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震災から4年、東京電力はまだ罰を受けていない−Wペセック

Bloomberg 3月12日(木)8時30分配信

【コラムニスト:Willie Pesek】  (ブルームバーグ・ビュー):東日本大震災から4年、福島県沖を漁場とする漁師らは、福島第一原子力発電所から再び汚染水が太平洋に流出しているのではないかとしばらく前から疑っていた。漁師らの疑いが正しかったことは2月24日に明らかになったが、東京電力は昨年5月から高濃度の放射性物質を含む汚染水の問題を把握していた。つまり、1年近くにわたって口を閉ざしていたわけだ。

汚染水流出を認めてから2週間余りが経過したが、東京電力本社で立ち入り検査が行われただろうか。あるいは当局は厳重な処罰を求めただろうか。チェルノブイリ以降で最悪の原発事故を起こした同社に対し、安倍晋三首相は説明責任を要求しただろうか。民主主義国家ならば、そうした措置が講じられるのは明らかだろう。ところが日本では一切そうした行動は取られていない。ここで持ち上がってくるのは、東京電力の企業統治のみならず、こうした状況を許している「原子力ムラ」の事なかれ主義というやっかいな問題だ。

安倍首相は12年12月の就任時、国際的な行動規範に準じた企業の説明責任を高めると約束し、13年8月には「汚染水対策は喫緊の課題」として国が対策の前面に出る方針を表明した。首相は当時、2020年のオリンピック東京招致活動への影響を心配したのだろう。

全ては見せ掛けだった。安倍政権による介入は一度もなく、東京電力に対応が任されたままだ。震災から4年が過ぎても、汚染水の流出は続き、県内ではなお12万人が自宅に戻れていない。そして東京電力の不透明な体質と無能さは変わらない。テンプル大学日本校のジェフ・キングストン教授は東京電力の曖昧な態度について、「無責任という根強い社風の全てを物語っている。全く変わっていない」と語る。

原子力ムラ

この状況がなぜ許されるのだろうか。それは東京電力が原子力ムラに守られているからだ。原発推進派の政治家や官僚、電力会社が寄り集まって再生可能エネルギーよりも原発促進を優先させ、さらに競争や世界的な基準から国内の電力会社を守ろうとする。

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最終更新:3月12日(木)8時30分

Bloomberg