PREVIOUS NEWS
2015.3.14 SAT
TEXT BY ASSAwSSIN
PHOTOGRAPHS BY SHIN-ICHI YOKOYAMA
ZBrushを開発しているPixologicのCOO(最高執行責任者)ハイメ・ラベル。
「ZBrush」は粘土をこねるように3次元の立体を造形できる──いわゆるスカルプティングを可能にしたCG用モデリング(造形)ツールだ。タブレット上でペンを走らせ、画面を撫で回すようにすれば凹凸がどんどんできあがる。速いし、綺麗だし、面白い。あっという間に筋肉隆々のクリーチャーを生み出すことができる。ほかのCGソフトウェアとは、有り体にいって「大違い」だ。
CGで一般的に「モデリング」と呼ばれる立体の造形は、極めて幾何学的な手続きを踏む。“150mで33階建ての構造物”といったオーダーに対し、「角柱」や「球体」といった規則正しい図形を足し合わせてつくり上げる。図形の厚み・辺の長さ・角度を調整し、あるいは点の数を減らしたり、面の曲がり具合を変えていく。いつでも数値入力が欠かせない。キーボードのテンキーを電卓のように弾き、およそ直感的でない(まるで「数学」の自由研究に挑むような)作業の繰り返しで、ようやく高層ビルや自動車が姿を現す。
その点、ZBrushが実現するスカルプティングでの造形は極めてとっつきやすい。授業でいえば「美術」だ。
まず球体を画面に表示して(まさに粘土の塊)、その表面にペンを押し付けてやると、ぷっくり膨らんで凸部分ができる。ショートカットキーを使って同じことをすると凹んだり、あるいはすべすべになったりする。背景部分をドラッグすれば、ぐるぐる回せる。それだけ。まさに「立体的な絵を描く感覚」だ。これなら子どもでも扱えてしまう。おっと…誤解しないでほしい。子ども騙しなツールという意味ではない。プロフェッショナルなアーティストのこだわりに応える機能を十分備えており、ハリウッドのSF大作映画やPlayStationのアクションゲームに登場する膨大なクリーチャーたちが、ZBrushによって日々生み出されている。
「CGにはさまざまなプロセスがあって、それぞれに適したツールがたくさんあります。でも、ZBrushはあくまでアートのためのツール。だからコンセプトアートの現場で好まれています。アーティストという人種はとにかく探究心が旺盛で…見たこともない場所へ行きたいと常に願っている。例えるなら、大きな高速道路を走るのではなく、細く曲がりくねった田舎道を走りたいと考えている。われわれはそっちの味方なんです」
PixologicのCOO(最高執行責任者)・ハイメ・ラベルは、ZBrushのすばらしさについて控えめに語り始めた。でもそれでは謙遜が過ぎるというものだ。
映画の企画段階では、監督やプロデューサーや脚本家によってディスカッションされたキャラクターや背景美術、衣裳にまつわる数々のアイデアを、アーティストは毎日のように膨大なグラフィックへと落とし込む。極端にいえば「今日の議論は明日までに視覚化してほしい」のだ。それがコンセプトアートの現場。決してのんびりと構えてはいられない。だから作業は腕の良い、そして少人数のアーティストに集約される。しかも会議中にラップトップで絵を修正したいというニーズまである。そんな「過酷な」アートにとって、ZBrushは「スピード」を与えてくれる。操作が直感的で、しかもクリエイティヴ仕様のハイスペックなPCでなくとも動き、その処理はべらぼうに速い。アーティストたちは田舎道に迷い込みながら、魔法のブラシを手に「アクセル全開」で駆け抜けることができるのだ。
ハイメはこうも語る。「世界には著名なCGソフトウェアがたくさんある。けれど必ずしも、開発したプログラマーが、自らユーザーとして使うわけではない。一方、ZBrushのプログラマーたちはまずアーティストであろうとします。自分たちが使えば使うほど、こうあらねばというアイデアが湧いてくる。そうやって開発を進めている。メンタリティがまったく違うのです」
アーティスト目線で進化を重ねたZBrushは確かに素晴らしい。正直、欲しくなる。けれど、われわれプロのCG屋はこうしたツールの導入につい二の足を踏んでしまう。その理由をわかってもらうには、ぼくの口から業界特有の(もしかしたら、日本的な)「沼事情」をお話ししなければならない。
SPECIAL
PREVIOUS NEWS
コメントをシェアしよう