日本の話芸 落語「京の茶漬」 2015.03.16


(テーマ音楽)
(出囃子)
(拍手)
(拍手)
(桂春若)いっぱいのお運びで感謝でございますが。
もう一席のおつきあいでございまして。
今大阪のほうにですね上方の落語家が250人いてるんでございます。
まぁこの仕事も誰がなってもええという仕事でもない。
まぁ何の仕事でもそうですがねやっぱり向き不向きというのがあるんでございます。
これ大阪の場合ですがまぁ血液型で分けますと大阪の場合はO型の方に成功例売れてる人が多いんでございます。
ええ。
まず人間国宝の桂米朝師匠O型でございますね。
お弟子さんでも月亭可朝さんとかね桂ざこば師匠もO型でございます。
上方落語協会の会長桂文枝師匠もO型でございます。
笑福亭なんかでも仁鶴鶴光鶴瓶皆この師匠方もO型でございます。
売れてる人は圧倒的にO型が多いんでございますね。
ええ。
ですからもし皆様方の関係者の方で…。
(笑い)噺家になりたいという方があれば相談されればまず血液型を聞いて下さい。
(笑い)ええ。
O型やったら推薦してあげて下さい。
ええ。
まぁええ血液型もあれば駄目な血液型もあるんでございます。
これが何かと申しますとB型でございます。
(笑い)はい。
ほぼ全滅です。
ええ。
(笑い)なって来る人は結構多いんですよ。
うん。
ご案内のように日本人というのはA型が4割ですねO型が3割B型2割ABが1割とまぁ大体おおまかな分布ですが大体まぁB型は2割なんですが噺家まぁ3割ぐらいいてるんですよ。
ええ。
その分ちょっとA型の人が少ないかなというような感じなんですがこの3割いてるB型が全滅なんでございます。
(笑い)まぁ過去にお一人だけ売れはった人はいたはります。
桂枝雀師匠という方が。
この人まあすごいですわね。
ええこの師匠だけがB型で売れはったんでございます。
まぁこれはちゃんとした理由があるんです。
枝雀師匠やっぱりお稽古練習量がすごいですからねもう1日で8時間。
「皆様方が働いてる間は我々は稽古。
返すしかしかたがない。
やった分しか返ってきえへんねんで」とこう仰ってた覚えてますがね。
ですからもう一日中稽古してる訳でございますね。
まぁいはった。
でこのB型というのはですねどちらかといいますと教えてもらった事を学ぶといいますか練習するのには向いてる職業なんです。
へえ。
ですからスポーツ選手に有名人が多いんでございます。
ちょっと古いほうになりますがプロ野球で言いますと長嶋ねミスタージャイアンツ野村克也ね?金田正一ええ。
山本浩二世界の盗塁王福本豊野茂英雄イチロー古田と結構いてるんで。
これ練習せなあきませんからね野球とか。
他でもスポーツでは北島康介とかね浅田真央ちゃんとか福原愛ちゃんとかまぁ他にもたくさんいてるんですけどまぁそういう一生懸命練習をする種目には結構強いんでございます。
で噺家が皆駄目なんは稽古してないという事が。
(笑い)枝雀師匠以外はみんな稽古してないというのがよく分かるんでございますがね。
ええ。
血液型をね分かる方法というのがあるんです。
ええ。
お手洗があります。
トイレですね。
そこで用を済ませて手を洗って出ていく時に大体血液型が分かるんでございます。
はい。
(笑い)日本人が一番多いといわれておりますA型4割いてますがこの方は清潔感好きでございますからもう石鹸つけて水をたくさん出して一生懸命に手を入念に丹念に洗ってそして自分のハンカチで拭いて出ていくとこれがA型でございます。
O型噺家に強いO型。
O型の方はもちろん手は一生懸命洗いますが自分のハンカチは使いません。
(笑い)手は振るだけです。
(笑い)これがO型でございます。
そしてB型ええ噺家にとって駄目なB型は使うたほうの手だけ洗うと。
(笑い)こういうふうになってるんでございます。
まぁ男の方ですと右手で持った場合は右手。
それも割と安易にねちょっと洗う。
(笑い)左手で持った場合は左手。
これですね。
実は私これなんでございます。
(笑い)ですから噺家にとって駄目なB型なんでございますがね。
ええ。
まぁでもB型でございますが私こう見えましてもどう見えてるか分かりませんですがね今上方落語協会の風紀委員長やってます。
(笑い)皆さん笑うてはりますがね大変なんでございます。
ええ。
風紀を乱す者が250人集まってる訳です。
それをこう注意していかないかんというのは大変なんでございます。
私は2代目の風紀委員長なんでございます。
実は初代の風紀委員長といいますのは桂米團治さんでございます。
ええ。
ご案内やろと思いますが米朝師匠のねお子さんご子息でございますがあの人が初代の風紀委員長でございまして。
でまぁ任期はね2年あるんですよ。
2年の間に何かこうやらないかんのでございますが米團治さんがやらはった事は2年の間に僅か1回だけ風紀委員会を開いたという。
(笑い)でその風紀委員会にもちゃんと遅れて来たというね。
寝過ごして30分遅刻してきたという米團治さんでございますが。
でまぁ私も風紀委員となりまして何かせないかん。
そういうふうに。
米團治さんが決めはった事は1つだけあるんですよええ。
「汚い着物を楽屋に吊らない」という。
(笑い)本人はええ着物着てますからね。
ええ。
あとは割と皆セコい着物着てるんでええ。
「吊らない」という事決めたんですね。
それはそういうのを楽屋に繁盛亭の楽屋なんかに貼ってくれるんでございます。
で私も何かこう決めなあきませんので私が決めたのは「他人のネタをパクらない」という。
(笑い)これを決めたんでございますね。
もう最近はね若手の人はどんどんどんどんパクるんでねええ「なるべく自分で考えてやりなさい」とこういうふうな事を楽屋には繁盛亭の楽屋には貼ってるんでございますが。
私はですな最近はですね「誰もやらないジョーク」というのを探して参りまして考えて参りましてそれをなんぼかやってから落語のほうに入らせて頂くというこうようなパターンでやらせてもうてるんです。
「誰もやらないジョーク」でございます。
(笑い)誰もやらないという事は面白くないかも分からない。
ええ。
面白いのはそうやって皆パクったりしますからね。
最近見つけたジョークですが。
「あのな結婚しようと思て」。
「アア〜アア〜」。
「いろんな女の子」。
「アア〜」。
「家へ連れていくねんけどいつもなお母んに反対されて」。
「うん」。
「結婚でけへんで困ってんね。
何かええ方法ないかな?」。
「あ〜それやったらな君のお母さんによう似た女の子探して連れていったらどやねん?反対しにくいやろ?」。
「アア〜なるほどそらぁ面白いかも分からんな。
ほなやってみるわ」。
しばらく致しまして。
「どないなったや?あの結婚の話」。
「いやいやあんたに言われたようにな姿形ものの言い方までそっくりな女の子探して連れていったや」。
「ハア〜」。
「けどあかんねん」。
「何でやねん?」。
「今度は親父が反対しよんねん」。
(笑い)
(拍手)まぁまぁ。
これ割といけましたね。
(笑い)まぁいろいろありますからね。
ええええ。
アメリカのジョークなんですがアメリカの小学校でのジョークなんですがね先生と生徒の会話なんですが。
「マリア。
前の世界地図でアメリカ大陸を指で指しなさい」。
「は〜い。
分かりました。
先生。
ここです」。
「はいよくできました。
ではジョンアメリカ大陸を発見したんは誰ですか?」。
「マリアです」。
(笑い)最後に今日初めてやるジョークを一発やらせてもらいますがね。
ええ。
ですから今までのちょっとやった事があるんで大体まぁ反応はある程度は分かってるんでございますがね。
初めてやるジョークがあるんですが。
奇術師手品師ですなマジシャンが客席の子供を舞台にこう上げましてねステージのほうに上げまして。
「僕。
こんにちは。
『おじさんと僕が会うのは今日が初めてです』と客席の皆さんに言ってもらえませんか?」。
「はい。
分かりましたお父さん」。
(笑い)これ初めてなんですよ。
ええ。
(笑い)これだけうければねこれから使えますが。
ええ。
これもあんまりやり過ぎますとねあとネタに入りにくいんです。
(笑い)今日ちょっとネタが短いもんでちょっと長いめにやらせて頂きましたですが。
まぁ我々の一番のまぁ落語家をやっててありがたいなと思うのは自分の好きなお師匠さんとね?先輩方と旅なんかに行ける事もある訳でございますね。
私ももうちょっと何年か前になりますが人間国宝の桂米朝師匠そしてうちの師匠の桂春團治…。
皆様方ご存じないと思いますが桂春團治というのが私の師匠なんでございますがね恐らくご存じないと思いますがこれが師匠なんですが。
米朝師匠とうちの師匠の春團治そして先輩の桂ざこば師匠で私前座さんと5人で四国の高松のほうへ寄せてもうた事があるんでございますが。
高松へ行かはった方は分かると思いますが今讃岐うどんブームですなうどん屋さんがいっぱいあるんでございます。
ええ。
昔行った時も結構多いなと思いましたが今もっと増えております。
今何や香川県の事をうどん県とかね言うらしいです。
もううどん屋さんばっかり。
もう2軒に1軒はうどん屋さんです。
(笑い)もう普通の家があったら必ず横はうどん屋です。
(笑い)その横は普通の家です。
(笑い)うどん屋です普通の家うどん屋ってこれぐらいうどん屋さんの多い所ですな。
喫茶店なんかでもうどんが置いてましてねお客さんがメニューを見ながら「コーヒーにする?ジュースにする?それともうどんにする?」ってな事を言うてる土地柄でございます。
この高松で知り合いのお家行きましていろいろお喋りを致しまして帰りかけますと「まぁよろしいがなあつかんで」ってな事を言いますな「あつかんで」。
まぁこの言葉から連想する第一感としては「熱燗で一杯飲ませてくれるのやろな」と。
しばらく待ってますと別に何も出てきえへん。
「まぁええか。
な?酒の一杯ぐらいや。
な?ほな失礼致します」。
「よろしいがなあつかんで」。
「熱燗で熱燗で」てね冷やも何も出てきえへん。
(笑い)「どないなってんねやろな?」と思って聞いてみるとこれがあの辺の挨拶やっちゅうますの。
悪い挨拶ですよこれは。
ええ。
(笑い)そらぁまぁ説明してもらいますと意味は分かります。
この「あつかんで」というのは「扱わんで」という事やそうですな。
「おもてなしはしまへんお扱いはしまへんねんけどもまぁまぁごゆっくり。
扱いはしまへんで。
扱わんで。
あつかんで」とこうなるさかいに。
ああ。
「熱燗で一杯飲ませてくれるのやろな」てな事思て3日ぐらい喋ってた奴があるっちゅうんですがね。
(笑い)これ何が災難になるや分からん。
これとよう似た言葉で「京の茶漬け」という言葉がございます。
これはもう大変最近は有名な言葉になりました。
ええ。
京都行きますと「京の茶漬けセット」というてお土産で売っておりますがね。
もっともこれは京都をあまりまぁ褒めた言葉ではございません。
いわゆる京都の批判悪口という事になっておりますがね。
これもまぁ高松と一緒で知り合いの家行きましていろいろお喋りを致しまして帰りかけますと「あの〜何もおへんのどすけどちょっとお茶漬けでもぶぶ漬けでも」ってな事を言うんですな。
ああ〜茶漬けですからね〜?これ履きかけてる靴をば脱いでこれ上がってくる人はいてへん。
ね?これがまぁてっちりとか…。
(笑い)すき焼きとか蟹とかやったらね話は別ですが茶漬けは「まぁまぁまぁ」と断ってしまいます。
それも向こうの方京都の方はちゃんとタイミングを計るそうです。
「もうこのお客さんは絶対に帰る。
後戻りしない。
100%帰る」というこのタイミングを計ってこの「お茶漬けでも」という言葉を言うらしいです。
このタイミングの計り方に京都1,200年の文化の積み重ねがある。
(笑い)他所さんでは真似のできんいわゆる都の文化なんですな。
はあ。
やはりこう茶漬けは「まぁまぁまぁ」と断ってしまいます。
まぁ一遍や二遍ぐらいはええんですが何遍もかまされますと大阪の人間だんだん腹が立ってきまして「あいつ何やなおいああ〜?これいつも私が帰りかけたら『茶漬けや茶漬けや』っちゅうねん。
あんな京の茶漬けなんかあれいっぺんも食た事ないで。
今日は暇やな〜」。
(笑い)「よしあの茶漬け食てこましたろ」というまた変わった人が出てきましてこの茶漬けを食いたさにわざわざ大阪から京都まで電車賃使うて行た奴があるっちゅうんですが。
「こんにちは」。
「んまあ〜これはお珍しい」。
「ご無沙汰しとります。
ええ。
今日はなちょっとこっちゃの大将にお願いをしたい事があって出てきたんでっけどあの〜大将ご在宅で?」。
「鈍な事どして主ちょっと朝早うから上のほうへ上って留守にしとるんどすけど」。
「左様か。
あの〜いつごろお帰りになるやら?」。
「さあ〜それがいつもの事どしてちょっと4〜5軒回ってくるわ」っちゅうて出はりまして。
いえ思わん早う帰ってくる事もあるんどすけどもう晩が遅うなったりへえもうほんまのとこ分からしまへんのどすわ」。
「ハア〜そうでっしゃろな〜。
どうでっしゃろ?ちょっと待たせて頂いたらいきまへんやろか?」。
「さぁさぁどうぞこっち上がっとくれやす。
さっお座布団あてとおくれやす」。
「いえいえ。
構わんといて…。
いえいえ。
ほんまにほっといてもうたら結構で。
いや〜まだまだ寒い日が続いてます。
まぁいうてもねちょっとずつ温なってきてまんねん。
ええ。
また春になったら京都へ寄せてもらうのが楽しみですわ。
あっそうそうこの間こっちゃの大将家へ来てくれはりまして」。
「そうそう。
あの節はえらいご馳走になって相すまんこってした」。
「何を仰るあんたごっ馳走やなんて。
いえ前からお越しになるという事が分かってりゃああまた何ぞおもてなしのしようもあったんだっけどもなもう急なお越しでええまぁせっかく珍しい人が来てくれてはるのに『何ぞ無いかいな?』とフッと台所の覗いたらちょうどあんた魚屋がな鯛をええ1枚置いて帰ったんだ。
見たらこれが目の下1尺5寸ぐらいある鯛やったでまぁこれなら愛想になるかいなと思ていえいえ私が手料理でもう引きちぎったああ。
鯛の造りこしらえましてな。
けどまぁあの〜酒のほうはなこりゃまぁパッフ〜ッ灘の蔵出しが1升おましたんで『どうです?もう冷やでよろしいか〜?』言うたら『湯呑みでもらうわ〜』っちゅうてなぎょうさん飲んでくれはりました。
ええええ」。
(笑い)「パッフ〜ッ。
ちょうどな御飯が炊きたてで。
ええ。
もう温飯に鯛の刺身っちゅうなもう珍しいもパッフ〜ッ何もないけどもあれで堪忍してもらおかいなと思たりして」。
「いえ。
『久しぶりにおいしいお魚頂いた』っちゅうて喜んで帰ってきました」。
「何を言うてはりますあんたこっちゃの大将あんたお口は肥えてはりまええ。
うまい物食い。
ね〜?もう私が作ったもう引きちぎったやつああ鯛の造りあんなんが気に入る訳はおまへんねやろけどまぁ鯛が割と新しいおましたんでええ『あれがよかったな〜』とか言うたりしてねウ〜ン」。
(笑い)「パッフ〜ッ。
茶も出んか?おい」。
(笑い)「いいえな〜その時にちょっと思い出してりゃええ今日またこうやってわざわざ寄せてもらわんならんてな事にパッフ〜ッなってしまへんね。
もう私もなあの時にゃ鯛の造りにかかってたもんやから。
ええ今日かてなお会いしたらもう話のほうは10分もありゃ片づきまんねんけどええやっぱりちょっとこうお目にかからん事にはね。
ええええウ〜ン。
パッフ〜ッ。
鯛が割と新しいおましてね」。
(笑い)「『あれがよかった〜』って言うたりして家の嬶とも言うたりしてまして。
いやいや。
もうそない礼言うてもうたら損がいきます。
ええ。
ただただ鯛が新しかったっちゅうだけで。
御飯が温かったっちゅうだけでもうしょうのないこってす。
ウ〜ン。
パッフ〜ッ」。
(笑い)「こたえんのう」。
(笑い)「まだお帰りやおまへんな?あの〜何時頃でっしゃろな?今」。
「もうかれこれお昼かいなと思たりしとるんどすけど」。
「アア〜ッお昼ねエヘヘヘ」。
(笑い)「そうでっしゃろなアハハ私もお腹の具合が昼かいな〜とか思たりしとります。
ええ。
そうですか。
昼ですか」。
(笑い)「ウ〜ン。
パッフ〜ッ。
今朝7時に家出ましてん」。
(笑い)「朝飯食わんとね〜」。
(笑い)「2軒回ってここが3軒目になってます。
そうですか昼ですか。
パッフ〜ッ。
知らん顔やなこれ」。
(笑い)「あの〜ちょっとこの辺に御飯か何か取ってもらえる所おまへんやろかな?」。
「まあ〜この辺は不便な所どしてもう何もあらしまへんのどす。
へえ。
新京極辺りでもお行きやしたら?」。
「へえへえ聞いてますわへえ。
ええ所やっちゅう事はね。
ですが新京極っちゅうのはここから近いんですか?ええ?ちょっと離れてる?左様か〜?何かちょっとね〜パッフ〜ッうどんとかね?蕎麦とかそんな物でええんでっけどこの近くにおまへんやろかな〜?」。
「おへんどすな〜」。
(笑い)
(笑い)「あかんか。
今日は帰ろか。
フ〜ッ。
えらいお邪魔を致しました。
ちょっとなもう一軒回りたい所がおますんであの〜旦那さんにはな私がきつう会いたがってたという事だけちょっとお伝えを願いま」。
「まあ〜せっかくのお越しとんのに主が留守で申し訳のないこ…。
あの〜何もおへんのどすけどちょっとお茶漬けでも」。
(笑い)このおかみさんここまで辛抱してたんですがもうちょっと頑張りゃよかったんですが相手がこう背中を向けた途端にねこれ癖になってるもんですから「ちょっとお茶漬けでも」。
とこっちゃの男はこの一言言わせたさに…。
(笑い)大阪から来てる奴です。
「左様か?」。
(笑い)「えらいすんまへんな」。
上がり込みました。
「しもた」と思たけどもう後の祭りです。
台所のほうへ入ってきたんですがなにもこのおかみさんもねほんまはそないにまぁけちな人やないんです。
「最前から謎をかけてきてる」こんな事は十分に分かってるんですがまぁどこの家にも御飯の都合というのがあります。
朝もうちょっと残るやろと思たけども思わん残らない。
「昼は自分一人だけ。
虫養いだけしといて晩は小早うと」こう段取りつけたあったやつを座り込まれてしもたらしょうがない。
お櫃の蓋を取ってみると底のほうに心細う残ってる御飯。
(笑い)「足りるかいな〜?」と思案しながらこれをこうよそうてね縁にへばり付いてるパリパリのやつ…。
(笑い)これも皆こき落として…。
(笑い)ようようの事で軽う一膳盛りつけました。
それへたっぷりとお茶をかけて漬物と箸。
「あの〜何もおへんのどすほんまお恥ずかしゅうようなこって。
まぁまぁお口汚しに」。
「えらいすんまへんなもう。
こちらはんで御飯まで頂くてな。
いえありようはちょっとお腹がへっておりました。
えらいすんまへん頂戴致します」。
「ほんまの茶漬けやなこれは」。
(笑い)「初めに冷や飯の一膳でもつけやがったらええのに。
えらいすんまへん頂きます。
ええ」。
「あ〜お茶がよろしいな〜。
やっぱりご当地は宇治が近いだけにもう常からこんなええお茶で。
うちらあきまへんええ。
赤黒いやつでええお茶やら薬やら分かりまへん。
ええ。
香りが違います結構です。
頂戴します」。
「うんすぐきですか?いやまた私これ好きでんね。
ええっ?いや大阪にかて売ってまっけどやっぱりええ京のんとは味が違います。
へえ頂戴します」。
「うんこらぁうまいわ。
この漬物はやっぱり…」。
「京都ですな。
このすぐきへえそれから柴漬けね。
ええ」。
「冬になったら千枚漬け。
うん。
漬物は京都ですわまぁ。
こらぁ結構です。
ええ。
もうこんなうまい漬物あったらねお菜も何にも要りまへん。
結構です。
うん」。
「お代わり」。
(笑い)「終いやでおい。
一膳飯はないやろ?おい。
あっちゃ向いて知らん顔してる。
こっち向け」。
(笑い)「こっち向け。
知らん顔や。
ズズ〜ッスズ〜ッ」。
(笑い)「ウ〜ン。
もし〜このお茶碗はこれはええお茶碗ですな〜。
ええ?清水焼ですか?この独特のこの薄焼きええこれがまた風鈴みたいにチンチンとええ音しまんねんけどねこれ。
もし?この音聞こえまへんか?空っぽやなかったらこんな音出まへんねんけどね」。
(笑い)「知らん顔やな。
あんな〜こんなお茶碗大阪へ土産に買うて帰ります。
このお茶碗どこでお求めになりました?」。
空の茶碗向こうへグ〜ッと突き出した。
嫁はんのほうももう負けてられしまへん。
空のお櫃を向こうへ突き出して「これと一緒にそこの荒物屋はんで」。
ありがとうございました。
(拍手)
(打ち出し太鼓)2015/03/16(月) 15:00〜15:30
NHKEテレ1大阪
日本の話芸 落語「京の茶漬」[解][字][再]

2月5日(木)にNHK大阪ホールで実施した、第349回NHK上方落語の会から桂春若さんの「京の茶漬」をお送りします。

詳細情報
番組内容
2月5日(木)にNHK大阪ホールで実施した、第349回NHK上方落語の会から桂春若さんの「京の茶漬」をお送りします。【あらすじ】京都ではお客さんが帰ろうとして履き物をはいてしまってから「お茶漬でも一膳食べておいんなはれ」という習慣があって、まさか「そうどすか」って言って上がり込んで食べないことを見込んで言うのだと、京の人の悪口を言う人がある。ある大阪の商人が、一度「京の茶漬」を食べてやろうと考え…
出演者
【出演】桂春若,大川貴子,桂米輔,桂米左,桂そうば,増岡恵美

ジャンル :
劇場/公演 – 落語・演芸

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
サンプリングレート : 48kHz
2/0モード(ステレオ)
日本語(解説)
サンプリングレート : 48kHz

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