[PR]

 政務活動費をめぐる朝日新聞の47都道府県議調査では、政務活動費が事務所の家賃や人件費などの名目で議員や親族が関係する身近な会社に支出されていた例が確認された。本人、配偶者、2親等内の親族が役員を務める「身内企業」に年100万円以上を支出した事例を抽出し、支出の理由を尋ねた。

 祖父母や孫に当たる2親等は、議員本人と生計を同一にしている可能性もある近い関係であるため、調査対象とした。

 愛知の渡辺昇議員(46)は年間支給額(議員分585万円)全額を事務所費と人件費に充てていた。事務所は名古屋市緑区の2階建てビル(延べ約257平方メートル)に入居。ビルは自身が社長を務める不動産賃貸会社が所有していた。

 渡辺議員はこの不動産賃貸会社へ支払った事務所家賃(月30万円)全額を政務活動費で支出していた。

 入り口には「後援会事務所」の看板があり、本紙が1月末に全額支出について指摘すると「選挙でも使っている」と説明した。

 渡辺議員は今月10日、過去3年に支給された政務活動費全額に当たる1690万円を返還した。渡辺議員は取材に「政務活動は選挙活動と密接に関係しているので事務所家賃を全額負担しても問題ないと思ってきたが、指摘を受けて周囲と相談した結果、実態に応じた支出になっておらず、自分が社長なので誤解を招きかねないと思った」と説明した。人件費は秘書2人に支払っていたという。

 千葉の伊藤和男議員(67)は、長男が社長の学習塾運営会社に、事務所の家賃(132万円)、県政報告の印刷代など(105万円)、ホームページ更新料(10万5千円)などで計260万1千円を支出していた。

 伊藤議員は、家賃については「長男の会社が事務所の契約者になっているため、そこを通じて貸主に家賃を払っている」と説明し、印刷代は「塾に印刷機があり、安くなると思った」と語った。ホームページはほかの会社に頼んだつもりで、長男の会社とは思わなかったという。「親族への支出は変な目で見られかねないので、今年度分からは長男の会社に支出しない」と話した。

 兵庫の水田裕一郎議員(50)は、自らが社長の海運会社から政務活動費で230万円分の切手を購入していた。切手は年に数回発送する県政報告の郵送に使っていたという。同社は日本郵便から切手販売の委託を受けており、この売買で15万円前後の手数料を得ていた。「私個人には入らないし、会社の利益のために購入したわけでもない。郵便局が近くにないから購入した」と説明した。

 埼玉の斉藤正明議員(66)は、車の運転や議会質問の準備を手伝ってもらったとして、自身が取締役の会社の従業員3人に、会社を通じて人件費246万2千円を払い、政務活動費で賄った。取材に対し、「ほかの人を雇うともっと高くなる」と話したが、「自分で頑張ればできる部分もあった」として、今年度から作業を頼む従業員を2人に減らしたという。

 身内の企業への公費支出は、議員らの資産形成につながりかねないが、多くの議会では禁じられていない。家賃については、鳥取は「議員の関連会社」、秋田は「3親等以内の親族が役員を務める法人」、山形、熊本、沖縄は「生計を同一にする親族が役員を務める会社や団体」が所有する建物には支出できない。兵庫では今月12日、有識者でつくる第三者委員会が、2親等内か生計が同一の親族、配偶者に人件費を払うことを禁止するよう議長に答申した。