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 論説 :  核のごみ最終処分/検討手法の見直しを
 原発から出る「核のごみ」の最終処分に関する基本方針の改定案を、経済産業省がまとめた。将来の政策変更や技術革新に応じて処分地や処分方法の見直しができる仕組みを取り入れることなどで、難航する処分地選びを加速させる狙いだ。

 改定案は「国は科学的に(最終処分地として)より適性が高いと考えられる地域を示す」と明記。これまで電力会社などがつくる原子力発電環境整備機構に候補地選びを任せていたことを反省し、国が処分地選定の前面に出る姿勢を示した。

 しかし、最終処分地の受け入れには住民の抵抗が極めて強い上、東京電力福島第1原発事故で原子力は市民の信頼を失っている。国が前面に出る姿勢を示しただけでは、簡単に物事が進まないだろう。

 本当に進展を望むなら、官僚による文章の小手先の手直しではなく、これまでの検討手法を根本的に見直し、ゼロからの再スタートを切ることが必要だ。

 原発で発電した後に出る使用済み核燃料には高レベルの放射性物質が含まれる。この核のごみは、数万年単位もの長期間にわたって自然環境や人間の健康に影響を及ぼさない形で処分することが求められる。

 しかし、地域で合意を得ることの困難さから、世界でもフィンランドとスウェーデン以外では最終処分地の場所は決まっていない。

 日本政府は2000年、最終処分に関する法律を定め、地下300メートルより深くに埋める「地層処分」の方針を決めた。02年から全国の市町村に候補地を公募する形を取っているが、実質的な進展は皆無だ。

 原発に依存し続ける限り、処分の見通しがない大量の放射性廃棄物が日本国内に積み上げられてゆく。日本の原発が「トイレ無きマンション」と批判されるゆえんだ。

 「科学的に有望な場所を国が前に出て示す」というのが新たな方針だが、重要なのは科学的な議論よりもむしろ、核のごみ問題をどう受け止め、処分地決定までの議論をどのように進め、合意にまでつなげるかという社会的な問題だろう。

 社会科学を含む科学者集団である日本学術会議は、国や電力会社、科学者への不信感が根強いため、国の押し付けでは合意は不可能だと指摘。電力会社が暫定保管施設を造って50年間地上で保管し、その間に国民の合意形成を図り、候補地の選定、処分場建設を進めるべきだとの提言案をまとめている。

 ごみ問題の進展がないままでの原発の再稼働は将来世代に無責任だという指摘や、脱原発の時期を決めることなどで生み出される廃棄物の総量を管理することが重要だとの指摘は傾聴に値すると思うが、政府にはこれを真摯(しんし)に受け止めようとの姿勢はみられない。

 国が前面に出ることで、核のごみの処分に関する電気事業者の責任がおろそかにされることへの懸念もある。

 まずは「排出者責任」の原則を明確にした上で、「一般の理解が進んでいない」として、一方的に廃棄物の処分問題への理解を求めようとする従来の姿勢を改め、社会にある多様な意見に耳を傾けることから始めるべきだろう。

('15/03/05 無断転載禁止)

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