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 朝日新聞の政務活動費47都道府県議調査(2013年度)で、議員が「意見交換会」の会費名目で、地元の団体の会合に参加し、政務活動費を繰り返し支出している例が見つかった。神奈川、岐阜、香川では団体側が会費を指定していないのに、領収書をあらかじめ準備し、支払う金額も自ら決めていた議員がいた。

 香川では41人の議員のうち29人が自治会や業界団体などとの「意見交換会」名目で、2200回以上、計1500万円超を支出していた。50万円以上の支出が15人、100万円以上も3人いた。

■金額は先輩指南

 180回の会合に計90万円を支出したのは山下昭史議員(48)。うち175回の87万円分の領収書は同じ様式だった。13年4月7日には、選挙区内の自治会総会を中心に19カ所で5千円ずつを支出した。山下議員によると、全て相手側からの招きで参加し、県予算や農業政策などについて県政報告をしたといい、用意した領収書にサインをもらった。19カ所のうち3カ所は自分で回りきれず妻が代理で出席したという。

 山下議員は「総会の時間を10分~1時間借りることになる。会場代や用意された食事分だ」と説明。金額の根拠は「わからない」とした。初当選後に先輩議員に手ぶらでいいか尋ねた際、「この額だ」と言われたという。

 最多額の133万円を支出した尾崎道広議員(69)も、128万円分は同じ様式の領収書で、自ら用意したことを認めた。会の規模などを考えて額面を決めるといい、「意見交換は議員にとって一番大事な仕事。支払わなければ呼ばれなくなり、政治生命が終わってしまう」と話した。

 香川県北部の海沿いにある自治会は、公民館での総会に議員2人を招いて県予算などについて意見交換し、当時の会長が領収書にサインをして計1万円を受け取った。会費は設定していなかった。元会長は「自治会員は会食のために捕った魚を持ち寄るが、議員はそうもいかない。お金は『気持ち』ということだろう」と話した。

 同様に会合に議員を招いた団体は「参加費のようなもの」(ヨガの団体)、「祝い金」(農業団体)、「神饌料(しんせんりょう)」(神社)、「活動資金の足し」(スポーツ少年団)などと説明し、受け止め方が分かれた。

■「情報代」と説明

 神奈川の川上賢治議員(76)も自治会などとの「意見交換会」に計176回参加したと報告。うち173回の計57万円分は川上議員が持参した同じ様式の領収書で、額面は3千円または5千円だった。

 総会で3千円を受けとった南足柄市体育協会の幹部によると、市長や市議も出席したが、現金を払ったのは川上議員だけだったという。幹部は「食事もなく、3千円に見合うものはない。税金とは知らなかった」と話し、今後は断ることも考えるという。

 川上議員は取材に対し「情報代だ。自分で情報収集の場を作ることを考えたら安いくらいだ」と話す。

 岐阜の森正弘議員(67)は、227回分で計168万円を支出。うち187回は同じ様式の領収書を使った。額面は数回を除いて5千円か1万円で、政務活動費からは、県議会のマニュアルで懇親会への充当上限5千円を支出するケースがほとんどだった。

 森議員によると、すべて案内状を受けて参加したといい、食事とお酒が提供される会合には5千円以上を出し、会場が集会所か料理屋かで金額を変えたという。「(金額は)先輩から教えてもらった。料理屋だと料理だけで5千円にもなるので、お酒も考えると妥当な金額だ」と語り、「会費が徴収されなくても、飲食していながら払わずに帰れない」と話す。

■支出禁止明記も

 会費制ではない会合への支出をマニュアルで禁じる議会もある。埼玉や群馬は、選挙区内で「会費制の会議、会合等における会費以外の支出を行うことは、公職選挙法で禁止された寄付に該当する」と明記。富山や愛媛、宮崎などは「会費の額が明確に定められており、金額も社会通念上妥当な範囲のものである場合に限り充当が可能」と規定している。

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■税金使い買収と疑われる

 《全国市民オンブズマン連絡会議事務局長 新海聡弁護士の話》 本来、議員の政策立案に使われるべき政務活動費が議員の地元にばらまかれている実態が明らかになった。こうした構図は、議員が税金を使って有権者を買収しているとも疑われかねず、許されない支出だ。

 議員にすれば、地元をこまめに回ることで議員活動を果たしたと思い込んでおり、支出にためらいはないのだろう。一方で、団体側も現金を受け取ることに慣れきっており、その原資が税金ということまで思いが至らない。

 地域にとっては長年の慣習で疑問も生じないのだろうが、全国的に見れば相当特異だ。議会が政務活動費の収支報告書や領収書などをインターネットで公開すれば、こうしたガラパゴス的な支出は間違いなく減るはずだ。