それにしてもわかりにくい。国民ばかりか、活動にあたる自衛隊員が戸惑うか…[続きを読む]
「海の掘削は、沖縄の心にナイフを突き刺されたようなもの」。沖縄県名護市…
「海の掘削は、沖縄の心にナイフを突き刺されたようなもの」。沖縄県名護市辺野古で、市民の一人はそう抗議した。
米軍普天間飛行場の移設に向け、政府が海底を掘って地質を調べるボーリング作業を再開した。昨年夏に中断していたもので、この作業を経て今夏にも埋め立て工事に突き進む構えだ。
移設に反対している翁長雄志知事の就任後、初の大きな動きであり、知事は「県民に説明がない中で物事を進めるのは許せない」と反発した。
一方の政府では、菅官房長官が「法制に基づいて手続きを行っている。粛々と工事を進めるのは当然じゃないか」と強硬姿勢を崩さない。中谷防衛相はきのう、「こちらから(知事に)会う考えはない」と発言し、異様な対立状態に陥っている。
確かに、仲井真弘多・前知事は埋め立てを承認した。だが、その判断に納得できない県民が選挙で知事を交代させ、移設反対の意思を明示したのだ。
翁長知事を無視し続ける政府の姿勢は頑迷というほかない。政府と沖縄県の対立をこじらせることは、国と地方の関係や、安全保障を考える上でも、決して望ましいことではない。
米軍の対応もおかしい。海底の環境が損なわれた疑いがあるため、県が立ち入り禁止区域での調査許可を求めたが、米軍は「運用上の理由」で拒んだ。
この海域では、海上保安庁など政府の船舶は往来している。なのになぜ、県の調査船だけが支障となるのか。県が米軍に不信感を抱くのも無理はない。
県が調査することになったのは、沖縄防衛局が岩礁破砕の許可区域外に巨大なブロックをいくつも沈め、サンゴなどを壊した可能性があるからだ。
この海域は埋め立て予定地の周辺部で、工事完了後もサンゴ礁などはそのまま残る。県が水産資源の保護策や環境保全策をとるのは当然だろう。
ましてやこの海域は、沖縄の海岸の中でわずかに残った貴重なサンゴ礁の海。ジュゴンが回遊し、近年、新種の甲殻類なども相次いで見つかっている。
翁長知事は、前知事の承認を検証する県の第三者委員会の審査が終わるまで、作業を停止するよう政府に求めている。ここは政府が提案を受け入れて作業を中止し、県との対話による関係修復に乗り出すべきだ。
政府も米軍も、長年、重い基地負担に苦しむ沖縄県民の心をこれ以上傷つけてはならない。民意を重く受け止められない政府の存在は、国民全体にとっても不幸だ。
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