心理学講師Tania Luna(タニア・ルナ)氏は幼い頃、1つのガムを回し食べするなど、今では考えられないような貧しい体験をしていました。貧しさの中で彼女が感じた、お金で買うことのできない「大富豪のような気持ち」とは?(TED2013より)
【スピーカー】
Surprise Industries 共同設立者・CEO/心理学講師 Tania Luna(タニア・ルナ)氏
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How a penny made me feel like a millionaire
ウクライナでの生活
タニア・ルナ氏:5歳の私は得意になっていました。父がウクライナの小さな村で1番立派な屋外トイレを建てたからです。
中は臭いし地面にただ穴を掘っただけなのですが、フォーマイカを塗った外壁はまっ白な真珠色で、太陽に照らされ文字通り輝いていました。
私は非常に鼻高々で、とても偉くなったような気がしていました。仲間内の小さなグループのリーダーになり、いろいろなミッションを考えました。家から家を渡り歩いてはクモの巣にからめとられたハエを発見し、放してやってみたりしました。
その4年前私が1歳のころ、チェルノブイリの原発事故後に黒い雨が降りました。姉の毛髪は束になって抜け落ち、私は9か月入院しました。面会謝絶だったので母は病院の従業員にワイロを渡し、毎晩そっと忍び込んでは私のそばに付き添ってくれたのです。
1つのガムをみんなで食べた
5年後、思いがけない希望の光が見えました。チェルノブイリ事故のおかげで、私たちにアメリカへの避難が認められることになったのです。私は6歳でした。祖国を離れ、アメリカに来る時も泣きませんでした。
なぜなら「アメリカはバナナやチョコレート、バズーカバブルガムのような珍しくて素晴らしい物がたくさんある所だ」と思っていたからです。
バズーカバブルガムとは、小さなマンガつきの包み紙で包まれたチューインガムのことです。ウクライナでは年に数回ほど手に入り、みんなで1つのガムを1週間大事に噛んで回しました。
夢の国アメリカ
ニューヨークに到着した初日、私と祖母は滞在することになったホームレスのシェルターの床に、1セント貨幣を見つけました。―ただし私たちはその当時、そこがホームレスのシェルターだとは知りませんでした。ネズミがたくさんいるホテルなのだと思っていました。
床にベタッと貼りついたそのコインを見て私たちは、「大金持ちが落とした物に違いない」と考えました。普通の人がお金を落とすなどということは、まず考えられなかったからです。
私はベタついて錆びた1セント玉を手の平にのせて、「すばらしい財産を手に入れた」と思い、「自分だけのバズーカバブルガムを買おう」と決めました。その瞬間私は、大富豪にでもなったかのように感じたのです。
1年後、私に再びあの感覚が訪れました。ゴミ捨て場で、ぬいぐるみがたくさん入った、ゴミ袋を見つけたのです。かつてないほどの大量のおもちゃが、私の物になりました。
貧しさを知らなかった
そしてその感覚は、ブルックリンのアパートのドアがノックされた時再び訪れました。姉と私がドアを開けると、配達員が注文した覚えのないピザの箱を持って立っていました。私たちはピザを受け取り、生まれて初めてピザを食べたのです。配達員が玄関に立ち、呆然と見ている目の前でガツガツと食べました。
配達員は代金を払うように言いましたが、私たちには英語がわかりませんでした。母が出て来たので配達員は支払いを求めましたが、母には代金を支払えるほどのお金はありませんでした。バス代節約のために、50ブロックを徒歩で通勤していたほどでしたから。
そこへ近所の人が顔を出し、どうやら下の階に住んでいる移民が彼女のピザを食べてしまったらしいと知り、顔を真っ赤にして怒り出しました。周りの大人は、みなカンカンに怒っていましたが、ピザはおいしかったです。
(会場笑)
自分たちがどれほど貧しかったかを理解したのは、何年も経った後でした。アメリカに来て最初に泊まったあのホテルを予約し、渡米10周年のお祝いをしようとしたところ、受付の男性が笑って、「予約はできないよ。ホームレス・シェルターだからね」と言ったのです。そこで私たちははじめて、ショックを受けたのでした。
宝物が夢をあきらめないための励みとなった
私の夫、ブライアンもまた、幼少期にホームレスを経験しました。彼の家族は全財産を失い、彼は11歳の時に父と共にモーテルに住むことを余儀なくされました。そのモーテルは、宿泊代金を支払うまでの担保として食料品を取り上げる方針でした。
ある時コーンフレークひと箱をやっと返してもらうことができましたが、それはゴキブリの巣になっていました。
しかし彼にはたった1つだけ所有物がありました。彼は肌身離さず、靴箱を1つ持ち歩きました。中身はマンガ本9冊、スパイダーマンのペイントを施したG.I.ジョーが2体、ロボットが5体です。これが彼の宝物でした。彼のヒーロー戦隊は、ドラッグや、不良たちから彼を守り、夢をあきらめないための励みとなりました。
「大富豪」のような生活
もう1人、我が家の元ホームレスを紹介します。スカーレットです。
彼女は闘犬の「噛ませ犬」でした。戦いの前に犬たちの闘争心をかきたてるため、繋がれたまま、犬の輪の中に投げ入れられていたのです。オーガニック食品を食べ、名前入りの整形外科用ベッドに寝ている今でも彼女は、ボウルに水を注いであげるだけで私たちを見上げ、感謝の気持ちを込めてしっぽを振ってくれます。
ブライアンと私がスカーレットを連れて公園を散歩すると、スカーレットは芝生に寝転びます。私たちはそんな彼女を眺め、お互いの顔を見て感謝の念を抱きます。初めて持つようになった中産階級としての悩みや挫折を忘れ、大富豪になったように感じるのです。ありがとうございました。
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