プレタポルテ

イスラム国は、「2020年の勝利」を信じていた

フセインが書き残した、終末までの7段階

(写真:ロイター/アフロ)

どうして彼らがカリフ制国家樹立を目指しているのか? どうしてアメリカやユダヤを敵視しているのか? それに答える鍵はこの終末思想にあるの。だから、きょうはイスラム教の基本的な教義や彼らの解釈を踏まえて、そのへんを考えていこうね!

そもそも、終末思想にもとづいて国を作るって、いったいどういうことだろう? 世界の終わりを迎えるために国を作ろうとか、邪魔する敵を倒そうとか、そういう考え方はほとんど妄想に近いよね。西洋の近代国家を基準に考えるとき、イスラム国はどう転んでも「国」にはなりっこないし、いくら敵を想定したって圧倒的な武力の差でやっつけられるに決まってる。

「最後の審判」はイスラム教にもある

それなのに「いける!」と思い込んでるのは、イスラム国の理念が強い宗教的な歴史観にもとづいてるからなの。そして、とくにその根底には終末思想がある。だから、ここのところを知っておくのはけっこう重要なんだよね。

アブラハム宗教(ユダヤ教、キリスト教、イスラム教)には、直線的な歴史観があるってのは聞いたことあるかな? つまり、世界の創造がはじまりで、人類の歴史は終わりへと向かってるってこと。最後の審判で悪がばしっと裁かれる。最後の審判はイスラム教にもあるんだよ。

この最終的なタイミングの前には、マフディーって呼ばれる救世主が現れることになってるの。クルアーンにははっきり書かれてないけど、ハディース(ムハンマドの言行録)のなかにはいくつかのマフディー伝承があるんだよ。

おもしろいのは、イスラム教のマフディー伝承にイエス・キリストが出てくること! キリストはマフディーが偽メシアと戦ってるときに手助けをしてくれるんだって。この戦いを経て悪が倒され、世界はイスラム教に帰依することになるんだよ。この伝承は必ずしもすべてのムスリムが受け入れてるものじゃないんだけど、広く認められた考え方なんだよ。

そういうわけで、終末思想はイスラム国以前にも厳然と存在してたの。とくに1990年代には、雑誌や読みものを通してけっこう流行してたんだって。これはアメリカやユダヤの陰謀論が通俗的な終末論に接ぎ木されたようなトンデモ本だったけど、一部の人の心のなかに終末論的な下地を作ったことはたしかなんだよね。

【アブラハム宗教(Abrahamic religions)】:ユダヤ教、キリスト教、イスラム教のようないわゆる一神教。これらの宗教は最初に唯一の神を信仰しはじめたアブラハムを自分たちの先祖とし、そこから派生してきたと考える点で共通している。聖書と同じようにイスラム教のクルアーン(コーラン)にも、世界創造(フード章6節)や楽園追放(高壁章10-25節)の記述が見られる。
【マフディー(Mahdi)】:イスラム教の終末伝承に現れる救世主。スンナ派では、将来ムハンマドの家系から現れるとされる。シーア派ではすでに現れたが終末の日まで「隠れている」と考えられる。たとえば、イランのシーア派、十二イマーム派はムハンマド・イブン・ハサン(869年生まれ)をマフディーとする。
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