北陸新幹線の長野―金沢間がきのう開業した。1960年代の構想浮上から半世紀を経て北陸と首都圏が一本で結ばれた。

 沿線では、観光振興への期待が強い。古都・金沢を抱える石川県は首都圏からの観光客を今年、500万人に倍増させるとの目標を掲げている。

 開業を見越し、太平洋側の工場を北陸に移転する企業もある。YKKグループは東京の本社機能の一部を富山県黒部市に移した。

 地元の自治体や企業は、活気ある町づくりにつながるよう、この機会を生かしてほしい。

 ただ、新幹線の効果には限界もある。長野まで開業した97年、長野県では観光客が使った観光消費額が年間4271億円あったのに、13年は3149億円と4分の3に減っている。

 業界からは「日帰り客が増えた」と嘆く声があがる。

 新幹線は、あくまで高速移動のツールだ。地域の新たな魅力の創造や持続的な産業振興へと生かすには、息の長いとりくみが肝心だ。

 今回の開業で、並行するJR信越・北陸線は沿線4県の第三セクターに引き継がれた。3社が運賃を値上げし、富山―金沢間は1・25倍の1220円になった。東京が近くなっても日常の移動手段が細っては何にもならない。地域全体で三セクを支える努力が欠かせない。

 金沢開業で全国の新幹線網は2600キロを超えた。64年の東海道新幹線開業時の5倍強だ。

 来年3月には青森と北海道を結ぶ北海道新幹線が一部開業する。北陸新幹線も1月の政府・与党合意で、金沢―敦賀(福井県)間の開業が計画より3年早い22年度末になった。金沢―福井間は20年度に先行開業することも検討されている。ただ、列車の折り返し施設が必要で、新たに250億円かかるという。

 今後は、ルートが決まっていない敦賀―大阪間をどうするかも焦点になってきそうだ。

 新幹線の整備には巨額の建設費がかかる。今回の長野―金沢間は228キロで1兆7800億円を要した。その多くは国と沿線自治体の負担だ。

 政治家や地元経済界は「とにかく新幹線を」と叫びがちだ。だが人口減時代に入り、投資に見合う効果が本当に得られるのか。厳しく見極めるべきだ。

 国も地方も財政難は深刻で、少子高齢化に伴う社会保障費の増大ものしかかる。限られた財源をどう使うかは、国全体を見渡して考えていく必要がある。

 今回の開業を、そんな将来のことを考える機会にもしたい。