来春大学を卒業する学生への会社説明会が従来より3カ月遅れて3月から始まった。経団連が採用活動の自主ルールを見直したためだ。ただ2月までにインターンシップ(就業体験)の場で会社説明など事実上の採用活動をしていた企業もみられる。
新ルールは学生が勉学に割く時間を増やす狙いがある。だが早くから学生の就職活動が始まる実態が改善できているかは不透明だ。
各企業が特定の時期に集中的に選考をする「新卒一括」採用方式では、いったん選考に漏れると就職の機会が狭まってしまう。このため学生は後れを取るまいと懸命になる。学生の負担を減らすには企業が新卒一括の慣行にとらわれず、通年採用を併用するなど、採用を柔軟にすることが必要だ。
会社説明会の開始が後ろにずれたのに伴い、面接などの選考試験は4カ月遅い8月からになった。しかし民間の調査では、選考試験の解禁前に面接を始めるとしている企業もある。
全国の国公私立大学が加わる就職問題懇談会は、インターンシップでの実質的な選考活動や、選考の解禁前に内々定を出すことなどを慎むよう、大学側が企業に要請することを申し合わせた。採用活動が過熱している表れだろう。
好調な企業業績やグローバル競争の激化を背景に、企業の人材獲得意欲は高まっている。これが早い時期からの採用活動につながり、学生も就活に前倒しで動かざるを得ない状況を生んでいる。
新卒一括方式は企業が時期を絞って採用活動をすることで、コストを抑えられる利点がある。半面、優秀な学生の争奪戦は激しく、計画した人数を採りきれない場合もある。
学生が就職するチャンスを広げ、企業も優秀な人材を採る機会を増やせるよう、新卒一括に偏った採用方法を改めるときだ。企業は通年採用や既卒者、留学生の採用に積極的になるなど、採用方法の多様化が求められる。それぞれの企業が一歩踏み出してほしい。