黒き女神の祭 ショタのハジメテはお姉ちゃんがもらう…
今夜は十年に一度の村祭りの夜だった。少年は十歳。祭りはこれが初めてである。
祭の篝火の近くにある大テーブルには貴重な蒸留酒や葡萄酒の樽、上等なエールの樽、食べきれないほどの焼いた肉や野菜などが用意されていた。酒を飲み、肉を食う。祭りとはそういうものかと少年は思った。少年も肉を食い、薦められるままに酒を飲んだ。いつもは強い酒は大人になってからと言われるが、今日は祭で、特別らしい。
そのうち、みんなが服を脱ぎだした。篝火と酒で身体が熱くなったんだろうと少年は思った。少年もまわりにいた大人たちに服を脱がされた。これも祭のしきたりなのだろうか。
男と女が裸で抱き合っていた。知り合いのおじさんは、知らない若い女の背中に乗っている。おじさんの奥さんは仰向けになって老人の下に組み敷かれていた。男同士、女同士で抱き合っている者もいる。赤い炎に照らされ、黒い影が濃い。声をあげ、腰をふる裸の人間たち。
少年は中年女に股間を触られる。しかし、別の女がその手を払ってくれた。
「その子のお相手は決まってるから……」
女同士のひそひそ話。少年はだんだん心細くなってきた。
「お姉ちゃん、どこなの?」
そう言ってあたりを見渡すが姉の姿はない。姉は少年の唯一の家族である。
「お姉ちゃん!」
篝火が燃え崩れる。火勢が弱くなった。
「薪が足りねえな。足そうぜ」
そう言って、男たちは教会の壁を剥がしはじめた。片っ端から炎のなかに放り込む。聖なる御子が磔にされた十字架も燃やされた。周囲がぱっと明るくなった。
司祭様が胸につけていたロザリオを火に投じる。その後で木製のカップのなかの蒸留酒を呷った。
「今日は祭りだ。大事なものはなんでも燃やせ」
司祭様は笑いながら言った。そして続ける。
「さて、お待ちかね。黒き女神様のおでましだ。供物を用意しろ」
少年は両腕を若い男に掴まれ、炎の近くに連れていかれる。
篝火の向こうに美しい少女の顔が見えた。少年の姉である。彼女は言った。
「思い出したの。私はお前の姉さんなんかじゃないわ。十年前、赤子だったお前を攫ってきただけ。この祭のためにすべてを用意した。私はアスタロトの娘、ブエルの女にして、『千匹の仔を孕みし森の黒山羊』シュブ=ニグラスとも呼ばれるもの。今夜、いちばん大切なお前をもらうわ」
少女の頬に一筋の涙が流れた。火柱があがる。そして炎が静まると、泡立ち爛れた肉の塊がそこにあった。雲のようにその形はひと時も定まることがない。のたうつ黒い触手と黒い蹄を持つ短い足。巨大な口からは粘液を滴らせていた。しかし、これだけ姿形が変わっても、少年には、それが姉であるとはっきりわかった。姉は美しい姿と言葉を失ったかわりに、少年の頭のなかに直接、思いを伝えてきたからだ。
その思いの大部分は劣情である。少女の姿となったシュブ=ニグラスは十年もの長きにわたり禁欲を続けてきた。「黒き豊穣の女神」とも呼ばれる彼女にとって、交わらず産まぬ年月がどれほどの苦痛であったか。彼女はいま少年のあまりに小さな身体で欲望を満たそうとしていた。触手を伸ばし、少年の全身を拘束する。
本来の姿を取り戻しても、シュブ=ニグラスには、この少年の姉だった頃の記憶がまだ残っている。肉欲を弟の身体で満たす禁断の快楽にシュブ=ニグラスは震えた。この快楽のためにシュブ=ニグラスは十年を待ったのだ。何の禁忌も持たぬ神の眷属には味わえぬ高ぶりであった。
シュブ=ニグラスの秋波を直接感じた少年の陰茎はすでに勃起している。黒い触手が陰茎に巻きつき、なんども弧を描いた。陰茎はさらに急角度で屹立した。
シュブ=ニグラスの巨大な口が少年の頭の上から全身に粘液を垂らす。ひどい匂いに少年は吐き気がした。しかしその後、ヌルヌルした全身を触手で撫で擦られて匂いなど、どうでもよくなってしまう。陰茎をいじられ、カウパー腺液が滴っていたが、シュブ=ニグラスの唾液と、もう見分けはつかない。
「お姉ちゃん……」
少年の目の前に、シュブ=ニグラスの生殖器のひとつが突きつけられた。色は真っ黒だが、形は人間のそれに酷似している。それもそのはず、少女の姿だった時の形を再現したものだ。性的興奮によって膣分泌液が溢れていた。その事実は精神感応によって少年にも伝わっている。今、シュブ=ニグラスは少年に姉との姦淫を迫っていた。同時にシュブ=ニグラスの一部に残る姉としての記憶は、陰部を晒すことに恥じらいを感じ、弟として育ってきた少年との交合を激しく拒んでいる。しかし、その感覚こそシュブ=ニグラスにとって甘露であった。
姉と弟のどちらが先に快楽に屈するだろうか。弟の怒張した陰茎の前に、姉の生殖器を差し出して様子をみる。これは楽しい実験だ。
我慢できなかったのは、姉のほうだった。少年の陰茎を包み込み、激しく前後させる。シュブ=ニグラスのなかにある姉の記憶は涙を流して弟に謝罪を続けていたが、それでも性的な運動を止めることはなかった。そういうことか、シュブ=ニグラスは思う。淫乱淫靡な自分の一部だ。人の姿を借りて顕現したところで堪え性がないのはあたりまえだ。
「お姉ちゃん、すご、すごい」
弟が快感に息を詰まらせながら言った。
少年の思念はシュブ=ニグラスにとって豪華な食事である。姉と交わってしまった罪悪感、初めての性事の興奮。思念を吟味し、少しずつ咀嚼し、我が物にしていく。愛と嫌悪感と親しみと寂しさのマリアージュ。これは十年かけなければ醸成されない味わいだ。
しかし、シュブ=ニグラスは性的に大食漢なのだ。お上品なディナーだけではぜんぜん足りなかった。
思いつきで、細い触手を少年の肛門にねじ込む。少年はあっと声をあげた。驚いているのに陰茎はいきり立っている。その後、すぐに少年は膣のなかに射精した。
お前は姉のなかに精を放ったのだとシュブ=ニグラスは思念で教えてやった。どうせもう地獄にいるのだから、もっと楽しまなければ損だと吹き込んでやった。そして、触手で陰茎を刺激して、ふくらませた後、黒い蹄で踏んでやる。シュブ=ニグラスの短い足には重さがかからない。刺激を与えるだけである。何度も踏み続けられて少年はまたしても射精した。その精液を少女の生殖になすりつける。姉としての記憶はシュブ=ニグラスのなかで小さな金切り声をあげ続けているが、その声に応えてやめるわけがなかった。
お前の姉が人ではなかったことをきちんと教えてやろうとシュブ=ニグラスが思念で告げる。少年は嫌な予感がした。さきほど少年が放った精は姉の子宮のなかで実を結び、見る間に大きく育っていた。戯画化された妊婦の腹。その色は真っ黒だ。そして、次々に産声をあげる黒い獣たち。すぐに育って、暗闇に消えていく。黒い奇跡、闇の奇跡だ。
さあ、ここからは無礼講だと、シュブ=ニグラスは村人たちを招く。黒い身体に白い男や女の身体が鈴なりとなった。シュブ=ニグラス様と交わうのだ。赤く揺らぐ篝火の明かりのなか、祭は夜通し続いた。
また十年に一度の祭りが始まる。あの少年はいまや老人となっていた。これが最後の祭りになるかもしれない。そう思うと身が引き締まる思いがした。
広場には太い丸太が井桁に組まれ、高く組み上げられていた。夕刻、村人の指示を受け。今年の少年が火をつける。松明の火が燃え移り、炎とともに歓声があがった。
「貧しいこの村では十年に一度しかお祭りができないの。お祭りの日には、それまで大切にとっておいたものを全部、使ってしまうのよ。だって、お祭りですもの」
少女が今年の少年に話していた。あの少女は、かつて老人の姉でもあった。彼女は今も変わらず若くて美しい。それが老人には嬉しかった。
祭りのはじまりの声があがった。
「イア! イア! シュブ=ニグラス!」
老人もみんなと同じく唱和した。
「イア! イア! シュブ=ニグラス!」
十年に一度の大ワルプルギスの夜の始まりだった。
(了)
本作は、嫌悪すべき対象シリーズの二作目(一作目は「女オークと騎士 三部作」)で「擬人化されえいないシュブ=ニグラス」が読者に興奮してもらいたい対象です。しかし、なんか普通に触手モノっぽくなりました。
いずれまた、実用性あるR-18を書きたいと思っています。それまで、みなさまごきげんよう。
感想はお気軽にお願いいたします。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。
この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。