「こんねんどさいだいのわだいさく」
(田中ロミオ「人類は衰退しました」)
最も人気のあるエロゲシナリオライターの一人、田中ロミオさんの初小説
「人類は衰退しました」読了――、ほのぼのSFでとても面白かったです(^^)
この小説買いに本屋さん行ったら、一軒目の本屋さんは売り切れで、二軒目
も平積みで残り二冊しかなかった。これが、エロゲーマーの力なのか(^^)
ちなみにこの本の隣にあった原田宇陀児さんの「新興宗教オモイデ教外伝」は
沢山積んであったのが、哀愁を誘ってなんとも(^^;現役人気ライターは強いなあ。
ちなみに購入後、アキバにエロゲ買いに行ったとき本屋にも寄ったんですが、流石、
アキバの本屋さんはたっぷり揃えていました。これが、エロゲーマーの力なのか(^^)
ちなみに余談ですがエロゲは話題作「君が主で執事が俺で」、卑語ゲーの期待作
「風輪奸山 この身幾たび汚されようとも……」、rufのミステリエロゲ「つくとり」、
そして攻略ヒロインに男の子がいる(らしい)「いさましいちびの許婚」を購入。
もし、いさましいちびの許婚の前小路葵が攻略不可や実は女だったら泣く(^^;
とまあ、話がずれまくったので閑話休題。以下、「人類は〜」より引用。
はじめまして、田中ロミオです。ご存知ない方も多いかと想います。
あなたのすこやかなる明日のため、このペンネームをインターネットで
検索しないようにしてください。特に平成生まれの方が私のペンネームを
検索することが法律で今にも禁じられそうです。ご注意ください。
簡単に自己紹介するなら、私は「ウィンドウズ用アプリケーションソフトに
使用されているテキスト・データの作成」を生業とする者ということになります。
いわゆる貿易商です。
それでいいじゃないですか。よろしくお願いしますよ。
(田中ロミオ「人類は衰退しました」)
吹いた(笑)
つうか、この小説をまず初めに買ってる層はほとんどエロゲーマーかと(^^;
では、本作の内容の紹介に移りますと、人類文明が衰退して、変わりに妖精さん
が地球の後継者として現れた世界が舞台。超科学を持ちながら楽しいことしか
しない妖精さんと、人間の女の子主人公とのファースト・コンタクト物です。
主人公の女の子は結構ちゃっかりした性格をしているんですが、対する妖精さんの
方は、完全なライト・エルフ(善い妖精)。楽しむこと、お菓子を食べること、
人間を楽しませることぐらいしか考えてないみたいです。ありえないほどの
のほほんほのぼのぶりで話は進み、読んでいるときの緊張度はゼロですが、
まったり読書するには最高に適した本です。妖精さんは超科学を持っている
ので、主人公の女の子の干渉で、色々事態が起きちゃうのですが、あまりの
まったりほのぼのぶりで、大変な事態も大変と感じられないところが楽しいです。
本作の妖精さんは「にんげんさんはかみさま」と云って人間を大切に
してるけど、どう考えても妖精さんの方が、その超科学ぶり(高度に発展
した科学は魔法と見分けがつかないよレベル)は神様(牧神パン)です。
スカンジナビアで妖精族はエルフと呼ばれ、スコットランドのシーリー・
コートとアンシーリー・コートのように「ライト・エルフ(明るい妖精)」
と「ダーク・エルフ(暗い妖精)」に分けられた。このエルフという名は、
サクソン族と一緒にブリテン島に渡って来た………イングランドでは、
エルフと呼ばれたのは、もっと小さな群れをなす妖精で、
その名前は特に、小さな妖精の男の子たちを指すのに使われた。
(キャサリン・ブリッグズ「妖精 Who's Who」)
生い茂る木々の葉に天空をおおわれた広大な森の中には、曲がりくねった
いくつもの小道が通っている。そこにはかつて小さな生物たちが息づき、
巡礼者が本にはさみこまれたしおりひものように道をつけていたが、今では
もう忘れ去られ、野生の姿に戻ってしまった。人間が森を開拓し、耕地として
整備する前、森の中では年をとった”木の皮”が、あらゆるものを支配
していた。魔法の木々、エルフ王国のある草むら、空気の精の住む低木の
しげみ、妖精たちが飛びまわる草、薬草、苔のすべては、彼の統治下にあった。
巨大な要塞(森)に守られて、森の中では妖精や小人に仕える一角獣
や鹿、馬たちが暮らしていた。”偉大な森の時代”はあらゆる方向
から吹く風に必死の抵抗を試みた。しかし、人間が大地を耕す最初の
鍬の一撃で、一角獣たちはどこかに追いやられてしまったのだ。
………
人はパン(牧神パン)のことを怠惰な女たらしの一言でかたづけてしまうが、
決してそんなことはない。それどころか彼は全能の神であり、また英雄で、
あのゼウスの異父兄弟でもあるのだ。………(ヘルメス神は)神々の住む
オリンポス山へパンをつれていった。しかし、冷たくて清潔すぎる神殿の
なかで、自尊心が強くて気取った人たちと暮らすのは、パンには退屈だった。
(陽気な楽しさを求める神である)彼にとっては、ふっくらとした
木の精たちや、ケンタウロスや羊飼いと一緒にいる方が心地よかった。
それに、明け方にむせかえるようなクローバーのにおいを
かいだり、涼しい谷をあてもなく歩いたり、ヤギの歌を
聞いたり、あるいは好きなときに体を掻いたりしたかったのだ。
とうとうパンはがまんできなくなって、神々の国を包む
雲の中に飛びこんで生まれ故郷へ帰っていった。
「偉大な神、パンが帰ってきた!」
農民や羊飼い、ファウヌスやフローラなど親しい妖精たち、
そして草やスミレまでもがよろこんでパンに手をふった。
パンがもどってきたので大地は畑と羊の群れでいっぱいになった。
(ピエール・デュボア、ロラン・サバティエ「妖精図鑑 海と草原の精」)
既に人は種としては衰退期。
ここ数百年だかを通じてゆっくりと人口を減じ、
今にも消え去ろうとしています。
科学技術も失われました。
都市は放棄され、生活圏も縮小しました。
そして地球は妖精さんにお任せなのです。
(田中ロミオ「人類は衰退しました」)
本作、緊張感や、スリリングな展開というものは全くありませんが、ほのぼのした
小説を読んでまったりしたいという人にはお勧めです。私は楽しかったですね。
「吉永さん家のガーゴイル」とか「よつばと」とかの「ほのぼのまったり系作品」が
好きな人にはよりお勧めって感じかな。のんびりした作品で心が安らぎます(^^)
参考作品(amazon)
テリオス「Chanter -キミの歌がとどいたら-」(田中ロミオ作品)
フライングシャイン「CROSS CHANNEL」(田中ロミオ作品)
ピエール・デュボア、ロラン・サバティエ「妖精図鑑」(全四巻)