氷見冤罪事件:「言葉の暴力つらい」精神的不安定続く
毎日新聞 2015年03月09日 12時38分(最終更新 03月09日 12時50分)
2002年に富山県氷見市であった強姦(ごうかん)・強姦未遂事件で、服役後に再審無罪が確定した柳原浩さん(47)は裁判の中で「警官による言葉の暴力が一番つらかった」「刑事が怖かった」などと、取り調べを受けた際の心情を語ってきた。また、無罪が確定したあとも、精神的に不安定な状態が続いているという。
柳原さんの無罪を確定させる再審公判では、アリバイを示す通話履歴のほか、事件現場で見つかった足跡(28センチ)と柳原さんの足のサイズ(24センチ)に開きがあることなど、無実を示す証拠の存在が相次いで明らかになった。今回の裁判でも、国(検察)や富山県(県警)が開示した資料から、ずさんな捜査の一端が浮かび上がっている。
その資料の一つに、柳原さんが当初犯人とされた二つの事件で、県警が柳原さんに被害者宅を案内させた時の状況を記した捜査報告書がある。柳原さんは、すぐに被害者宅にたどり着けなかった様子が記録されていた。原告側は「(柳原さんの)犯人性を疑うべきなのに、無視した」と主張した。
また、県警の捜査員に対する証人尋問では、注目の証言もあった。柳原さんが逮捕されたあとにも、被害者が刃物を突きつけられ縛られるという氷見事件の手口と類似した強姦・強姦未遂事件が相次いだ。このうち、鳥取県や石川県などで起きた事件で氷見事件の真犯人が立件されている。証人として出廷した捜査員2人は「(手口などが)似ていると思った」「関連があると思った」と証言。原告側は「改めて捜査しなかった捜査本部の責任は重大」と指摘している。
出廷した当時の県警氷見署長が「苦しい思いをさせた。本当に申し訳ない」と、柳原さんに謝罪する場面もあった。柳原さんは「私のような冤罪(えんざい)被害者を二度とつくってはいけない」と強調し、捜査手法の見直しを訴えている。【大東祐紀】
【ことば】氷見冤罪(えんざい)事件