それにしてもわかりにくい。国民ばかりか、活動にあたる自衛隊員が戸惑うかもしれない。

 安全保障法制の与党協議で、自衛隊の海外での活動を定める法律の大枠が固まった。

 周辺事態法改正、恒久法、国連平和維持活動(PKO)協力法改正――この三つの法律で、地域の平和と国際貢献に対応するのだという。それぞれ法律の目的で切り分けているが、その線引きは不明確で、つじつま合わせの感がぬぐえない。

 問題の根源は、集団的自衛権の行使を認めた昨年7月の閣議決定にある。いまつくろうとしている法律はそれすら逸脱している。自衛隊の活動拡大、一辺倒である。

 もともと自民党は、周辺事態法を廃止して恒久法を新しく定める腹づもりだった。これに対し公明党は周辺事態法は残す考えで、いつでも自衛隊を出せる恒久法には否定的だった。

 すると政府は、周辺事態法を残す代わりに、地理的制約として機能してきた「周辺」という概念をなくすよう提案。曲折をへて、周辺事態法と恒久法が併存する方向になった。

 日本の平和に関わるのが周辺事態法で、国際社会に寄与するのが恒久法というのが政府の説明だが、どちらも活動の中身は他国軍への後方支援で重なる。周辺事態法の根幹は「重要影響事態」にするというのだから、もはや新法と変わらない。

 さらに人道復興支援については武器使用基準などの関係で恒久法とは切り分け、PKO協力法改正で対応する。これに伴いPKO5原則の変更まで検討されており、まだ話は収まっていない。今後、国会承認などの議論に入ると、いっそう混乱をきたす可能性も出てくる。

 肝心なのは、自衛隊を海外派遣するだけの正当性が確保できるかどうかという点だ。国連決議もないような紛争の後方支援は、情勢によって日本の立場を不安定にさせる恐れがある。

 政府は、国連決議がなくても「国際機関の要請」などで自衛隊を海外派遣できるよう検討している。だが、国連決議に基づく支援が基本だ。この軸をずらすべきではない。

 日本には安全保障論議の積み重ねがある。集団的自衛権の行使を認めない憲法解釈はその典型だ。安倍政権はそれを無視するかのように解釈変更に踏み切ったが、このままでは安保政策の安定性まで失いかねない。

 無理を重ねて合意を急ぐ理由はあるまい。原点に立ち返ってもう一度、あるべき姿を考え直すべきだ。