社説:沖縄との対話 首相側から呼びかけを

毎日新聞 2015年03月14日 02時31分

 防衛省は、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への移設に向けた海底ボーリング調査を半年ぶりに再開した。辺野古移設に反対する翁長雄志(おなが・たけし)知事ら沖縄の声に耳を傾けようとせず、調査を強行する政府の姿勢は、極めて残念だ。

 ボーリング調査は、辺野古埋め立て工事の前提として、海底地盤の地質や強度を調べるものだ。昨年8月に始まったが、約1カ月後に台風のため中断され、その後も知事選や衆院選への影響を考えて中断が続いていた。政府は調査を5〜6月ごろまでに終え、夏ごろに埋め立ての本体工事に着手したい考えだ。

 昨秋の知事選で当選した翁長知事は、前知事による辺野古埋め立て承認を検証する第三者委員会を発足させ、検証が終わるまで移設作業を見合わせるよう政府に求めた。そんな中で政府が調査再開を強行したことに、知事は「県民に説明がない中で物事を進めようというのは許せない。あらゆる手法を駆使して辺野古に新基地を造らせない」と語った。

 だが、政府はあくまでも移設を推進する方針だ。菅義偉官房長官は調査の再開について「我が国は法治国家だから、法制に沿って粛々と進めるのは当然だ。全く間違っていない」と語る。今後、知事と面会する可能性は否定しないが、知事側から面会要請があったのは過去2回だけで、忙しい時期だったとも言っている。

 中谷元防衛相はもっとかたくなだ。「知事は工事を阻止するとしか言っていない。もう少し沖縄県や国の安全保障を考えてほしい」と批判し、「こちらから会う考えはない。より対立を深めるなら会っても意味がない」と面会に否定的考えを示す。

 政府と地方自治体が対立し、安倍晋三首相らが知事に会おうとしないのは異常な事態だ。政府は、沖縄を冷遇すれば翁長県政は行き詰まり、知事は譲歩する、と見ているのかもしれないが、果たしてそうだろうか。

 辺野古移設反対という沖縄の民意は、名護市長選、知事選、衆院選の県内4小選挙区のいずれの結果からも明らかだ。政府が、前知事の埋め立て承認に基づいて法治国家だから粛々とやると言っているだけでは、問題は解決しない。

 「課題があるからこそ対話すべきだ。私の対話のドアは常にオープンだ」

 安倍首相は、中国や韓国との首脳会談が開けない状況について、こう繰り返し対話を呼びかけてきた。意見の違いがあるからこそ話し合うべきなのは、自治体との関係でも変わらない政治の基本姿勢ではないか。

 沖縄との亀裂をこれ以上、深めてはならない。首相は、まず翁長知事に話し合いを呼びかけることから始めるべきだ。

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