iPS:筋肉の難病 原因遺伝子の修復に成功
毎日新聞 2015年03月12日 22時40分(最終更新 03月13日 06時43分)
筋肉や腱(けん)などの組織の中に骨ができる難病「進行性骨化性線維異形成症(FOP)」の患者からiPS細胞(人工多能性幹細胞)を作製し、FOPの原因遺伝子を修復することに、京都大iPS細胞研究所の戸口田淳也教授らのグループが世界で初めて成功した。修復前後のiPS細胞を比較することで、正確な病態解明や創薬につながることが期待される。論文は米科学誌「ステムセルズ」の電子版で12日、発表された。
FOPは国内の患者数が40〜70例のまれな病気。ACVR1という骨形成に関わる遺伝子の突然変異が原因であることまでは分かっているが、まだ有効な治療薬がない。
研究グループは、FOPの患者由来のiPS細胞のACVR1の変異を、遺伝子改変技術を使って修復。修復したものと、していないものの双方のiPS細胞を軟骨組織へと変化させて比較したところ、修復した細胞の方が軟骨分化が少なく、遺伝子修復が病状の改善につながることが分かった。また、修復していない細胞では、特定の二つの遺伝子がより多く見られ、病気に関係していることも判明した。
FOPの治療薬開発を願って体細胞を京大iPS細胞研究所長の山中伸弥教授に提供した兵庫県明石市の市立明石商業高校2年、山本育海(いくみ)さん(17)は市役所で記者会見し「研究は一歩進んでうれしいが、先生方にはこれからも頑張ってほしい」と期待を寄せた。【野口由紀、駒崎秀樹】