【スピーカー】フェミニスト運動家/メディア批評家 Anita Sarkeesian(アニータ・サーキージアン)氏
【動画もぜひご覧ください!】
Anita Sarkeesian at TEDxWomen 2012
ゲーム業界における女性のステレオタイプ化
アニータ・サーキージアン氏:私がひょんなことから実世界で、巨大オンラインゲームの「悪役」になったいきさつをお話ししましょう。
この4年間、私はYouTube上で『フェミニスト・フリークエンシー』という、メディアでの女性の描かれ方を分析する動画シリーズを運営しています。
TV番組や映画、漫画、ビデオゲームなどのポップカルチャーから取ったわかりやすい実例を使い、人々に性差別やジェンダーの問題について話し合うためのツールを提供しようというのが狙いです。ビデオゲームがとても興味深いのは、今最も急成長中のマスメディアだからです。
これは私が10歳の頃の写真で、スーパーマリオワールドをプレイしているところです。
なので、ゲーム歴は結構長いですね。遊んでとても面白いだけでなく、ゲームには確かにメリットもたくさんあります。しかしながら、私の長いゲーム歴の中で、いつも気になることがあります。
あらゆるメディアの中でもビデオゲーム業界がとりわけ、女性を性的モノ化、ステレオタイプ化し、あからさまに抑圧的な表現をしていることは、誰でも知っています。
それで私は、女性がビデオゲームの中でどのように描かれているか、を取り上げる動画シリーズを作るために、クラウドファンディングサイトのKickstarter上で、資金集めキャンペーンに乗り出すことに決めました。
キャンペーンの趣旨は、そのプロジェクトに興味を持ったら寄付してもらい、興味がなければ寄付しなくてもいいというものです。とてもシンプルですよね? 失敗するわけがないと思いませんか?
ネット上での嫌がらせキャンペーン
ところが、このプロジェクトに「あまり乗り気でない」男性ゲーマー連中がいたのです。私はポップカルチャー評論家で、フェミニスト、そして女性です。
ネット上でもそのことを公言していますので、性差別的な反感を買ったのは、これが初めてではありません。悲しいことに「女は台所にいろ」といった、性差別的な中傷や侮辱にも慣れっこになりました。
でも、今回はちょっと違いました。私はネット上の大がかりな嫌がらせキャンペーンの標的にされたのです。これからお見せする数枚の映像は、私が受けた嫌がらせのごく一部です。
しかも大きく「あなたの気分を著しく害する可能性のあるコンテンツがあります」との警告まで付いていました。私のソーシャルメディアサイトはどれもレイプや暴力、性的暴行に殺人の脅迫で埋め尽くされました。
お気づきのように、これらの脅迫やコメントはどれも、はっきりと私のジェンダーを狙ったものでした。ウィキペディアの私の項目は、性差別的・人種差別的なコメントや、ポルノ画像に書き換えられました。
KickstarterやYouTube、Twitterを含む、私のあらゆるソーシャルメディアのアカウントを報告するキャンペーンが行われ、私のアカウントを使用中止にするために、不正やスパム、テロであると報告したのです。
私のWebサイトを閉鎖しようとし、e-mailその他のアカウントにハッキングし、自宅の住所や電話番号などの個人情報を集めて、ネット上で拡散しようとしました。
私によく似たキャラクターが、ビデオゲームのキャラクターにレイプされているポルノ画像を作り、何度も何度も私に送りつけたりもしました。プレイヤーに「あのクソ女をたたきのめせ」と呼びかけるゲームまで作られました。
これは、スクリーンをクリックするうちに私の顔がだんだん叩きのめされて、アザだらけになるというものです。
おわかりいただけたでしょうか。先を続けますね。このように大規模に、しかもあからさまに女嫌いを示す中で、さらにひどいのは、加害者たちがこの嫌がらせキャンペーンや虐待を「ゲーム」であると公言していることです。虐待をゲームだと言うんですよ。
加害者たちは頭の中で、自分は大人数でプレイする巨大オンラインゲームの中のヒーローで、「力を合わせて敵をやっつけるんだ」という壮大なフィクションを企て、明らかに私を悪役に仕立てた訳です。
私の大きな極悪非道なマスタープランとは? ゲームにおける女性の描かれ方についてYouTubeの動画シリーズを制作することなのに。
急速に拡大する叩きの構造
加害者たちは虐待を「面白いゲーム」と考えていますが、分析してみましょうか。プレイヤーは誰でしょう?
ネット上の嫌がらせと言えば、10代の少年たちが実家の地下室に集まっているのを思い浮かべるでしょう。中には確かに10代の少年もいましたが、私は何千人という成人男性から攻撃を受けたのです。
アメリカの男性ゲーマーの平均年齢が30歳前後であることを考えれば、これは必ずしも驚くには当たりません。どこでプレイされているのでしょう?
加害者たちはネット空間全体を戦場に変えました。私の場合、私がネット上に持っていたありとあらゆるものを追跡されました。襲撃を連携し、協力し合い、連絡を取り合うための拠点もありました。ほとんどが管理されていない匿名の掲示板やフォーラムです。
こういったところは、説明責任のための仕組みがほとんどありません。では、このゲームの目標は何でしょう? 当面の唯一の目的は「悪役」を阻止し、私と私の馬鹿げたフェミニストの陰謀からビデオゲームを守ることです。そのために、加害者たちは私と私のプロジェクトを黙らせ、信用を失わせようとしました。
でも、もっと大きい隠れた目的がありました。彼らは実際、男性支配の場というビデオゲームの現状と、絶対的な男性専用クラブのあらゆる特典と権利を維持しようとしたのです。
さて、ゲームの種類は何でしょうか?
基本的にはソーシャルゲームです。普通はネット上の嫌がらせをソーシャルな活動とはみなしませんが、使用された戦略や策略から、加害者たちが単独ではなく、実際はゆるやかに互いに連係していることがわかります。
そしてこのソーシャルな部分は、プレイヤー、つまりは加害者が参加し、実際に攻撃をエスカレートさせようというやる気を起こさせる強いモチベーションとして働きます。そうすることで仲間から賞賛と承認を得られるからです。
それは、だんだん厚かましく汚くなる攻撃を仕掛けることで「ネットポイント」が得られる、一種の仲間内のポイント制度みたいなものです。そういった攻撃を記録し、証拠として伝言板に書き込み、戦利品や成績のように互いに見せびらかすのです。
ソーシャルゲームの全体的な構造がわかりましたよね。プレイヤーがいて、「悪役」つまり私がいます。戦場があり、仲間内のポイント制度もあります。
でも大事なのは「これはゲームではない」ということです。これは巨大なスケールで女嫌いの怒りをあからさまに示したものです。「男の子はそんなものさ」とか「ネットとはそんなもの」と片付けられるものではありませんし、無視したからといってなくなるものでもありません。単なるゲームじゃないのです。
では、一体何なのでしょう? ネット上の嫌がらせのことを、普通は「ネットいじめ」や「ネットストーカー」とか「荒らし」と言われていますが、このようなスケールの嫌がらせキャンペーンを表現するには十分ではありません。
私が、そして残念ながら他の女性たちも経験したことは、サイバーマフィアとでも言うべきものです。
サイバーマフィアであれ、一握りの嫌がらせのコメントであれ、最終的には、性差別の文化を維持し、強化し、常態化することになるのです。嫌がらせをする男性は、性差別的な態度や行動を取ることで仲間から支持され、賞賛されます。
一方、女性は沈黙させられ、隅に追いやられ、全面参加から閉め出されるのです。「男性専用クラブ」に女性は入会できません。どうやって女性と少女を閉め出せばいいか? 方法はこれです。耐えられないほど毒々しく、敵意に満ちた環境を創り出せばいいのです。
プロジェクトの協力者たち
何だか暗くて憂鬱な話ですよね、でも、これだけではありません。その後私の資金集めはどうなったと思いますか? まず、サイバーマフィアは私の口を封じることはできませんでした。今日この場で私がスピーチをしていることがその証拠です。
(会場拍手)
ありがとう。実はかなりの数の人々が「ゲームにおける女性の描かれ方を分析する」という私のプロジェクトに興味を持ってくれ、私たちのゲームコミュニティを度々悩ませる嫌がらせに強く憤ったのです。実際、当初の目標金額の25倍もの資金が集まりました。
(会場拍手)
『Tropes vs. Women』ビデオゲームを制作するという私のプロジェクトに、7,000人近くの人が寄付をしてくれました。
私の想像をはるかに超えた、大きく素晴らしい、寛大な支援を得られました。当初は5本の予定でしたが、今では13本に加え、教育関係者が無料で利用できる学校用カリキュラムまで制作できました。
(会場拍手)
『フェミニスト・フリークエンシー』はパートタイムのサイドプロジェクトからフルタイムの企画になりました。支援のメッセージや、励ましの言葉を多数いただきました。
ビデオメッセージやファンアート(他者が創作したキャラクター、衣装、道具、ストーリーを元にした作品)、漫画やブログを通じて、私とプロジェクトへの支援を表明してくれました。
海外のビデオゲーム制作スタジオから講演に招かれたことさえありました。このような圧倒的なサポートは、おぼろげに見え始めた大きな文化のシフトの小さな兆候に過ぎません。
ゲーム文化における女性の扱いにうんざりし、変化を要求して声を上げ始めたゲーマーや、あらゆるジェンダーのゲーム開発者は増えつつあります。
ゆるやかに、苦労しながらではありますが、変化は起こりつつあります。耐え抜き、闘い続け、口封じに抵抗する女性たちに、私は日々励まされています。
私たちが力を合わせれば、威嚇されたり、脅しや嫌がらせを受ける恐れなしに、女性がデジタル世界に全面的、積極的に参加できるような文化のシフトを生み出せると、心から信じています。ありがとうございました。
(会場拍手)
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