ポルトガルの大手銀、バンコ・エスピリト・サント(BES)の支店前を歩く男性。同行の経営破綻で、多くの美術品や職人らを抱える文化財保全財団が岐路に立たされている=リスボン(ブルームバーグ)【拡大】
ポルトガル・リスボンの歴史的中心地、アルファマ地区の装飾芸術美術館には、同国最大の銀行グループの子孫、リカルド・リベイロ・エスピリト・サント・エ・シルバ氏による骨董(こっとう)品のコレクションが収められている。同氏が設立したリカルド・エスピリト・サント財団(FRESS)は欧州の美術品の保全・再生が認められ、2013年には欧州連合(EU)文化遺産賞を受賞している。だが主な支援者だったバンコ・エスピリト・サント(BES)が経営破綻した今、FRESSは岐路に立たされている。
リカルド・エスピリト・サント氏は16歳で骨董品の収集を始めた。フランスの美術雑誌が1955年にインタビューした際に同氏は当時を思い出しながら、ぼろぼろのラグマットを持って家に帰ると兄弟から物笑いの種にされた、と語っている。それから程なくして54歳で死去したが、その2年前に自身のコレクションを国と装飾芸術美術館に寄贈した。
◆個人寄付の70%提供
リカルド・エスピリト・サント氏の一族が創業したBESは、昨年8月にポルトガル中央銀行の救済を受けており、もはやFRESSを支援できない。救済前は同国の上場銀行最大手だったBESは毎年、FRESS宛ての個人寄付の約70%を提供し、融資も行ってきた。FRESSのマリア・ダ・コンセイソン・アマラル理事長は「支援者を失うことになるとはまったく思いも寄らなかった」と心境を明かす。同理事長は2007年に美術館の理事に就任し、今年1月にFRESSの理事長に指名されたばかりだ。
数百年前の装飾芸術や素晴らしい手工芸品のために作られたFRESSは、今や自己改革の必要に迫られている。リカルド・エスピリト・サント氏のコレクションと長年培ってきたノウハウの保護が最重要課題だ。