二度の世界大戦を起こしたドイツは、毎年反省の週間を迎える。一昨年はヒトラー政権発足から80年、昨年は第一次世界大戦発生から100年だった。今年は第二次世界大戦終戦から70年だ。尽きることのない「ざんげ」はドイツ首脳に降りかかる業報(ごうほう、過去の行為の報い)だ。ドイツのメルケル首相も同じだ。
メルケル首相は数日前、日本を訪れた。「鉄の女」は公開講演で「和解のためには過去に向き合わなければならない」と述べ、日本の野党代表に「慰安婦問題は解決した方がいいのでは」と述べた。歴史問題は日本を昨年訪れた韓国の血盟・米国の大統領さえ沈黙していたテーマだ。
ドイツのメディアが報道したメルケル首相の日本での言動をまとめると、次の通りだ。歴史問題発言が出たのは、朝日新聞が主催した講演会でのことだった。安倍晋三首相の極右的な言動を批判してきた新聞社だ。日本政府関係者は「絶対にそこに行かなければならないのか」と尋ねたが、考えを変えなかったという。メルケル首相はこの講演会で「ドイツは歴史問題の論争から逃げなかったからフランスと和解できた。和解しようと思うなら、過去に向き合わなければならない。ドイツは事実をそのまま述べる覚悟ができていた」「被害に遭った国々が和解しようと思わなかったら、和解は不可能だった。立派な人物たちがいて、互いに近づこうとした」と自国の経験を二つの発言に分けて語った。
朝日新聞と毎日新聞を除き、日本のほとんどのメディアは沈黙するか、そうでなければ後者の発言に重点を置いた。「周辺諸国に和解しようとする意思があったからドイツは幸運だった」という発言を前面に押し出したNHKの報道がその代表的な例だ。ドイツの中道派日刊紙・南ドイツ新聞は「綿に包まれた(メルケル首相の)間接批判を日本がどのように扱うか、NHKが示した。講演した場所が朝日(新聞社主催の講演会)だったことにも言及しなかった」と報じた。
一方、韓中のメディアは前者の発言を重点的に報道した。韓国は綿に包まれた間接批判を直球として受け止めた。「過去に向き合わなければならない」という言葉を「日本は謝罪しなければならない」と読んだ。だが、ドイツの権威ある日刊紙フランクフルター・アルゲマイネ・ツァイトゥングは「メルケル首相は東京で北京とソウルのメガホンになったわけではない。むしろ反対だ」と評した。重点は「被害国の和解しようとする気持ち」にあったというのだ。
メルケル首相は発言の意図を直接明らかにしていない。歴史問題について発言するたび「日本に(歴史問題に関する)助言をしに来たのではない」と一線を画してきた。このため、ドイツのメディアがメルケル首相の真意を知っていると見なすのも難しい。しかし、歴史問題の当事者である韓中日より事案を客観的に見られる位置にいるのは間違いない。
今年の主要7ヵ国首脳会議(G7サミット)議長国として参加国・日本を訪れたメルケル首相は、ほかに多くの成果を挙げた。そのほとんどが未来志向的なものだった。経済協力・国連安保理改革・ウクライナ問題・高齢化社会・女性人材支援などを取り上げた。そのおまけとして「過去を直視しない国」と「和解する気がない国」の間で強力な発言権も確保した。フランクフルター・アルゲマイネ・ツァイトゥング紙は「メルケル首相は日本に滞在した30時間で双方に望みのものを与えた」と書いた。勝者は韓国でも日本でもなく、ドイツだったということだ。