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人口約20人の小さな村で暮らす高木正勝、「見えるもの」の発見
- 文:杉原環樹
- インタビュー:川上シュン 取材テキスト:横塚美穂 撮影:橋本清明
- (2015/03/13)
テクノロジーを用いて生命の秘密を探求し、それを医療の現場に役立ててきた企業による、とてもユニークな音楽プロジェクトがあるのをご存知だろうか? その名も、『10 SOUNDS OF LIFE SCIENCE』。生物の性質を活かして生活に応用する「バイオテクノロジー」の分野で挑戦的な試みを続けてきた、研究開発型ライフサイエンス企業「協和発酵キリン株式会社」のウェブプロジェクトだ。進行形の医療の発想と音楽の創造との間にある、未知のつながりを探るかのようなこの刺激的な試みの第9弾の成果として、2月27日より、映像作家・音楽家である高木正勝の楽曲“Cosmos Piano - for 10 SOUNDS OF LIFE SCIENCE Ver.”が公開されている。
現在、山に囲まれた人口約20人の小さな村で暮らす高木。生まれ故郷の新興住宅地を離れやってきた、その土地で彼が感じる「旅先」のような感覚とはどのようなものか。そしてそこに見出される、彼の音楽観と先端医療の共通性とは?
高木正勝(たかぎ まさかつ)
1979年生まれ、京都出身。2013年より兵庫県在住。山深い谷間にて。長く親しんでいるピアノを用いた音楽、世界を旅しながら撮影した「動く絵画」のような映像、両方を手掛ける作家。美術館での展覧会や世界各地でのコンサートなど、分野に限定されない多様な活動を展開している。『おおかみこどもの雨と雪』やスタジオジブリを描いた『夢と狂気の王国』の映画音楽をはじめ、コラボレーションも多数。
Takagi Masakatsu - 高木 正勝
川上シュン(かわかみ しゅん)
1977年、東京都江東区深川生まれ。artless Inc. 代表。アートとデザインを基軸に、ブランディング、デザインコンサルティング、企業やブランドロゴ、映像、そして、建築まで、多様な専門知識や経験を持つスペシャリストと共に、ジャンルやカテゴリーに縛られない活動を続けている。ポンピドゥー・センター(パリ)、ルーブル宮内フランス国立装飾美術館、ミラノサローネ、TENT LONDON、BODW(香港)等、国内外でのフェスティバルやエキシビション、そして、カンファレンスにも多数参加し、グローバルな活躍が目覚ましい。
Shun Kawakami
artless Inc.
山奥に引っ越した音楽家と、耳慣れない「抗体医薬」の意外な共通点
協和発酵キリン株式会社によるウェブコンテンツ『10 SOUNDS OF LIFE SCIENCE』の内容は、シンプルだがとても贅沢。同社のコンセプトを10個の言葉で表現し、10組のミュージシャンにその言葉を基にした楽曲を制作してもらうというものである。ディレクションと参加ミュージシャンのキュレーションを務めたのは、artless Inc.の川上シュン。「バイオテクノロジー」をキーワードとして2014年10月15日に配信が開始された渋谷慶一郎の “Heavenly Puss - for 10 SOUNDS OF LIFE SCIENCE Ver.”を皮切りに、これまでJEMAPUR、DJ KAWASAKI、Open Reel Ensemble、i-depなど個性豊かな顔ぶれが楽曲を発表してきた。
企業のブランディング、それも一般の人々には馴染みが薄いバイオテクノロジーという分野の企業PRに、音楽という抽象性の高い表現媒体をあえて選んだ点が興味を引くのだが、そんな同プロジェクトの第9弾として、映像作家・音楽家の高木正勝による楽曲“Cosmos Piano - for 10 SOUNDS OF LIFE SCIENCE Ver.”と、制作を終えた彼へのインタビュー動画が公開されている。
音楽家としての音源発表はもちろん、アート分野でのビデオインスタレーションの制作、『おおかみこどもの雨と雪』(細田守監督、2013)やONWARD「組曲」などをはじめとする映画やCMへの楽曲提供など、多岐にわたる活動を展開してきた彼に今回与えられたキーワードは「抗体医薬」。人体の複雑な免疫システムを中心で支える抗体の働きに着目し、それを疾病治療に活かす注目の単語だが、一見して高木のイメージとはほど遠い。しかし両者には、実は身の周りの物事への感応力=解像度を高め、それを生活の豊かさにつなげようとする態度の共通性が見え隠れする。
「東京」でも「地方」でもない日本の大部分「新興住宅地」からの発見
ファンにとっては周知のことであるが、高木は現在、兵庫県の山間にある小さな村で毎日を送っている。震災以降の自身の意識の変化に忠実に、2013年夏に現在の住まいに越して以降、窓の外に山々の尾根が広がり、自然の存在が間近に感じられるその場所で、音楽を作り、初学者として畑を耕し、多くは高齢者である近隣の人々と交流してきた。その生活のスケッチは、2014年11月に発表した2年ぶりの音源『かがやき』にも収められている。
高木はもともと、生まれ故郷でもある京都の亀岡市にスタジオを構えていた。そのため、従来から東京中心の音楽シーンとは距離を保っているミュージシャンとの印象が共有されていたのだが、「東京」対「地方」という構図からは見落とされてしまう土地の差異こそ、彼の近年の発見や驚きにとっては重要だったのだろう。亀岡という「新興住宅地」にはなかった「旅先」でのような鋭敏な感覚が、新たな環境では感じられたからだ。
杉原環樹
1984年東京都生まれ。ライター・編集。武蔵野美術大学大学院造形理論・美術史コース修了。自身での執筆のほか、雑誌や単行本を舞台に、インタビューによる聞き書きや他者の文章のリライトなど、いわゆる「構成」の領域に力を入れて活動中。お仕事をお待ちしております。
tmksghr@gmail.com