【北京=阿部哲也】中国が国営メディアを通じて日産自動車や独フォルクスワーゲン(VW)など海外自動車大手の批判キャンペーンを始めた。国営中央テレビ(CCTV)が15日夜の特別番組で「日産やVWの修理対応には問題がある」と批判した。同番組は例年ほかの中国メディアも追随する一大批判キャンペーンの起点になっており、海外自動車各社の中国ビジネスに悪影響が及ぶ可能性が出てきた。
「(日産の中国合弁会社である)東風日産の修理対応は故障を誇張し、暴利をむさぼるずさんなものでした」。毎年3月15日の「世界消費者権利デー」にあわせて放送する「3.15晩会」。今年の目玉になったのが、日産やVWの系列販売店の修理対応だ。
CCTVは隠し撮りを交えて各社の対応不備を批判した。東風日産の場合は取材班が故意にプラグを外して持ち込むと、部品の交換が必要だとして法外な修理費を要求されたという。VWや独ダイムラーの高級車「メルセデス・ベンツ」の販売店も同様の「修理費水増し請求」を繰り返していたとして批判した。
「3.15晩会」は春節(旧正月)の歌合戦番組に次いで視聴率が高いとされ、影響力は絶大だ。1991年の放送開始以来「消費者保護」を合言葉に、悪質企業を批判する「調査報道」番組として人気を集めてきた。だが最近は品質やサービスに問題があるとする外資企業を大々的に暴く「外資たたきショー」の様相を強めており、行き過ぎた演出も目立つ。
昨年はニコンのデジタルカメラがやり玉に挙げられた。撮影した写真に黒い粒状の像が映り込むとし、ニコンのサービス担当者の対応などを隠し撮りして保証の不備を指摘した。その後、中国の品質当局も該当製品の販売停止を命じ、ニコンは大規模な修理対応に追われる事態に発展した。
2013年には米アップルの保証サービスが欧米に比べ見劣りしているとして問題となり、ティム・クック最高経営責任者(CEO)が謝罪に追い込まれた。10年には米ヒューレット・パッカード(HP)のノートパソコンの品質が批判され、直後にシェアが急減した。毎年のように外資の著名企業が批判の矢面に立たされてきた。
番組には最高人民法院や最高人民検察院も協力しており、外資による不正への監視を強める習近平指導部の意向が強く働いているとされる。13年のアップルに対する批判はサイバー攻撃を巡る米中の応酬が激しさを増していた最中に広がった。番組には政治的な思惑もつきまとう。
「テレビ局から3.15で放送されたくなければ、十数万元よこせと要求された。流したいなら流せばいいと言ってやった」。全国人民代表大会(全人代)では飲料水大手の娃哈哈集団の宗慶後董事長がこう「暴露」し、話題を集めた。中国企業からも「やり過ぎだ」との批判が増えている。
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