【報道ウォッチ35】 鳩山元総理のクリミア訪問
2015年3月15日 13:09
●クリミア訪問でひとつの論調しか見えない
鳩山元総理のクリミア訪問について一つの論調しか見えてこない。政府から評論家に至るまで「政府の制止を顧みずにクリミアへ行ったことは国益を大きく損なう行為」「日本国の総理経験者としてあるまじき行為」という論調ばかりだ。
●なぜ?と思わないか
驚くべきことだと思う。鳩山元総理の意図を探る視点、つまり「なぜ鳩山氏は大きな批判を覚悟してまでクリミアへ行ったのか?」という視点の報道が見つけにくい。これまでの中国訪問中の尖閣問題に関する発言、そしてイラン訪問中の核査察問題に関する発言を経て尋常ならざる批判を受けてきた鳩山元総理だからご存じないはずはない。クリミアへ行くだけでメディアとそのメディアの報道に影響される世論から再び大きなバッシングを受けることを。それでもなぜ断行したのか。不思議に思うのが自然だ。「なぜ敢えて行ったのか?」みなさんはどう思われるだろうか。
●明確な意図がなければできない
自分自身も原発問題等で厳しい批判を経験した。特に身近な者や強い支持者からの批判は辛い。それが元総理であればインパクトは計り知れない。波状の人格攻撃は厳しい。だからしばしばメット上で散見されるような「目立ちたいから」や「KY外交」などの揶揄はあたらない。そんな呑気な理由でやれることではない。そうした視点を一度自分の体験と仮定して想像いただきたい。明確な意図がなければできない。
●レアメタルの専門家がクリミア訪問を論考
どんな意図なのかについて、レアメタル専門家の意見がネット(東洋経済オンラインに)で掲載されている。
『鳩山由紀夫元首相は、宇宙人か馬鹿か天才か』
クリミア半島での「無謀な行動」を分析する
筆者は中村 繁夫氏(アドバンストマテリアルジャパン代表取締役社長)。
ぜひ一読いただきたい。 記事はこちら
●一見狂っているようだが当たり前の意見
レアメタル商社を経営し、2月にはモスクワを商談で訪れた筆者はロシア人の意見も聴きながら次のように述べている。
『NATO加盟国以外の世界の世論は、中立の立場である。中立の立場とは「米国の意見も聞くし、ロシアの意見も聞く」という、子供でもわかる理屈である。一見狂ったように見える由紀夫氏の考え方は「ロシアの意見も聞く」という当たり前の意見を言っているにすぎない。』
●友好条約と天然ガスとシベリア開発
また筆者は「鳩山元総理を非難する人々こそが日本の国益を損なっている」という主旨(平解釈)の視点を次のように述べている。
『専門家はお見通しだが、プーチン大統領は日露平和友好条約の締結とサハリンの天然ガスの共同開発とシベリア開発を心から推進したいと考えている。これまでも何度となく日本政府にラブコールを投げかけているのに、私から言わせれば、日本の「洗脳されたロシア性悪説論者」が邪魔をしているのだ。早い話が今回の由紀夫氏を貶めようとしている面々とも言える。』
●反米も対米従属もちがう、という立場
さて、この記事の筆者と私の共通点は「米国が好き」という点だ。反原発と反米がセットになっている方々もおられる(そしてそれはひとつの見識だ)が私は米国好きで原発反対だという点を集会でも述べてきたし拙著にも書いてきた。単純にすべてをワンセットにして、それ以外は間違いだと断じる姿勢があるとすればそれは民主的ではない。私はかねがね「反米は有益ではないが同時に対米従属もリスキーだ。外交において日本はひとつの姿勢に偏るリスクを取るべきでない。」という主旨のことを言ってきた。同じことを筆者が次のように書いている。
『誤解のないようにいっておくが、私は米国が好きだ。だが、一方で、対米一辺倒型で万事うまくいくほど、外交は簡単ではない。米国一辺倒では得られるものは極めて少ないのもまた事実なのである。新興国を中心にレアメタルビジネスを展開している筆者だからこそ、声を大にして訴えたいのだ。』
●米国が好きな人
そして鳩山元総理もまた米国が好きな人物だろうと思う。そもそも母校が米国のスタンフォード大であり、当校のフットボールチームがローズボール(全米大学No1決定戦)に出場することを嬉しそうにお話なるのを直接聞いたことがある。クリミアを訪問するのは鳩山元総理にとって反米的行為ではなく、むしろ親米派の鳩山氏による日米露の架け橋の意味や可能性も考えたい。