メールを読んでいただいてありがとうございます。大ファンです。
小説にクラシック音楽が絡んでくるとき、特に『海辺のカフカ』の大公トリオを聴いて星野さんが変化していく姿は歓喜とともに拝読しました。シューベルトのpfソナタ17番についても。
ベートーヴェンのワルトシュタインソナタで村上さんのお気に入りの録音がありましたら 教えてください。お願いします。
(ルートヴィッヒッヒ、女性、51歳)
ワルトシュタイン、いいですね。うちに何があったかなと、レコード棚を調べてみました。
1)バックハウス(ステレオ版)Decca
2)バックハウス(「最後の演奏会」)Decca
3)ルドルフ・ゼルキン(モノラル版)Col.
4)ルドルフ・ゼルキン(ステレオ版)Col.
5)ホロヴィッツ(モノラル版)RCA
6)ギレリス Grammophon
7)ポリーニ Grammophon
8)アシュケナージ Deccaあとグルダの旧録音があるはずなんですが、事情があって今はよそに疎開しております。で、さっきいちおうあるもの全部聴いてみたんですが(暇だなあ)、僕がいいなと思うのは、1)のバックハウスと7)のポリーニですね。バックハウスは何度聴いても、まったく聴き飽きません。超定番というか、曲との距離感が確固としていて揺らがず、素晴らしい。ポリーニは上品で、しかも適度にパッショネートで見事な演奏だと思います。でも何度も聴いていると、あるいはだんだん飽きるかも。ホロヴィッツの旧盤はいささか過激だけど、それなりに感心します。ギレリスの演奏はいかにも大柄だけど、僕にはちょっとてんこ盛りすぎるかもしれない。音楽ってむずかしいですね。ということでよろしいでしょうか?
村上春樹拝