中央卸売市場が導入した燃料電池による発電システムは、米国製の「Bloomエナジーサーバー」である(図1)。1基で200kWの発電能力があるシステムを6基の構成で設置した。合計で1.2MW(メガワット)の発電能力になる。3月9日に卸売市場の構内で運転を開始した。
卸売市場では魚や野菜などの生鮮食品を扱うために、数多くの冷蔵庫を稼働させて大量の電力を消費する(図2)。燃料電池による発電システムを24時間体制で運転することにより、卸売市場の電力需要の約50%をカバーできる予定だ。合わせてCO2の排出量も低減する。
採用したBloomエナジーサーバーは家庭用の燃料電池「エネファーム」よりも発電効率が高いSOFC(固体酸化物形燃料電池)を内蔵している(図3)。都市ガスを改質して水素を作る点ではエネファームと同様だが、発電効率は電力会社のガス火力発電設備も上回る60%を発揮する。
都市ガスを燃焼させる通常のガス火力発電と比べると、水素と酸素を化学反応させる方式のためCO2排出量が少なくなる。大阪府の中央卸売市場の場合には燃料電池の導入によって、電力の消費に伴うCO2の排出量を年間で約3割も削減できる見込みである。
さらに都市ガスの導入部には中圧の導管を利用する。ガスの導管は高圧・中圧・低圧の3種類があり、高圧と中圧は耐震性に優れていることが阪神淡路大震災や東日本大震災で実証されている。中圧の導管と組み合わせた燃料電池は、災害に強い分散型の電力供給システムとしても効果を発揮する期待がある。
大阪府のエネルギー行政を担当する商工労働部では、卸売市場の利用実績をもとに今後3年間かけてCO2削減効果や電力供給の安定性・信頼性を検証することにしている。中央卸売市場の先進的なモデルケースとして、導入効果を全国に発信していく方針だ。
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