ロシア「核兵器準備」:ウクライナ問題で譲歩する意思皆無
毎日新聞 2015年03月16日 01時27分(最終更新 03月16日 05時59分)
ウクライナ危機で昨年3月にロシアがクリミア半島を編入した際、プーチン露大統領が「核兵器の準備」をしていたことを大統領自身が明らかにした。1年たった今、この秘話を持ち出したのは、ウクライナ問題を巡ってロシアが欧米側に譲歩する考えがまったくないことを示す強い意志の表れだ。【モスクワ田中洋之、ブリュッセル斎藤義彦】
一連の危機の中で、プーチン氏は、「ロシアは核大国だ。関わり合いにならない方が良い」(昨年8月、学生との対話集会)と述べるなど、「核」をちらつかせて露骨に欧米側を威嚇したことはあった。だが、実際に核兵器の準備を「していた」と、明らかにしたのは初めてだ。
準備状況の詳細は明らかではなく、攻撃対象も不明だ。だが、核配備の軍部隊に大統領が準備を命じたのは間違いなさそうだ。
ロシア外務省のウリヤノフ不拡散・軍備管理問題局長は今月11日、「ロシアは自国領(であるクリミア)に核を配備する権利がある」と語った。これが15日放映の大統領発言の伏線として準備されていた可能性はある。
この1年間、西側諸国はロシアを主要8カ国(G8)から排除し、対露経済制裁を重ねるなどロシアに態度変更を迫ってきた。だが、ロシアはこれまで通り応じず、欧米への対抗を強める姿勢だ。
「私が決断した」。プーチン氏は国営テレビの番組の中で、今月、クリミア編入を決意したのが昨年2月に親露派のヤヌコビッチ政権が崩壊した直後だったことも明らかにした。自分一人で決め、行動する「強い指導者」を国内にアピールする狙いもありそうだ。
ウクライナへのこだわりもある。西に行くほどウクライナ語を話し、「ウクライナ人」としての自覚を強く持つ住民が多い国だが、ロシアに近い東部や、南部のクリミアではロシア語を話し、ロシアに強い親近感を持つ人が多数派だ。クリミアにはロシア黒海艦隊の基地もある。ロシアにとって「兄弟国」のウクライナが、政変で欧州連合(EU)や北大西洋条約機構(NATO)に向かうのをロシアは許せなかったのだ。
ロシアのチジョフEU大使は取材に「NATOが際限なく(東方に)拡大し、(ロシアとの)信頼を壊した。周辺国に影響力を拡大し、分断しようとしたのが危機の原因」と指摘。「EUも、ウクライナに『ロシアかEUか』の選択を強制し親欧米派を支援した」と非難した。