原子力発電所から出る放射能の強い廃棄物、いわゆる核のごみの処分をどう進めるか。経済産業省が最終処分に向けた基本方針案をまとめた。政府は近く閣議決定をめざしている。
原発の使用済み核燃料は国内に約1万7千トンたまっており、それらをどうするかは待ったなしの課題だ。国と電力業界は再処理で生じた核のごみを地中深くに埋めることにしている。2002年に処分地選びを始めたが、名乗りを上げている自治体はない。
基本方針は処分地選びで国が前面に出ることを打ち出した。自治体の応募を待ついまの方式を改め、科学的に適性が高いとみられる場所を国が選ぶ。将来、新たな処分技術が開発される可能性をにらみ、廃棄物を埋めた後に回収できるようにする案も盛った。
これまで処分地選びを電力会社任せにし、難航してきたことを考えれば、国が前に出るのはもっともだ。だがそれで処分が進むかどうかは、なお不透明といえる。
核のごみの放射能が弱まるには数万年以上かかり、地震や火山が多い日本で安全に処分できるのか懸念する声がある。国は候補地を選ぶにあたり、根拠を明示して地元の不安に丁寧に応える責務がある。地域が処分場と共生できる方策を示すことも欠かせない。
日本学術会議は30年程度の一定期間、廃棄物を地上で暫定保管したうえで埋めるのが望ましいと提言した。原発から出る使用済み核燃料の総量を国などが管理することも求めている。
核のごみの処分は使用済み核燃料の再処理をどうするかなどエネルギー政策に深くかかわる。最終処分がなぜ必要か、開かれた場で議論し、国民の理解を得ることは必須だ。
基本方針では処分の主体は引き続き、電力業界が設けた原子力発電環境整備機構が担うとした。だが一筋縄ではいかない問題を、それで乗り越えられるのか。経産省だけでなく、政府が一丸となって取り組む体制も考えるべきだ。