平成25年5月4日
安倍晋三内閣総理大臣は,4月30日(日曜日)から5月3日(金曜日)まで,サウジアラビア(ジッダ),アラブ首長国連邦(アブダビ及びドバイ),トルコ(アンカラ)を訪問したところ,概要は以下のとおり。
1.訪問日程
(1)サウジアラビア(4月30日及び5月1日)
サルマン皇太子兼副首相兼国防大臣との会談・晩餐,アブドッラー国王との電話会談,日サウジアラビア投資協定署名の立ち会い,キング・アブドルアジーズ大学での中東政策演説,同行経済ミッションとの懇談等。
(2)アラブ首長国連邦(5月1日及び5月2日)
ムハンマド・アブダビ皇太子との会談・晩餐,日UAEビジネス・フォーラムへの出席,ドバイ・メトロ視察,ムハンマドUAE副大統領兼首相との会談・午餐,日UAE租税条約及び日UAE原子力協定等の署名式への立ち会い等。
(3)トルコ(5月2日及び5月3日)
日トルコ合同経済委員会への出席,アタテュルク廟への献花,土日(とにち)基金文化センター訪問,エルドアン首相との首脳会談,内外記者会見,両国首脳と両国経済人を交えた会合,署名式,共同記者発表,晩餐等。
2.全体概要と評価
(1)今回の訪問のねらいと特徴
(ア)今回の中東訪問のねらいは,石油の売買といった従来の資源・エネルギーを中心とする関係を超えて,幅広い分野での経済面での協力,更には政治・安全保障,文化・人的交流といった多層的な関係にしていくこと。こうしたねらいの下,サウジアラビアで行った我が国総理として初めての中東政策演説において,我が国と中東地域の関係を「安定と繁栄に向けた包括的パートナーシップ」に向けて抜本的に強化していくことを宣言。安倍政権の中東重視を対外的にアピールするとともに,中東諸国との間の包括的・重層的な関係を築く転機となった。
(イ)今回の訪問の最大の特徴は,農業・医療分野を含め,我が国経済界を代表する,総勢100名を超える最大・最強の経済ミッションが同行したこと。ハイレベルで我が国の「強み」をしっかりと売り込み,本格的な経済外交をスタートできた。
(2)安定と繁栄に向けた包括的パートナーシップ
(ア)中東地域の安定に向けた貢献「協働」
政治・安全保障面での協力。中東地域の安定は,我が国の安全保障にも資することから,我が国は,テロ対策・治安,地域安定化や民主化支援といった協力により,地域の安定に向けて,一層の政治的役割を果たしていく。この目的のため,我が国は,中東・北アフリカ地域に対し,新たに総額22億ドル規模の支援を行うことを発表。また,今回の訪問では,サウジアラビアとUAEとは安全保障対話を新設,トルコとは外相定期協議を新設することで一致。
(イ)経済関係の拡大・深化「共生と共栄」
経済関係の拡大・深化。中東地域の高い経済的潜在力は,我が国の成長に直結することから,エネルギーを中心とする枠を超えたつながりを作る。我が国の農産品や最高水準の医療機器や技術は相手国の「生活の質」の向上にもつながるものであり,同分野での協力を推進。今回の訪問中,企業間の協力に関する多くの文書が作成され,協力の歯車が動き出したことは大きな成果。原子力分野でも,我が国の最高水準の技術に強い関心が寄せられ,原子力協力に関する3つの協定に署名。
(ウ)文化・人的交流の強化「寛容と和」
文化・人的交流の強化。お互いの歴史・文化に対する理解と敬意をもって,人材育成や教育での協力を促進。具体的には,今後5年間,中東諸国と共に,約2万人の研修実施と専門家派遣を実施し,中東からの留学生受け入れ数も増やしていくことを発表。
3.各国での概要と成果
(1)サウジアラビア
サルマン皇太子兼副首相兼国防大臣との会談,アブドッラー国王との電話会談後,「日本とサウジアラビアとの間の包括的パートナーシップの強化に関する共同声明―エネジーからシナジーへ―」を発出(別添1)。各分野での具体的な成果は以下のとおり。
(ア)「協働」
二国間協力を政治・安全保障分野にも拡大し,ハイレベル政策対話の促進,安全保障対話の新設や防衛交流の進展,国際テロ情勢に関する対話と交流の促進で一致。
(イ)「共生と共栄」
安倍総理より,石油の安定供給を要請し,我が国としても省エネ・再生可能エネ・原子力等の分野で貢献が可能である旨言及し,双方向のエネルギー協力を行うことで一致したほか,原子力協力に関する事務レベル協議を進めることで一致。また,双方は,日サウジ産業タスクフォースの進展を歓迎しつつ,エネルギーのみならず,インフラ開発,医療協力等で協力することで一致。安倍総理より,JICAによるコストシェア技術協力の新スキーム立ち上げを紹介し,双方は,産業・人材育成を強化することで一致。日サウジアラビア投資協定に署名。
(ウ)「寛容と和」
我が国へのサウジ人留学生の増加を歓迎しつつ,若い世代の人材育成の重要性,教育協力,人的交流,知的対話の強化で一致。
(2)アラブ首長国連邦
ムハンマド・アブダビ皇太子との会談,ムハンマドUAE副大統領兼首相との会談後,「日本とアラブ首長国連邦との間の安定と繁栄に向けた包括的パートナーシップの強化に関する共同声明」とともに,同パートナーシップに関するファクトシート及び協力覚書一覧を発出(別添2)。各分野での具体的な成果は以下のとおり。
(ア)「協働」
双方は,外交当局間のハイレベル協議を高頻度で実施し,外交・防衛当局間の安全保障対話を次官級/局長級で実施することで一致。
(イ)「共生と共栄」
安倍総理より,エネルギーの安定供給を要請し,我が国としても省エネ・再生可能エネ・原子力等の分野で貢献が可能である旨言及し,双方向のエネルギー協力を行うことで一致。また,双方は,エネルギーのみならず,インフラ開発,医療協力等で協力することで一致。安倍総理より,JICAによるコストシェア技術協力の新スキーム立ち上げを紹介し,双方は,産業・人材育成を強化することで一致。安倍総理より,日本産食品の輸入規制の更なる緩和を要請したところ,先方からは,前向きに更なる緩和を検討したい旨応答。日UAE租税条約及び日UAE原子力協定に署名。また,企業等による数多くの協力覚書を作成。
(ウ)「寛容と和」
安倍総理より,今後5年間で500人のUAE人留学生を受け入れる旨述べ,双方は,教育協力,人的交流を強化することで一致。安倍総理は,外交・公用旅券所持者に対する査証相互免除と観光目的等の一般旅券所持者を対象とした数次査証の付与措置の導入を決定した旨述べたところ,先方からは高い評価が示された。
(3)トルコ
エルドアン首相との会談,両国首脳と両国の主要経済人を交えた会合の後,「日本国とトルコ共和国戦略的パートナーシップの構築に関する共同宣言」(別添3)への署名,原子力に関する2本の協定の署名原本の交換を行い,共同記者発表を実施。各分野での具体的な成果は以下のとおり。
(ア)「協働」
首脳間のより頻繁な会談,外相間の定期協議の立ち上げ,外務当局を始め,財務,保健,教育,文化,防衛,治安,防災分野での協議,対話,協力を進めることで一致。シリアを始めとする地域の平和及び安定に向けた諸課題及びテロとの闘い,軍縮・不拡散,第三国に対する援助といった国際場裡での協力を強化していくことで一致。
(イ)「共生と共栄」
両国間の貿易・投資を促進し,両国の経済関係を更に高いレベルに引き上げること,この関連で,日トルコEPA交渉の将来の妥結に向けたプロセスを進めることで一致。原子力分野について2本の協定に署名し,トルコのシノップ原子力発電所プロジェクトについて日本が排他的交渉権を獲得。通信放送衛星事業,病院事業,ボスポラス海峡横断地下鉄,イズミット湾横断道路橋の受注を始めとする各分野でも日本企業のトルコでのプロジェクトへの参加や投資等の協力が進んでいることを歓迎し,今後ともこれらの分野で日本が更に貢献していくことへの期待を表明。
(ウ)「寛容と和」
我が国の円借款の制度改善も活用した防災分野での協力,科学技術に関する大学の日トルコ共同での設立を含む科学技術分野での協力,宇宙分野での協力等を進めていくことで一致。
1.訪問日程
(1)サウジアラビア(4月30日及び5月1日)
サルマン皇太子兼副首相兼国防大臣との会談・晩餐,アブドッラー国王との電話会談,日サウジアラビア投資協定署名の立ち会い,キング・アブドルアジーズ大学での中東政策演説,同行経済ミッションとの懇談等。
(2)アラブ首長国連邦(5月1日及び5月2日)
ムハンマド・アブダビ皇太子との会談・晩餐,日UAEビジネス・フォーラムへの出席,ドバイ・メトロ視察,ムハンマドUAE副大統領兼首相との会談・午餐,日UAE租税条約及び日UAE原子力協定等の署名式への立ち会い等。
(3)トルコ(5月2日及び5月3日)
日トルコ合同経済委員会への出席,アタテュルク廟への献花,土日(とにち)基金文化センター訪問,エルドアン首相との首脳会談,内外記者会見,両国首脳と両国経済人を交えた会合,署名式,共同記者発表,晩餐等。
2.全体概要と評価
(1)今回の訪問のねらいと特徴
(ア)今回の中東訪問のねらいは,石油の売買といった従来の資源・エネルギーを中心とする関係を超えて,幅広い分野での経済面での協力,更には政治・安全保障,文化・人的交流といった多層的な関係にしていくこと。こうしたねらいの下,サウジアラビアで行った我が国総理として初めての中東政策演説において,我が国と中東地域の関係を「安定と繁栄に向けた包括的パートナーシップ」に向けて抜本的に強化していくことを宣言。安倍政権の中東重視を対外的にアピールするとともに,中東諸国との間の包括的・重層的な関係を築く転機となった。
(イ)今回の訪問の最大の特徴は,農業・医療分野を含め,我が国経済界を代表する,総勢100名を超える最大・最強の経済ミッションが同行したこと。ハイレベルで我が国の「強み」をしっかりと売り込み,本格的な経済外交をスタートできた。
(2)安定と繁栄に向けた包括的パートナーシップ
(ア)中東地域の安定に向けた貢献「協働」
政治・安全保障面での協力。中東地域の安定は,我が国の安全保障にも資することから,我が国は,テロ対策・治安,地域安定化や民主化支援といった協力により,地域の安定に向けて,一層の政治的役割を果たしていく。この目的のため,我が国は,中東・北アフリカ地域に対し,新たに総額22億ドル規模の支援を行うことを発表。また,今回の訪問では,サウジアラビアとUAEとは安全保障対話を新設,トルコとは外相定期協議を新設することで一致。
(イ)経済関係の拡大・深化「共生と共栄」
経済関係の拡大・深化。中東地域の高い経済的潜在力は,我が国の成長に直結することから,エネルギーを中心とする枠を超えたつながりを作る。我が国の農産品や最高水準の医療機器や技術は相手国の「生活の質」の向上にもつながるものであり,同分野での協力を推進。今回の訪問中,企業間の協力に関する多くの文書が作成され,協力の歯車が動き出したことは大きな成果。原子力分野でも,我が国の最高水準の技術に強い関心が寄せられ,原子力協力に関する3つの協定に署名。
(ウ)文化・人的交流の強化「寛容と和」
文化・人的交流の強化。お互いの歴史・文化に対する理解と敬意をもって,人材育成や教育での協力を促進。具体的には,今後5年間,中東諸国と共に,約2万人の研修実施と専門家派遣を実施し,中東からの留学生受け入れ数も増やしていくことを発表。
3.各国での概要と成果
(1)サウジアラビア
サルマン皇太子兼副首相兼国防大臣との会談,アブドッラー国王との電話会談後,「日本とサウジアラビアとの間の包括的パートナーシップの強化に関する共同声明―エネジーからシナジーへ―」を発出(別添1)。各分野での具体的な成果は以下のとおり。
(ア)「協働」
二国間協力を政治・安全保障分野にも拡大し,ハイレベル政策対話の促進,安全保障対話の新設や防衛交流の進展,国際テロ情勢に関する対話と交流の促進で一致。
(イ)「共生と共栄」
安倍総理より,石油の安定供給を要請し,我が国としても省エネ・再生可能エネ・原子力等の分野で貢献が可能である旨言及し,双方向のエネルギー協力を行うことで一致したほか,原子力協力に関する事務レベル協議を進めることで一致。また,双方は,日サウジ産業タスクフォースの進展を歓迎しつつ,エネルギーのみならず,インフラ開発,医療協力等で協力することで一致。安倍総理より,JICAによるコストシェア技術協力の新スキーム立ち上げを紹介し,双方は,産業・人材育成を強化することで一致。日サウジアラビア投資協定に署名。
(ウ)「寛容と和」
我が国へのサウジ人留学生の増加を歓迎しつつ,若い世代の人材育成の重要性,教育協力,人的交流,知的対話の強化で一致。
(2)アラブ首長国連邦
ムハンマド・アブダビ皇太子との会談,ムハンマドUAE副大統領兼首相との会談後,「日本とアラブ首長国連邦との間の安定と繁栄に向けた包括的パートナーシップの強化に関する共同声明」とともに,同パートナーシップに関するファクトシート及び協力覚書一覧を発出(別添2)。各分野での具体的な成果は以下のとおり。
(ア)「協働」
双方は,外交当局間のハイレベル協議を高頻度で実施し,外交・防衛当局間の安全保障対話を次官級/局長級で実施することで一致。
(イ)「共生と共栄」
安倍総理より,エネルギーの安定供給を要請し,我が国としても省エネ・再生可能エネ・原子力等の分野で貢献が可能である旨言及し,双方向のエネルギー協力を行うことで一致。また,双方は,エネルギーのみならず,インフラ開発,医療協力等で協力することで一致。安倍総理より,JICAによるコストシェア技術協力の新スキーム立ち上げを紹介し,双方は,産業・人材育成を強化することで一致。安倍総理より,日本産食品の輸入規制の更なる緩和を要請したところ,先方からは,前向きに更なる緩和を検討したい旨応答。日UAE租税条約及び日UAE原子力協定に署名。また,企業等による数多くの協力覚書を作成。
(ウ)「寛容と和」
安倍総理より,今後5年間で500人のUAE人留学生を受け入れる旨述べ,双方は,教育協力,人的交流を強化することで一致。安倍総理は,外交・公用旅券所持者に対する査証相互免除と観光目的等の一般旅券所持者を対象とした数次査証の付与措置の導入を決定した旨述べたところ,先方からは高い評価が示された。
(3)トルコ
エルドアン首相との会談,両国首脳と両国の主要経済人を交えた会合の後,「日本国とトルコ共和国戦略的パートナーシップの構築に関する共同宣言」(別添3)への署名,原子力に関する2本の協定の署名原本の交換を行い,共同記者発表を実施。各分野での具体的な成果は以下のとおり。
(ア)「協働」
首脳間のより頻繁な会談,外相間の定期協議の立ち上げ,外務当局を始め,財務,保健,教育,文化,防衛,治安,防災分野での協議,対話,協力を進めることで一致。シリアを始めとする地域の平和及び安定に向けた諸課題及びテロとの闘い,軍縮・不拡散,第三国に対する援助といった国際場裡での協力を強化していくことで一致。
(イ)「共生と共栄」
両国間の貿易・投資を促進し,両国の経済関係を更に高いレベルに引き上げること,この関連で,日トルコEPA交渉の将来の妥結に向けたプロセスを進めることで一致。原子力分野について2本の協定に署名し,トルコのシノップ原子力発電所プロジェクトについて日本が排他的交渉権を獲得。通信放送衛星事業,病院事業,ボスポラス海峡横断地下鉄,イズミット湾横断道路橋の受注を始めとする各分野でも日本企業のトルコでのプロジェクトへの参加や投資等の協力が進んでいることを歓迎し,今後ともこれらの分野で日本が更に貢献していくことへの期待を表明。
(ウ)「寛容と和」
我が国の円借款の制度改善も活用した防災分野での協力,科学技術に関する大学の日トルコ共同での設立を含む科学技術分野での協力,宇宙分野での協力等を進めていくことで一致。
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