【ニューヨーク=秋山裕之】訪米中の安倍晋三首相は26日午後(日本時間27日未明)、国連総会一般討論演説で、女性の保健医療や紛争下での権利保護などに3年間で30億ドル(約3000億円)超の政府開発援助(ODA)を供与すると表明した。自らの責務について「日本経済を立て直す。そのうえで日本を世界に善をなす、頼れる力にすることだ」と説明。「日本はこれまで以上に平和と安定の力となる」と積極的平和主義の旗を掲げた。
演説のほぼ半分を女性の支援や社会での活用についての言及に充てた。「日本でも紛争下の地域、貧困に悩む国々でも女性が輝く社会をもたらしたい」と力説。ODAを供与する女性への支援として(1)社会進出や能力開発(2)母子保健などの保健医療(3)紛争下の権利保護と平和構築のプロセスへの参画――の3本柱を打ち出した。
日本国内で社会に女性の活躍の場を充実させることも「焦眉の課題」と強調。経済成長率は「女性の社会進出を促せば促すだけ高くなる」と説明した。
首相が掲げる積極的平和主義は「国際社会との協調を柱としつつ世界に繁栄と平和をもたらすべく努めた我が国の実績や評価が土台」と説明した。国連平和維持活動(PKO)を始め国連の集団安全保障措置に一層積極的に参加すると表明した。
全体的に中国を意識した発言は抑えるが、東シナ海などでの活発な動きを念頭に「海洋秩序の力による変更は到底許すことができない」と指摘。「宇宙やサイバー空間、空、海の公共空間を法と規則のすべる公共財としてよく保つことは我が国に多大の期待がかかる課題だ」と述べた。
シリアの化学兵器をめぐっては「廃棄に向けた国際社会の努力に徹底的な支持とあたうる限りの協力を表明する」と述べ、新たに6000万ドル相当の人道支援を発表した。イランの核開発問題に関して「我が国は解決に向け、引き続き役割を担う用意がある」と呼びかけた。
北朝鮮の核・ミサイル開発については「許されざることだ」と主張。日本人拉致問題に関して「自分が政権にいるうちに完全に解決する決意だ」と訴えた。
国連安全保障理事会をめぐり「70年前の現実を映す姿のまま凍結されている事実は遺憾だ」と表明。「我が国は常任理事国となる意欲にいささかも変わるところがない」と強調した。
安倍晋三、ODA