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とあるおっさんのVRMMO活動記 作者:椎名ほわほわ

戦争終了直後

詰め寄られタイム。
 この戦争もようやく終わった。そして自分の周りが騒がしくなった。

「あの龍と知り合いなの!?」

「盟友ってどういうことだ!」

 と、雨龍さんとの関係を探ってくる人。

「あの攻撃何!?」

「その弓、もしかしてドラゴン素材!?」

 と、興奮が抜けないため自分の左手に握られたままの弓を眺めてくる人。

「そもそもどうやって龍を召喚した!」

「サモナーなのか!? どうやってそのスキルを取った!?」

 と、召喚方法を知ろうと詰め寄ってくる人。これらの人たちに囲まれて自分の周りは非常に騒がしかった。第三陣にいた人の殆どが集まってきているので、非常に五月蝿い。今の自分は外套のフード部分をかぶっており、顔だけは見えないようにしている。流石に目立ってもいいやとは、少し前より考えを徐々に変えてきていたとはいえ、流石に今回は目立ちすぎたか……ま、それはそれでいいか。以前のように目立ちたくないとコソコソと立ち回り続けるのも、もう面倒くさい事この上ない。

「あー、分かったから、とりあえず少し静かにしてくれ、答えるからさ」

 自分がそう口を開いたことで、ざわざわとはしているものの、比較的静かになった。どこからか「ちょっと我慢しろ」「今は静かにしろ」と言う声も聞こえてくる。

「これぐらいなら少々離れた場所で聞いている人にも聞こえるか……まず一つ目の質問だが、お察しの通りにあの龍と自分は知り合いだ。より正確に言えば、以前に色々と訓練を見てもらった事もある」

 自分の一言でまたざわめきが増える、無理もないだろう。あんなどでかい存在が知り合い、かつ訓練を見てもらったなどという話は、あまりに破天荒すぎる部分が多いと感じるだろうが、事実である……。

「疑っている人も当然いるだろうが、事実しか言っていない。あの龍は、当然龍の国にいる存在で……龍人を始めとした人を強くする修行を担当している龍だ」

 厳密には龍人と、組んだ他種族の人を……だが、そこまで話す必要はないだろう。双龍の儀は、たどり着くまでの道を自力で見つけてこそ意味があると自分は考える。

「言っておくが、狙って出会ったわけじゃないぞ? 自分にとっても、あの龍との出会いは完全に予想外だったと念を押しておくからな」

 フラグを立てて行動すれば出会える、そういう存在でもないし。

「言えるのはそんな所だ。正直『盟友』と言ってもらえるとは思わなかったがな。因みに、あの龍は女性だ」

 この『女性だ』の一言で男性陣がおおーと微妙な声を上げる。

「女性って事は……あの龍、人型になれんの?」

 誰かがそんな質問を自分にしてくる。

「その質問への応えはYESだ。 彼女は人型になれる。常時あの巨体では行動するのに不便すぎるだろう?」

 実際は逆らしいのだが……まあ細かい事はどうでもいいだろう。

「ち、因みに人型はどんな感じ?」

 そしてやっぱり飛んでくるこの質問。んー……と少しタメを作ってから答える事にした。

「そうだなあ、外見を説明すると……身長180cmぐらいで、長い黒髪。左の目元になきぼくろがある美人さんだったな」

 この返答に男性陣はおおー!! と声をあげ、女性陣から冷たく痛いまなざしを貰っていた。この辺は何所の世界でもかわらんなぁ。

「とりあえず一つ目の質問はこんなもんか、次、二つ目だが……この弓は確かにドラゴンから得た素材に幾つかの手を入れて作られている。作ったのは自分だ。普段はあそこまでの威力は出ない……龍のバックアップがあったからこそ今回だけの限定で振るえた力だな」

 弓を自分の前にかざしながらそう返答する。

「使った素材は?」

 やはりそこを聞くか……素材ぐらいはいいだろう。

「ここの部分はドラゴンの骨を使った。当然加工してあるから骨そのものの形は綺麗さっぱり消えているがな。ここの持ち手の保護部分はドラゴンの皮を巻いている。弦を張る部分は、補強と飾りをかねてドラゴンの鱗をつかっているな。 そしてここからここ、しなリを特に生む部分もドラゴンの骨なのだが……ここはドラゴンの骨の中からこのようにしなる部分を抽出して作っている……自分は幸運にもそれが出来たが、皆がそれを出来るとは申し訳ないが断言できない」

 と、弓の部分部分を指差しながら説明した。真剣に聞いているだけでなく、メモを残している人もいる。

「加工方法は、鍛冶だ。金属のように熱して叩く。この辺は既にドラゴン装備を作った鍛冶屋なら知っているだろうが。これで質問への答えになったかな?」

 ここで手が上がって質問が飛んでくる。

「ドラゴン素材を作った鍛冶屋に今聞いてるんだけど、『抽出なんてあんの?』と言う質問が……」

 ああ、それはそうか、ちょっと言い方を訂正しておくか……。

「言い方がまずかったかな? ドラゴンの骨は金属のインゴットのように一定の堅さじゃなくてな……堅い部分と柔らかい部分に分かれる事がある。その柔らかい部分を集めてもう一度鍛え直し、使っているのがこの弦を張っている部分だ」

 更にどういう比率? とかを聞かれたがそれは全てノーコメント。そこは鍛冶屋それぞれが自分なりの答えをはじき出すべき所だし、ヒントはもう十分に与えているとして答えなかった。

「とりあえず二つ目もこんな所で勘弁してもらおう。武器製作はそれぞれの鍛冶屋が努力した結果を出せる場だからな……」

 その弓を売ってくれ、そういうダメ元で言ってくる声も当然聞こえたが、丁寧にお断りした。

「そして三つ目か……まず、自分はサモナーではない。万が一サモナー関係のスキルがこの世界に存在しているとしても、そんなスキルの存在は自分は知らない。そして召喚方法だが、以前龍である彼女から貰っていた一度だけ使える召喚媒体を、完全消滅させる犠牲を払って行なった召喚だ。」

 一度だけ、と言う部分で周りの人達が途端にがっかりしたような雰囲気になる。

「もう一度貰いにいけば、そう考えている人もいるかも知れないが……あいにくそんなに軽々と貰える物ではなくてな……少なくても自分は、まずもう一度貰えると言う事はないだろうね」

 この自分の言葉が追い討ちとなったのか、がっくりと肩を落とす人が何人もいた。

「三つ目の質問についてはこれ以上話せる事がない。隠し事も何にもない」

 そういって締めくくった所、突如上空にフェアリー・クィーンの幻影が浮かび上がった。

『わが国の勇士の皆様、そしてわが国の窮地に駆けつけてくださった義勇兵の皆様……本当にありがとうございました。お陰で我々の妖精国はゲヘナクロスの尖兵を兼ねた奴隷となることを回避できました。また、多くの戦死者の皆様にはわが国に名を残し、残された遺族の方へと十分なお詫びをいたします。当然戦い抜いてくださった皆様にも出来る限りの謝礼をお支払いいたします。それから、特に非常に高い戦功を上げられました方には謝礼だけでなく、妖精国の宝物庫より幾つかの武具や装飾品を贈呈いたします。該当する方々は後ほど直接お呼びいたしますので、お応え頂けると幸いでございます』

 そうか、戦争が終わったから褒賞のお時間か……。プレイヤーでも名前が挙がっているのがちらほらいたな。

『南の砦街へお戻りになり、戦いの疲れを癒してください。皆様、お疲れ様でした。功労者の皆様は、また後ほどお会いいたしましょう』

 フェアリー・クィーンの幻影はそうして消え去る。皆が南の砦街に入っていく中、自分の所に一通のメールが届いた。

〈お聞きしたい事がたくさんございます。後ほどもう使われることのない本陣へおいでください。 フェアリー・クィーン〉

 行かねばならないか……やれやれ。
次回はクィーンとの話し合い、かな?

スキル

風震狩弓Lv47 剛蹴Lv16 百里眼Lv18 製作の指先Lv90 小盾Lv20
隠蔽Lv49 武術身体能力強化Lv28 義賊頭Lv13 スネークソードLv24
妖精言語Lv99(強制習得)(控えスキルへの移動不可能)

控えスキル

木工Lv44 上級鍛冶Lv42 上級薬剤Lv17 上級料理Lv42

ExP 13

所持称号 妖精女王の意見者 一人で強者を討伐した者 竜と龍に関わった者 妖精に祝福を受けた者 ドラゴンを調理した者 雲獣セラピスト 人難の相 託された者 龍の盟友

二つ名 妖精王候補(妬) 戦場の料理人
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