「キーパーソンに聞く」

もう一度、世界を“ヤバイ”と思わせろ

今こそ日本に「オープンイノベーション」が必要だ

>>バックナンバー

2015年3月16日(月)

1/4ページ

印刷ページ

 「オープンイノベーション」が脚光を浴びている。技術やビジネスの革新を起こすために、企業の外部と積極的に連携していこうという発想自体は、既に10年以上前から提唱されていた。だが、欧米に比べると、日本での取り組みは掛け声こそあったが、これまで進んできたとは言い難い。

 だが、全てのモノがインターネットに接続される「Internet of Things(IoT)」の時代が到来し、「ビッグデータ」の活用も期待される中で、状況が大きく変わりつつある。もはや企業1社だけでは、世界のイノベーションのスピードについていけないという危機感が高まっているからだ。

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は2月12日、「オープンイノベーション協議会」を設立。協議会の会長にはコマツの野路圀夫会長が就任し、2月9日時点で218の企業や大学などが加盟した。

 3月31日に「グローバル・オープン・イノベーション・フォーラム2015」を開催する一橋大学イノベーション研究センターの米倉誠一郎教授に、なぜ今、オープンイノベーションが改めて注目されているのか、話を聞いた。

(聞き手は大竹 剛)

米倉誠一郎(よねくら・せいいちろう)
1953年東京生まれ。一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了。ハーバード大学歴史学博士号取得。97年、一橋大学イノベーション研究センター教授に就任。専門は経営史とイノベーション。2003年4月〜2004年3月、ソニーのグローバル・ハブ・インスティテュート・オブ・ストラテジーでコ・プレジデントを務める。

日本こそ「オープンイノベーション」にもっと取り組んでいかなければ、将来はないーー。米倉先生は、そんな危機感をお持ちだと聞きました。しかし、ずっと以前から、オープンイノベーションという考え方は、日本でも知られていたはず。なぜ、今、改めてオープンイノベーショの必要性を強く提唱しているのでしょうか。

米倉:そもそも、オープンイノベーションとは、外部の知識を生かしてイノベーションを起こす取り組みで、今から10年以上前、米ハーバードビジネススクールのヘンリー・チェスブロー助教授(当時)が提唱し始めました。人材の流動化や技術進歩の加速に対応する概念として、欧米で広く受け入れられてきました。

 しかし、最近になって、ようやく多くの日本企業がその重要性に気付いてきたようです。インターネットなど情報通信技術が大幅に進歩し、20世紀を支配してきた「内部化」のパラダイムが崩れたからです。「内部化」とは、会社の中に全ての機能を取り込むことです。

 例えば、電機業界で広く言われてきた「垂直統合」という考え方を思い出してください。要素技術の研究から主要部品の開発・生産、商品の企画・デザイン・組み立て、マーケティングまで、すべてを抱え込むことが強さの源泉だと言われてきました。

 しかし、1990年代以降、デジタル化やモジュール化を背景に、こうしたパラダイムが時代遅れになった。パソコンからテレビまで、いかに外部の技術を速く集めてマーケットに対応するかが、競争の軸になったのです。お客のニーズに応じて、とにかく素早く部品を集めて商品を組み立てることが、求められるようになりました。

 もはや、商品の機能といったハードで差別化することは困難になり、スピードこそが重要な時代になりました。


バックナンバー>>一覧

関連記事

コメント

参考度
お薦め度
投票結果

コメントを書く

コメント[0件]

記事を探す

読みましたか〜読者注目の記事