世界保健機関(WHO)は2月下旬、聴力を守るためにスマートフォン(スマホ)などで音楽を鑑賞する場合は「1日1時間以内」に控えるべきだとする指針を発表した。難聴となる恐れが指摘されるためだ。難聴は初期には自覚症状がない上、失った聴力を回復するのは難しい。大音量の音楽が流れる場所に行く機会が多い人も注意が必要だ。(平沢裕子、写真も)
難聴は、耳の器官や聴覚神経の障害などが原因で聞こえにくくなる病気。騒がしい場所で聞き取りにくかったり、音は聞こえるのに内容が理解しにくかったりする。
大きな音に長時間さらされることで聞こえにくくなるのは、聴覚器官の内耳にある蝸牛(かぎゅう)の音を感じる細胞が障害を受け、死んでしまうためだ。死んだ細胞を再生させる治療法はなく、正常な聴力を維持するには予防するしかない。
WHOが指針を出した背景には、スマホの普及により米国で、大音量の音楽を聴く若者の難聴が増えているというデータがあり、問題となっていることがある。
東京大大学院医学系研究科耳鼻咽喉科の山岨(そば)達也教授は「日本でもかつて“ウオークマン難聴”が問題となったことがあるが、米国のような具体的なデータはなく、実際に若者で難聴が増えているかどうかは分からない」とした上で、「若いときから大きな音に接していると、加齢による難聴のリスク要因になる。注意は必要だ」と指摘する。
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