Updated: Tokyo  2015/03/16 15:10  |  New York  2015/03/16 02:10  |  London  2015/03/16 06:10
 

ルイス氏:「フラッシュ・ボーイズ」からほぼ1年、波紋を考察

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  (ブルームバーグ):マイケル・ルイス氏の「Flash Boys: A Wall Street Revolt(フラッシュ・ボーイズ:10億分の1秒の男たち)が出版されてからほぼ1年になる。これは青いジャケットを着た場立ちに取って代わった光ファイバーケーブルとコンピューターサーバーの話である。

この1年ほどの間に、いろいろなことが起こった。ニューヨーク州司法長官がダークプールをめぐりバークレイズを提訴、米証券取引委員会(SEC)は高頻度取引(HFT)会社への優遇の疑いでバッツ・グローバル・マーケッツを調査した。

ルイス氏はバニティ・フェア誌の最新号への寄稿で、自著が広げた波紋について考察している。まず、罰金や訴訟、苦情は「まだ始まったばかり」だろうという。金融業界はフラッシュ・ボーイズで描かれたことについて「時間と金をかけて煙幕を張ってきた」からだ。「システムを修正しようとするウォール街の少数派」が起こしている進展に祝意を表した後、ルイス氏は同氏の著作が引き起こした怒りの多くは矛先が間違っていると指摘した。

「世間の反応には驚いた」と同氏は記述している。「ほぼ完全に高頻度取引だけに注意が向いてしまった。高頻度取引だけが問題なのではなくシステム全体に問題があると、私は明瞭に書いたつもりだった」という。

歴史を書き換えているわけではない。ルイス氏は最初から、高頻度トレーダーは「不具合のあるシステムを悪用している」だけだと述べていた。ただ、「フラッシュ・ボーイズ」を斜めに読むと、高頻度取引こそが問題であるかのような印象を受けなくもない。「高頻度取引」または「HFT」という言葉が107回も出てくることも一因かもしれない。

ルイス氏はこの本の題を「注文の流れ、新しいフロントランニング」としてもよかっただろう。もっとも、この題だったらいくらルイス氏の本でも多分ベストセラーにはならなかっただろう。

しかしルイス氏は、同著が取り上げた最大の問題はHFTの台頭ではなく、「大手銀行と取引所」が公平性に背を向け、「投資家の利益を守るふりをしながらそれを損なうために金を受け取っていた」ことだと説明する。

ブルームバーグの株式ニュース担当のマネジングエディター、クリス・ナギ氏は、高頻度取引はそれ自体として反道徳的なものでも善良なものでもないと言う。ルイス氏が著書で描いた悪用は、高頻度取引によって可能になったものではあっても高頻度取引が引き起こしたものではない。

ナギ氏は2010年に米株式市場で起こった「フラッシュ・クラッシュ」を挙げ、市場が流動性をあまりにもコンピューターに依存している状態は懸念材料だと言う。しかし高頻度取引をなくそうとするのは月に向かって吠えるようなものだ。

「批判する人々は、それならばどんな代替の方法を提案するのか。技術の進歩を逆行させるのは極めて難しい。コンピューターは、なくなりはしない」とナギ氏は話した。

原題:‘Flash Boys’ One Year Later Leave Lewis Wondering: Opening Line(抜粋)

記事に関する記者への問い合わせ先:ワシントン Laurence Arnold larnold4@bloomberg.net;ウィルミントン C. Thompson cthompson1@bloomberg.net

記事についてのエディターへの問い合わせ先: Marty Schenker mschenker@bloomberg.net 木下晶代

更新日時: 2015/03/16 06:03 JST

 
 
 
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