教員紹介
地域の魅力を見出し美しい故郷を未来へ残す
大学院教育学研究科
教職開発専攻
前園 泰徳先生
地域や環境の持続可能性を高める
福井県の若者は高校卒業時に3割が県外へ転出し、Uターン時期である大学卒業時も2割が流出したままであるという県の調査結果を知っていますか?地域に魅力を見い出せない若者が増え続けると、地域活力の低下や住民負担の増加など様々な影響が現れ、荒廃に繋がる可能性があります。私は、地域の魅力や課題を発見し、発信する教育を通し、地域や環境の持続可能性を高める取り組みを行っています。
環境保全推進コーディネーターとして活動している勝山市では、市内の全小中学校を対象として環境教育を行っています。例えば、日本の原風景として浮かぶ「赤とんぼ」は、全国的には減少傾向にあるにも関わらず、勝山市では多く確認できます。そこで、これを地域の魅力として捉え、子どもたちと一緒に羽化数や生息場所を調査し、人にも赤とんぼにもより良い生活環境を提案しています。また、地域の課題として「ごみのポイ捨て」を取り上げ、拾った空き缶をジュースやコーヒー、ビールに分類することで、空き缶の大半が大人によって捨てられていることを明らかにし、「大人の意識」を改善する活動を子どもたちとともに行いました。
これらの活動で最も大切にしていることは、「子どもたちが地域を好きになること」です。そのために、身近な事柄に目を向けることから提言までを一貫して子どもたちとともに行い、地域社会の一員としての誇りや認識を育んでいます。
環境教育により子どもたちが変化
「赤とんぼ」の調査の様子
コーディネーターとして活動した3年弱で勝山市の子どもたちに変化が表れました。「学力の向上」と「勝山市に住み続けたいと考える子どもの増加」です。頻繁に訪問している中学校の教員に行ったアンケートでは約7割が生徒の学力向上に環境教育が貢献していると回答し、生徒へのアンケートでは「将来も勝山市に住み続けたい」と考える割合が徐々に向上しています。まさに地域が生き生きと豊かに持続していく可能性を表す結果となり、達成感を感じましたね。
改革や保全に必要な力
私は、もともと人と関わることが好きではなく、自然相手の仕事がしたいと思って生態学の研究者になりました。しかし、かつて研究を行っていた奄美大島で、自然が簡単に失われていくのを目の当たりにし、島の住人に自然の貴重さを伝える教育がなければ大切なものがすぐに失われてしまうということを痛感しました。これが、メインの研究テーマを生態学から環境教育に転換したきっかけです。 何かを変えたり、守ったりするには、人との関わりが不可欠です。福井大学では、皆さんの故郷を自らの手で守っていくことができるよう、問題発見力、論理的思考、人や地域を変えるためのプレゼンテーション能力などを伸ばす教育を目標としています。また、学校現 場においてそれを実現するために、教職大学院における教師教育にも力を入れ、環境教育の指導者養成に励んでいます。 一緒に、持続可能な福井を構築しましょう。
今ハマっていること★
「繋ぐこと」です。学校での活動を地域やメディアに繋ぐことで、子どもや教師の自信が高まったり、地域にとっても活力になったりと可能性が広がっていくことに楽しみを覚えています。 今年は、将来を考えるきっかけになるようにと教え子である中学生を福井大学に招きました。
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