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「核のごみ」処分 現世代で解決と言うが


 原発から出る高レベル放射性廃棄物「核のごみ」の最終処分で、経済産業省は政府基本方針の改定案を示した。3月末までに閣議決定する。

 ポイントの一つは、処分方法に選択肢を持たせたことだ。「再処理後」の地層処分を基本とするが、再処理を経ない「直接処分」に向けた調査研究の推進も明記した。国策の核燃料サイクル見直しに含みを持たせたと言える。

 時期については「将来世代に先送りせず、現世代の責任で地層処分を進める」とする一方、技術的問題や政策変更が将来あった場合は処分を中止し回収できると規定した。

 これらには、早期処分の見通しをつけて原発再稼働に対する批判を和らげようとする思惑や、自治体の受け入れハードルを下げようとする姿勢がうかがえる。

 だが、選定が難しいことに変わりはない。無害化まで何万年もの期間が必要とされる「核のごみ」。原発保有国の中で処分場が決まっているのは岩盤が強固な北欧の2カ国だけだ。世界有数の地震国、火山国で適地を見つけることは容易ではあるまい。

 地層処分をめぐっては、本県でも過去に取りざたされたことがある。動力炉・核燃料開発事業団(現日本原子力研究開発機構)が、北上高地や沿岸部で地質環境調査を実施。釜石市では地下研究施設誘致計画が持ち上がったが、白紙に戻っている。

 約10年前には、原子力機構による遠野市でのボーリング調査計画が波紋を呼んだ。同市と県は調査への反対を表明。当時の増田寛也知事は「岩手は核捨て場にふさわしくない」「将来の候補地につながりかねないという不安のある調査は、国や機構からの働き掛けがあっても反対していく」と述べている。

 国内のどこであっても、「処分適地」とされれば、衝撃が走ることは必至。今回、経産省作業部会の委員長を務める増田氏は、問題の難しさを肌で知っているはずだ。

 処分地選定は、国が科学的に適性の高い有望地を示し、国民や住民の理解、協力を得るとしている。信頼性確保のために、原子力委員会が第三者的な立場から手続きを評価する仕組みが盛り込まれた。

 しかし、経産省作業部会の委員から「原子力委は原子力政策推進機関であり、疑問」という意見が出た。この指摘は当然だ。原子力に付きまとってきた不透明性を拭い去ることが今後の政策には欠かせない。

 日本学術会議は、「核のごみ」対策明確化を再稼働の条件とする政策提言案をまとめた。具体策がないまま廃棄物を増やすことは、現世代での解決をさらに難しくする。一考を要する。

(2015.2.24)

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