましたがこういうすばらしい瞬間に立ち会うと今までの苦労が全て報われますね。
探検に行くわよ。
森へようこそ。
気に入ったかな?ウチルはここで初めての自由を味わいます。
おりの中の生活よりずっといいはずです。
ここができた事でオランウータンを森に放す準備を進めやすくなります。
将来は全てのオランウータンがここから自然の森に帰り保護センターにおりが必要なくなるのが理想です。
カルメレたちの目標はセンターにいる全てのオランウータンを野生に帰す事です。
あるオランウータンを野生に帰す日がやってきました。
大人のオスカリーバです。
カリーバが保護されたのは2か月前。
隔離され健康診断を受けている間スタッフはカリーバを放すための安全な場所を探してきました。
カリーバが住んでいた森は農地に近く多くの木が伐採されていました。
生息地と食料を失ったオランウータンはしばしば人間と衝突するようになります。
保護センターのスタッフはカリーバに麻酔を打ち保護しました。
カリーバはもともと森で暮らしていたため野生で生きるすべは知っています。
必要なのは新たな住みかとなる森です。
カルメレは新しい住みかを見つけました。
しかし到着まで12時間もかかる上大人のオスの移送は簡単ではありません。
カリーバは非常に力の強い大人のオスです。
あれだけの巨体で性格も攻撃的なので近寄るには危険が伴います。
十分に注意しなくてはなりません。
カリーバとスタッフの安全のため移送は夜の涼しい時間に行われます。
保護されたばかりの赤ちゃんボニータの検査結果が判明しました。
ボニータは7週間隔離されていましたが検査の結果病気は見つかりませんでした。
ボニータはこれから「赤ちゃんクラス」で野生に帰るための第一歩を踏み出します。
こんにちは。
新しいお友達よ。
ボニータをほかのオランウータンに引き合わせます。
今はまだ世話係にべったりですが仲間に興味を示しているのはいい兆候です。
すぐに周りの子と仲良くなって木に登るようになるでしょう。
ボニータがゆっくりと仲間に加わります。
ボニータは森になじむのが早いですね。
ほんの数分で木に登り始めたのを見る限り将来自然の森で生きていける可能性は高そうです。
ボニータにとって野生への長い道のりが始まりました。
いつか森に帰る事ができるように木の上で遊び多くの事を学びます。
いよいよカリーバを森に帰す時がやってきました。
危険を最小限にするため移送は夜カリーバが眠っている時間に行われます。
万が一の事態に備え獣医師と飼育員の全員が集められます。
厳重に注意して。
野生のオランウータンで体も大きいので興奮させたら運搬用のおりを壊してしまうかもしれないので。
まず麻酔を打ちます。
おりから出し健康診断を行うためです。
吹き矢を使って麻酔を打ち薬が効いたらすぐに連れてきて運搬用のおりに入れます。
麻酔が切れる前に運搬用のおりに入れなくてはなりません。
まずは正しい量の麻酔を処方する事が大切です。
獣医師のクリスティーンには難しい作業です。
真っ暗闇の中で吹き矢を使いカリーバに麻酔を打たなくてはなりません。
カリーバが起きたわ。
たぶん命中したと思います。
すぐに眠りに落ちてくれるといいんですが。
麻酔が効きました。
急いで健康診断を行います。
呼吸も心拍も安定しています。
大丈夫そうです。
麻酔を解くための薬を投与します。
ここからは起きていてもらいます。
輸送中麻酔のせいで体調が急変しても対処できませんから。
割りとすぐに目覚めたので問題ないと思います。
一晩中車を走らせカリーバの新しい住みかへと向かいます。
カリーバは私たちの施設から7キロほど離れた伐採された森で保護されました。
その辺りにはもう住める場所がないので遠くまで連れていかなくてはなりません。
カルメレたちはカリーバが暴れ出す前に森に放したいと考えています。
長いドライブを終えようやく目的地の近くにたどり着きました。
広大な保護林を有する国立公園です。
元気そうです。
ちょっと興奮していますね。
鳴き声を上げていますが大丈夫でしょう。
おりを壊そうとする様子もありませんし。
ほっとしました。
地元のポーターが5キロほど離れた場所までカリーバを運びます。
カリーバは25歳くらいで体重は60キロ近くあります。
おりの重さと合わせるとおよそ150キロにもなります。
(カルメレ)そろそろ出発できそう?昨夜12時に出発して今は朝の9時です。
カリーバは既に9時間も運搬用のおりに入っています。
できるだけ早く目的地まで運ぶ必要があります。
「この森にどんな果物がなりどんな動物が生息しているか」などカルメレたちは前もって入念に調査しました。
保護センターを出発してから12時間後ついに目的地にたどり着きました。
カリーバが生きていくのに十分な食べ物がある場所です。
向こうの木のそばにゆっくり下して下さい。
いい場所だと思います。
ドリアンなどの果物の木がいっぱい生えています。
オランウータンはドリアンが大好物なんです。
ドキドキしますね。
心配はしていないけど興奮しています。
準備はいい?OK開けて。
あ〜。
見て〜木に登ってる。
長い事待ち焦がれた瞬間です。
私たちの施設を巣立ったオランウータンが無事森に帰るのを見る事が私たちの一番の励みです。
また1頭森に帰す事ができました。
本当の自由を得たんです。
さよならカリーバ。
保護センターでは今も多くのオランウータンが「赤ちゃんクラス」と「森の学校」で野生で生きるための訓練を受けています。
検査を受けていたアンジャスもボニータに続いて「赤ちゃんクラス」に仲間入りしました。
ボニータがあんな上に。
ボニータは飲み込みが早くたった3日で木の上まで登れるようになりました。
賢くて勇敢な子です。
まだ小さいのにどんどん上達してる。
全てのオランウータンが野生に帰る日までカルメレたちの奮闘は続きます。
(カルメレ)ほら行くわよ。
大きな赤ちゃんね。
2015/03/16(月) 00:00〜00:45
NHKEテレ1大阪
地球ドラマチック「オランウータンを守れ!〜“森の学校” 野生に帰る日まで」[二][字][再]
毎朝“森の学校”に向かうオランウータンの赤ちゃん。保護施設のスタッフに木登りや食料を得る方法を教わる。母親を失ったオランウータンが野生に戻る日までを追う。
詳細情報
番組内容
手押し車に乗せられて移動する数多くのオランウータンの赤ちゃん。カリマンタン島にある保護施設の毎朝の光景だ。保護された赤ちゃんが野生で生きる術を学ぶ。まずは木の上で過ごすことから教わるが、人に抱っこしてもらいたがる。親を殺されたり、ペットとして飼われていた赤ちゃんも多く、精神的なケアも必要だ。村で殺されそうになっていたところを保護されたオランウータンを森にかえすことになる…。(2014年アメリカ)
出演者
【語り】渡辺徹
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 自然・動物・環境
ドキュメンタリー/教養 – 宇宙・科学・医学
ドキュメンタリー/教養 – カルチャー・伝統文化
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
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