きょうの健康 増える血液がん「慢性骨髄性白血病」 2015.03.16


(テーマ音楽)これまで元気に過ごしてきましたが会社の健康診断で白血球増加を指摘され血液内科を受診したところ診断はなんと慢性骨髄性白血病。
これは大変な病気になってしまったとショックを受けるAさん。
そんなAさんに医師はこんな言葉をかけました。
「大丈夫。
慢性骨髄性白血病は今薬で治せる病気です。
仕事も続けられます」。
知っておきたい健康情報を分かりやすくお伝えします。
「きょうの健康」です。
今週はこちら。
血液がん高齢化に伴って増えているんですが今週はこちら。
ご覧のように代表的な血液がんについて取り上げていきます。
まず今日は…白血病というと治療が難しいなというイメージがありますが先ほどありましたように薬で治療がうまくいく。
仕事も続けられるってそういう事があるんですね。
白血病にもいろいろなタイプがあるんですが今日の慢性骨髄性白血病は画期的な薬が出てきた事で患者の生活も大きく変わっているんです。
それではこの病気について分かりやすく教えて頂きましょう。
専門家です。
ご紹介致します。
血液内科で血液がん特に白血病の診断治療がご専門です。
どうぞよろしくお願い致します。
この慢性骨髄性白血病の治療はどのように進歩してきたんでしょうか?慢性骨髄性白血病の治療は2001年に分子標的薬が出現しまして大きく変わりました。
これまでの治療では副作用も強く開始して数年で急に病気が悪くなりなかなか治療が思うようにいかなくなりました。
ところが現在ではこの飲み薬をのみ続ける事によって糖尿病や高血圧と同じように病気をコントロールできるようになりました。
それではお話を進めていくにあたって白血病とはどういう病気なのか基本情報を押さえておきましょう。
久田さん。
はい。
ではこちらで見ていきましょう。
私たちの血管の中には白血球や赤血球血小板という血液細胞が流れています。
血液が作られる過程を工場に例えて見ていきますと血液を作っている工場は意外に思われるかもしれませんが骨にあります。
骨の中にある骨髄で血液細胞を作り完成した白血球や赤血球などの製品を血管に送り届けています。
全ての元になる原料はこちら造血幹細胞と呼ばれる特殊な細胞です。
この造血幹細胞が骨髄の中で骨髄系とリンパ系に大きく分かれそれぞれ成熟していく事で最終的に白血球赤血球血小板といった全く異なった役割を持つ血液細胞になっていくんです。
この工場の生産ラインでエラーが発生し異常な白血球が作られるようになってしまった状態これが白血病です。
今の説明の画像ですが造血幹細胞が変化していく成熟していく過程で異常が起きるという事ですが具体的にはどの過程で異常が起きるんでしょうか?慢性骨髄性白血病はこの大本の造血幹細胞ここで異常が起きます。
正常では造血幹細胞から骨髄系の細胞へと分化成熟していきますがそのうち骨髄芽球これががん化したものが急性骨髄性白血病という事になります。
一方リンパ系の細胞へと分化成熟していったところではリンパ性の白血病あるいは悪性リンパ腫といった病気が発生致します。
どの段階で異常が発生するかによって病気の種類も違うという事ですが慢性であるのか急性であるかの違いというところを少しご説明頂けますか?この言葉の意味は病気の進行スピードを示しています。
慢性白血病の場合ですと病気の進行は年単位でゆっくりと進みますが急性骨髄性白血病になりますと週単位あるいは月単位で急速に悪くなります。
病気の進み方のスピードが随分違いますね。
そして慢性骨髄性白血病で造血幹細胞に異常が起こりますとそのあとどうなっていくんですか?造血幹細胞ここで異常が起こる事で白血球へ行く各成熟段階の白血球が異常に増えます。
そして血管内では白血病細胞が充満してしまいます。
ここ血管の中に…血液の中に白血病細胞がこのようにず〜っと増えてくるという事ですがそうしますとどういう症状が出てくるんでしょうか?この白血病の特徴はこうした白血病細胞が正常な機能を一部持っておりますので自覚症状はほとんどありません。
そういった事で実際には健康診断で白血球の異常が指摘される。
あるいはほかの病気で医師を受診した際に偶然発見される事が大半という事になりました。
…という事は全く自覚症状がないまま偶然発見される事がこの病気は多いという事なんですね。
白血球の数が異常に増えるといいますがどれぐらいの数になるとこれが問題になってくるんでしょうか?白血球の正常値は4,000から8,000程度です。
ところが白血球数が2万3万と増えますとこの場合は白血病を疑います。
ただ健康診断などでそこまでいかなくても年々白血球が増える。
そういった場合には要注意という事が言えます。
去年の検査値より今年の方が高いぞと増える傾向にあるという場合も疑うという事ですね。
自覚症状なかなかないという事で治療せずにいますとどうなりますか?この病気は治療せずに放っておきますと3年から5年で急性白血病へと変わります。
これを急性転化といいます。
そうしますと病気は急速に悪化しまして治療が大変困難になります。
そのため慢性期のうちにしっかりとした治療を始める事が必要です。
それでは続いて検査や治療について伺っていきましょう。
健診などで見つかる事が多いという事ですが病気の診断としてはどんな検査を行っていくんでしょうか?健診で白血球の数の異常等が指摘されますと血液の専門医を紹介されて来ます。
そこでは診断のために血液検査それから骨髄検査染色体検査遺伝子検査を行います。
まず血液検査を行いまして白血球の中身を調べます。
それで白血病という疑いが出てきた場合には血液を作る大本であります骨髄で検査を致します。
こちらに移りますね。
骨髄検査。
具体的にはどんな検査ですか?これは骨盤を作っている腸骨というところに針を刺しましてそれから少数の骨髄液を吸引致します。
骨髄液を取り出すという事ですね。
そして染色体検査遺伝子検査というのもありましたが何を調べてるんですか?私どもの体の中の細胞の中には23対の染色体があります。
そのうちこの病気では9番染色体と22番染色体の一部が切断してそして入れ代わります。
そうしますと22番目に小さな異常な染色体が出来ます。
これをフィラデルフィア染色体といいます。
そしてそれぞれの染色体にはBcr遺伝子あるいはAbl遺伝子というのが別々の場所にあるのですがこうしたフィラデルフィア染色体上ではその2つが結合してBcr−Ablという異常な遺伝子が作られます。
これがあるという事で診断が確定するという事…?そういう事です。
これを見ますと本来ここにあるここにある別々にあるものが一緒になってますね。
これが異常な染色体遺伝子であるという事になる訳ですね。
それでは診断がつきました。
それではどんな治療の流れになっていくんでしょうか?このBcr−Ablという異常な遺伝子からはBcr−Ablという異常なたんぱくが作られます。
このたんぱくにエネルギー物質がくっつきますと白血病細胞が無限に増殖していきます。
こうした仕組みに着目して出来たのがこの分子標的薬です。
これはBcr−Ablのたんぱくにエネルギー物質がくっつくのをここで妨げる事で白血病細胞の増殖を抑えます。
エネルギー物質の居場所はありませんという事になりますね。
邪魔してる訳ですね。
はい。
ただこれで白血病が治ったかというとそうではなくてこの分子標的薬はこの白血病の大本であります慢性骨髄性白血病の幹細胞には残念ながら効きません。
そのためにこの薬はずっとのみ続ける事が必要です。
蓋をしている状態をずっと続けておかなけりゃいけないという考え方でよろしゅうございますか?はい。
この分子標的薬非常に効果が高いという事ですが具体的にはどのような効果なんでしょうか?イマチニブという第1世代の薬を使いますと5年生存率が95%という大変すばらしい成績が出ております。
これはすばらしい成績ですね。
そのお薬イマチニブが出た後薬の種類というのは増えてきたんでしょうか?2001年に第1世代のイマチニブが登場しました。
その後2009年に第2世代の薬剤としてニロチニブダサチニブというのが登場しております。
そして2014年には更にボスチニブという薬が出てきました。
現在ではこの4種類の薬を使う事ができます。
イマチニブニロチニブダサチニブボスチニブと来ました。
薬の違いはどういうところにあるんでしょうか?これらの薬は大変よく効く薬ですがそれでも使い続けておりますとBcr−Abl遺伝子に変異が起きて耐性が起こってきます。
効かなくなるんですね?はい。
そういう場合にでもそれぞれの薬には特徴があって構造も違いますのでその変異に応じて有効な薬を選択していく事になります。
そうすると効きにくい薬が出たぞと。
では薬を変更してみようと。
そういう使い方を基本的にするという事ですね。
はい。
この4つとも効果がないという場合はどうするのでしょうか?こうした4つの薬でも効果がない場合も残念ながら出てきます。
それに対しては現在第3世代の分子標的薬としてポナチニブという薬があります。
この薬は既にアメリカでは使われておりますが日本でもこの1〜2年のうちに承認されると思います。
この病気はこうした薬がよく効くという事ですがいわゆる移植が検討される事は治療としてはないんでしょうか?若くて体力のある患者さんにおいては移植の適用も検討致します。
なるほど。
こうしたよく効く薬画期的な薬の登場で治療を受ける方の生活も随分変化したんでしょうね。
薬をずっとのみ続ける事が必要なんですがただ副作用もいろいろあります。
このお薬は通院でのんでいけばいいという事ですね?通院でずっと薬をのみ続けます。
そうしますとお仕事や家庭生活もそのまま続けていけるという事なんですね。
ずっとのみ続けるというお薬の副作用というのはどうですか?この薬は非常にいい薬ですがいくつかの副作用があります。
それは例えば発疹あるいは貧血あるいはむくみ等が起きますがそれは軽度のもので非常に重篤な有害な副作用というのはまれであります。
しかしそういった場合にはほかの薬に替える。
あるいは症状を緩和する薬を使う事によってよくなりますので主治医の先生に相談される事が必要です。
ただこれはくどいようですがどうしてものみ続けなきゃいけませんか?はい。
この薬は原則としてずっとのみ続けるという薬でありますがただ最近の研究ではイマチニブという薬を2年間使いますと薬を中止しても4割の方が悪くならないというそういう報告もあります。
そういう事からこういった研究がどんどん進んでどの患者さんに薬をやめる事ができるか。
そういった事が分かるようになる事を期待しております。
一旦やめてみて様子を見ると悪くならない方がある程度の割合いらっしゃるという事が分かってきてる訳ですね。
そういう事を積み重ねていくと薬の使い方またちょっと変わってくるかもしれませんね。
この病気はよく効く薬がある訳ですから治療には希望を持って向かえばいいですね。
そうですね。
この薬は飲み薬でずっと続けてのんでいる事で普通の生活が送れます。
そのためにはのみ忘れをしないようにそういう事できちんと薬をのむと。
それが一番大事です。
のみ忘れを防ぐ服薬手帳とかね。
ご自身で工夫されるといいかもしれませんね。
どうもお話ありがとうございました。
(2人)ありがとうございました。
2015/03/16(月) 13:35〜13:50
NHKEテレ1大阪
きょうの健康 増える血液がん「慢性骨髄性白血病」[解][字]

主な血液がんは白血病・悪性リンパ腫・多発性骨髄腫。なかでも治療が劇的に進歩したのが慢性骨髄性白血病。画期的な薬の登場により、長くつきあっていける病気に変わった。

詳細情報
番組内容
高齢化に伴い、いま血液がんが増えている。主な血液がんは、白血病や悪性リンパ腫、多発性骨髄腫など。なかでもこの20年で治療が劇的に進歩したのが、慢性骨髄性白血病だ。以前は不治の病と言われていたが、画期的な薬の登場により、高血圧や糖尿病と同じように、薬をのんで症状をコントロールしながら付き合っていける病気へと変わった。遺伝子レベルで進む治療を詳しくお伝えする。
出演者
【講師】浜松医科大学教授…大西一功,濱中博久,久田直子

ジャンル :
情報/ワイドショー – 健康・医療
福祉 – 高齢者
趣味/教育 – 生涯教育・資格

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
サンプリングレート : 48kHz
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日本語(解説)
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