三菱重工:電気を無線で送る技術向上 10kWで500m

毎日新聞 2015年03月12日 19時56分(最終更新 03月13日 07時58分)

将来の無線送電技術の応用例
将来の無線送電技術の応用例

 三菱重工業は12日、電気を電波に変えて無線で送る「無線送電技術」で、国内最大出力・最長距離の実験に成功したと発表した。送電電力10キロワット、距離は500メートルを達成した。災害時や送電線の敷設が困難な場所への送電、電動車両の充電などへの応用を想定しており、早ければ5年後の実用化を目指すという。

 実験は先月24日、同社神戸造船所(神戸市)で実施した。電気をマイクロ波に変えたビームを送電部から発射し、受電部でマイクロ波を直流電力に変換、発光ダイオード(LED)を光らせることに成功した。

 電波の拡散による送電ロスを抑えるため、ビームの形や方向を制御する技術を採用。今回取り出せたのは送電分の10%にとどまったが、理論上は約40%に伸ばせるという。また今回の実験では、電子レンジに使われる安い発振器で電波を出す方法を採用し、コストを下げた。

 同社宇宙利用推進室の安間健一主席技師は「小型化と信頼性向上が課題。1メートル以内の短い距離の送電なら早いタイミングで製品化できると考えている」と話した。

 無線送電技術は、宇宙に巨大な太陽光パネルを広げて地上に電気を送る「宇宙太陽光発電」の実現に欠かせない技術だが、同社はまず地上での産業応用を目指している。宇宙利用に向けた研究では、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が今月、薄型の送電装置などを使う方法で出力1.8キロワット、距離55メートルの地上実験に成功した。【千葉紀和】

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