海賊版「トンチャモン」から20年……韓国でも大人気『ドラえもん』の知られざる過去
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『STAND BY ME ドラえもん』(ポニーキャニオン)
「ドラえもんとピカチュウ、どちらが強いか?」。日本の小学生が放課後に盛り上がるような談義を展開したのが韓国の俳優と聞くとビックリだが、日本の国民的キャラクターがここまで浸透しているのはうれしいところではある。
韓国の人気ラジオ番組SBSラジオパワーFM『2時脱出カルトショー』3月6日放送分にて繰り広げられたこのトーク。“ドラえもん推し”だった俳優シム・ヒョンタクは、日本人にはあまりピンとこないが、昨年、一人暮らしの有名人を追うMBSのドキュメンタリー番組『私は一人で暮らす』でガンダムやスーパーマリオ、アメコミなどのフィギュアやプラモデルで埋め尽くされた自宅を公開。そのオタクっぷりをカミングアウトした。中でもドラえもん関連グッズが断トツで多く、韓国では“オタク”を名前にかけて、「シムタク」と呼ばれているほど。有名芸能人にもこれだけの熱烈ファンがいるドラえもんは、韓国でどのように人気を獲得したのか?
昨年、藤子・F・不二雄生誕80周年を記念し製作された、初の3DCGアニメ映画『STAND BY MEドラえもん』。韓国では今年2月12日に封切られ、すでに1カ月が経過。ちなみに“シムタク”がオフィシャル宣伝員として公開イベントに出席し、HPでもさまざまなコンテンツを担当している。最高順位は5位、累計観客動員数は40万人(3月11日現在)を超えた。
そもそも韓国でドラえもんは、1995年に韓国の漫画雑誌「パンパン」がライセンス契約を結び、連載を開始。テレビアニメはMBCにて01年にスタートしたが人気は得られず、途中終了。が、06年よりケーブルテレビにて再スタートを切り、現在でも放映が続いているほど確かな人気を獲得している。
しかし、実は80年代からドラえもんは韓国に存在していたという、都市伝説のような実話がある。当時の韓国では、歴史的背景から日本の大衆文化の流入が規制されていた。それでも、「ドラえもんを見てほしい」と誰かが思ったのだろう。その方法は海賊版という、ドラえもんのひみつ道具にもないような荒業だった。ドラえもんは“トンチャモン(背が低く丸い)”という韓国仕様の名前で、韓国国民に初お披露目となった。
「日本文化の流入規制」は、漫画をはじめ、映画、音楽などエンタメ全般にかけられていたが、98年の第一次開放として解禁されたのが漫画だった。現在では、音楽も映画も全面解禁されているが、例えば映画は、99年の第二次開放までは“公認された国際映画祭受賞作品限定”などの条件付きの公開だった。映画が全面解禁になったのは04年の第四次開放からで、わりと最近の話である。
海賊版のトンチャモンから数えると、認識されて20年がたとうとしている韓国のドラえもん。今回、子どもにせがまれ劇場に足を運んだ韓国のお父さんたちは、「トンチャモンって名前変わったのか?」と首をかしげているかもしれない。いずれにせよ、規制の歴史を乗り越えた“ドラえもん”人気が今後も韓国で高まることは間違いないだろう。
(取材・文=梅田ナリフミ)
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